6月27日(金)に公開される映画「でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男」。ジャーナリスト・福田ますみによるルポルタージュをもとに三池崇史監督が描くエンターテインメント作で、主演は綾野剛が務める。
綾野は、山下敦弘監督によるヤクザと男子中学生の奇妙な友情を描く青春映画「カラオケ行こ!」(2024年)で、絶対に歌がうまくならなければならないヤクザ役を好演。かと思えば、大根仁監督が手掛けた「地面師たち」では、主人公の1人・不動産詐欺師集団"地面師"として交渉役を担う男を熱演。硬軟自在な演技で活躍する綾野は、近年は個性派監督のもとでチャレンジングなテーマを扱う作品や一癖も二癖もある役柄が続いている。
そんな綾野と個性派監督のタッグで見逃せない異色作が、「シャニダールの花」(2012年)だ。7月5日(土)からWOWOWオンデマンドにて配信される本作は、鬼才・石井岳龍が監督を務めた新感覚エンターテインメント。独特の世界観と映像美学を持ち、インディペンデント映画の最前線を駆け抜けてきた石井監督が、7年間も温めてきたという渾身の一作だ。
ごく少数の限られた女性の胸に寄生して咲く、美しい花"シャニダール"。満開の状態で摘んだ花の成分は画期的な新薬の開発に繋がるとされ、億単位で取り引きされていた。シャニダール研究所は、つぼみをつけた女性たちを施設に収容して健康を管理し、大輪の花を咲かせて一番美しい形で採取することを目的に設立された。そこで働く植物学者・大瀧(綾野)とセラピスト・響子(黒木華)は、提供者の女性たちの世話にあたる。しかし、花を摘み取る際に提供者が謎の死を遂げる事故が相次ぎ、大瀧は研究所に不信を抱く。
綾野は、美しくも謎多き花"シャニダール"を研究する植物学者の大瀧を演じた。
大瀧は一見クールに見えるが、どこか繊細で不器用なところもある。そして、その心の内には葛藤を秘めている。綾野は、その中で確かな存在感を見せた。人間とは愛とは何か...謎の花と女性たちの愛や嫉妬に翻弄され、迷いもがきながら生きる青年を熱演している。
奇跡の花の研究に取り組む青年と、彼を取り巻く女性たちが織り成す物語。本作で、綾野と黒木は抜群のコンビネーションを見せた。不思議な色香を持つ2人が交わすやりとりは、魅惑的な花のように美しく繊細で、ミステリアスさも兼ね備え、観る者を惹きつける。
本作の後、岩井俊二監督による映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」(2016年)で、綾野と黒木は再共演している。
文=中川菜都美
配信情報
シャニダールの花
7月5日(土)からWOWOWオンデマンドにて配信