世界では起業の裾野が広がる一方、会社を始めることと、事業を続けることの間に隔たりが生まれている。Global Entrepreneurship Monitorが2026年2月に公表した2025/2026年版の世界報告書では、初期段階の起業活動が過去最高水準に達する一方、創業から3年半を超える事業へ移行する動きは多くの国で停滞していると指摘した。
起業後の生存をどう支えるかが、世界共通の課題になっている。

【その他の写真:イメージ】

日本では、独立までに長い職業経験を積む姿が一般的だ。日本政策金融公庫が2025年12月に公表した「2025年度新規開業実態調査」では、開業時の平均年齢は43.9歳で、29歳以下は7.0%。勤務経験のある開業者は97.6%に達し、経験年数の平均は21.1年だった。同公庫の融資先を対象とした調査ではあるが、若年での起業が少数であることを示している。

その一般像から大きく離れた時期に商売を始めたのが、株式会社リンクス代表取締役の内山成児氏だ。16歳で不動産賃貸の営業に携わり、報酬は完全歩合制だった。固定給ではなく、顧客に選ばれ、契約へ結びつけた結果が収入に反映される。社会人経験を積んでから独立する道とは異なり、最初から成果と責任が隣り合う現場に立った。

18歳になると、広告とマーケティングを手がける会社を起業した。不動産営業では、一人の顧客の希望を聞き、契約まで進める力が求められる。広告会社では、その経験を企業の側へ広げ、商品やサービスが誰に、どのような言葉で届けば選ばれるのかを設計する立場へ移った。
個人の営業成果から、企業に売上を生む仕組みづくりへの転換だった。

その会社は後に売却している。起業家にとって会社の売却は、一つの事業との区切りであると同時に、次の挑戦へ進む選択にもなる。GEMの世界報告書は、事業から退出した経験を持つ人ほど再び起業する傾向が強いことも示す。内山氏も売却を終点とはせず、その後は複数企業の立ち上げ、再生、経営コンサルティングへ活動を移した。

新規事業では、顧客を獲得する前に資金が尽きることがある。再生局面では、売上があっても組織や資金繰りが追いつかず、事業が止まる場合もある。広告だけ、営業だけでは解けない課題を扱うなかで、内山氏の仕事は集客支援から、企業経営全体の詰まりを見つける役割へ広がっていった。

2012年6月には現在の法人を設立。2018年の経営統合を経て、株式会社リンクスとしての体制を整えた。同社はリスティング広告、SEO、Web制作、企業コンサルティングを展開し、ブランディングやリブランディングにも携わる。広告を配信して終わるのではなく、企業が何を強みとし、顧客にどう認識されるべきかまで組み直す支援である。


公式サイトに掲げる「人の心を動かす」という言葉は、内山氏の歩みとも重なる。16歳の営業では目の前の顧客を動かし、18歳で始めた広告会社では市場へ働きかけた。企業再生では、経営者や組織が再び動ける条件を整える立場になった。扱う領域が変わっても、止まっている状況を次の行動へ進めるという役割は変わっていない。

現在の事業にファクタリングが加わったことで、その範囲はさらに広がった。マーケティングは認知や問い合わせ、受注をつくる。一方、受注から入金までの期間には、人件費や仕入れなどの支払いが続く。売掛債権の早期資金化を扱うことは、売上を生む支援から、売上が資金へ変わるまでの時間を支える仕事への展開と捉えられる。

認知、集客、受注、入金、再投資。企業活動は、この流れが途切れないことで続いていく。内山氏の経歴は、不動産、広告、企業再生、コンサルティング、ファクタリングと異なる仕事を渡り歩いたようにも見えるが、企業が次へ進めない理由を探し、その前後をつないできた一本の流れとして読むことができる。

もっとも、人物の物語を社会的な評価へ結びつけるには、検証可能な情報が欠かせない。
売却した会社の概要、企業再生の具体例、リンクスの支援実績、ファクタリング事業の開始時期や成果は、現時点の公開情報だけでは十分に確認できない。これらが実名事例や数値として示されれば、内山氏の経営判断が顧客企業へ与えた影響も見えやすくなる。

若くして起業した事実だけなら、早熟な経営者の物語で終わる。内山氏の経歴でより重要なのは、会社の売却後も事業づくりと再生の現場に残り、売上をつくる前段から入金までの後段へ支援領域を広げてきた点だ。起業の数ではなく、企業を存続させるために何を担ってきたのか。その実績の開示が、今後の評価を定めることになる。
【取材/執筆:Y.U】
編集部おすすめ