これらの遺産分割の方法については、それぞれメリットデメリットがあり一概にはどれがいいとは言えませんが、代償分割をする場合に押さえておくべきこととして、贈与税のリスクがあります。
■代償分割と贈与税
先の通り、代償分割とは相続財産を取得する相続人が、他の相続人に代償金を支払う分割を言います。この代償金ですが、必ずしも相続財産から支出する必要はなく、相続財産を取得した相続人のポケットマネーから支出することもできます。
このポケットマネー、というのが重要で、例えば相続財産として5千万円をもらった場合、原則としてその5千万円の範囲で代償金を支払うことは問題ありませんが、ポケットマネーを加味して5千万円を超える代償金を支払うと、その超える部分は贈与として取り扱われることとされています。
■生命保険に要注意
このため、自身が取得した相続財産以上の代償金を支出してはいけないと言われますが、例えば被相続人が高額の保険をある特定の相続人だけにかけていたような場合、このルールが問題になることがあります。保険金をもらえない相続人の理屈としては、高額の保険金が下りるのであれば、その部分を含めて被相続人の財産とすべきであり、その保険金も分割すべき、と考えがちです。
しかし、生命保険は遺産分割の対象にならないとされていますので、代償金の算定においても、保険金を加味して計算することはできません。このルールを失念してしまうと、保険金からも代償金を支払う、といった事態が生じて贈与税が課税されてしまうことがありますので、注意してください。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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