初めて彼女を連れてきた息子。母親には軽い紹介で済ませ、早々に自分の部屋へと彼女を案内。
しかし、密室にはさせまいと「ドアだけは開けておきなさい」と、母親から一言。それでも何とか二人きりになりたい息子。必ずやってくるだろうそのチャンスを逃してなるものかと、母親の動向を監視。母親も、息子に負けじと、何が何でも二人きりにはさせないと強い決心。
よくあるエピソードであるが、結局二人きりになれたとしても、母親が「開けておきなさいと言ったでしょ!」などと言いながら無断で扉を開けて、残念がる息子というのがこの話のオチである。
先日は「家族でも携帯を勝手に見たり、私書を無断で開封するとプライバシーの侵害?」と題したコラムをお届けしたが、今回は息子の部屋のドアを無断で開けること自体が、プライバシーの侵害になり得るかどうかを、前回同様、清水陽平弁護士に伺った。


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■そもそもプライバシーとして守られるべきかどうかの基準は?

「結論的にプライバシーの侵害と言える余地があります」(清水陽平弁護士)

早速結論から話して頂いたが、そもそもプライバシーとして保護されるべきかどうかは、以下の3つの要件を満たすことが重要だ。

(1)私生活上の事実、または事実らしく受け取られるおそれがある事柄であること
(2)一般人の感受性を基準に公開を欲しない事柄であること
(3)一般に未だ知られていない事柄であること

つまり、部屋の内部がプライバシーとして守られると、清水陽平弁護士は話している。

■家の所有者は親なので、どうしようと親の勝手?

しかし、そもそもその家は息子のものではなく、親に所有権が存在する。つまり、親からすれば、自分の物なのだから、自分がどうしようと勝手だと考えることも出来るが、この点はどうなのだろうか。

「家の管理権というのは、その家を所有していたり賃借している人(一般的には親)にあります。息子はその部屋の使用を許されているだけで、使用方法について一定の制約を受ける立場にあります」(清水陽平弁護士)

「しかし、普通は与えられた部屋は自分(息子)の自由に使って良いとされているのが普通ではないかと思います。
無断で入ることについて明確に拒否するよう話をしていれば、原則としてはそれに従うべきといえます。そのため、たとえば生命身体にかかわるような特段の事情がないのであれば、彼女といる部屋に無断で入ることは、プライバシー侵害といえるだろうと思います」(清水陽平弁護士)

彼女を初めて自宅に連れて行こうとしている方にとっては朗報だろう。
もしも無断で入ってこようとしてきたら、当コラムを見せて「プライバシーの侵害だ!」と言ってみてはどうだろうか。ただし、効果があるかどうかは約束できないので、その点だけご注意を。