棋士としてどれだけ活躍できるか、目安の一つとなるのが四段昇段時の年齢だ。ご存じ藤井聡太竜王・名人は史上最年少棋士としてデビュー。
このようにタイトル戦に出るようなトップ棋士は、高校生年代までに四段昇段を果たしていることが多い。最近の若手では藤本渚六段やプロになったばかりの炭﨑俊毅四段。そして竜王戦における活躍により、ほぼ昇段を確定させている(今期の三段リーグで5勝以上すれば2個目の次点獲得で四段の権利)山下数毅三段もこの条件に該当しているため、将来タイトル戦に出てくる可能性は高そうだ。
だが、今回棋聖戦五番勝負の挑戦者になった杉本和陽六段は25歳でプロ入り。これは現行の奨励会規定において、タイトル挑戦者の四段昇段時の年齢を大きく更新した。これは先述した将棋界の常識を覆す、快挙と言える。
タイトルを獲得した棋士で四段昇段が最も遅かったのは木村一基九段(23歳9ヶ月)。三段リーグが13期6年半と苦しんだ。タイトル戦登場は9回、獲得1期、全棋士参加棋戦の優勝経験もある一流棋士だ。
出口若武六段は24歳になる直前での四段昇段。
昨年度の王将戦挑戦者決定リーグで活躍し、プレーオフまで進んだ西田拓也五段は25歳での四段昇段。杉本とは四段昇段が同期で、同学年(誕生日は一週間ほど西田が早い)、ともに三段リーグで17期、8年半も掛かったなど、共通点が多い。なお、今期の棋聖戦本戦は準決勝で杉本と西田の同期対決もあった。
杉本は奨励会に入る前に小学生の全国大会で二冠を達成。奨励会入会後も三段までは順調に昇級昇段を重ねている。若くしてプロ入りしていればエリートコースだったが、三段リーグの厳しい戦いに苦労することとなった。
このように、タイトル戦に登場するような棋士でも苦労するのが三段リーグだ。プロ棋士へは6級から三段に上がってやっと半分と言われることもある。竜王戦で史上初の5組昇級、さらに5組優勝で4組昇級と決勝トーナメント進出を決めた山下三段でさえ、今期が6期目となかなか抜けられていない。今の三段リーグがいかにハイレベルか、それだけでもおわかりだろう。
文=渡部壮大
放送情報【スカパー!】
[生]ヒューリック杯 第96期 棋聖戦 五番勝負 第1局 午前[藤井聡太登場] 藤井聡太棋聖 vs 杉本和陽六段
放送日時:2025年6月3日(火)08:45~
放送チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります