【その他の写真:個人商店やコンビニには雑誌や新聞も置かれていない(我妻伊都 撮影)】
今年、ベトナムの文化スポーツ観光省が発表したベトナム人が1年間に読む平均読書数は0.8冊となっている。
ベトナム政府は昨年、毎年4月21日を「ベトナム読書の日」に決定するなど国をあげて読書を推奨している。また、昨年と今年は、2001年、2007年、2012年に国家文学賞を受賞した367作品を166の文集として出版するなどして読書気運を高めようとしているが、ほとんど本が読まれていないのが現状だ。
活字に触れる習慣が少ない理由としては、出版物自体が少ない。書籍が相対的に高価。文章の質が低いなどが指摘される。
ホーチミン市の街中でも書店は見かけず、コンビニや商店にも雑誌や新聞は置かれてない。
ジャーナリストの池上彰氏は著書『 知らないと恥をかく世界の大問題』の中で、「発展する国かどうかは、書店を見ればわかる」 と述べているが、ベトナムは書店自体が非常に少ないのだ。
ホーチミン市駐在の日本人は、「ベトナム人は本を読んで知識を得て、仕事や生活を豊かにしたり役に立てたりするいう意識が低い」と話す。
歴史的に見て読書は宗教と深く結びついているが、そのあたりの伝統的な価値がフランス統治やベトナム戦争、社会主義国家体制の影響で失われてしまったのだろうか。
確かにベトナムは、周辺国と比べると出版規制が厳しく、それが文章の質向上の足かせになっている可能性がある。一方で、ベトナム人が文字を読めないのかというとそうではない。
ちなみに日本では公的な統計はないものの日本人が1年間に読む平均読書数は46冊という統計がある。ただしこの数字には漫画や雑誌なども含まれているので純粋な書籍だけではない。
人口9000万人のベトナムに、日本の漫画や書籍を売り込むための市場はまだないのが現実だ。
【執筆:我妻伊都】