スチームパンクを思わせるような世界を舞台に、しっかり練り込まれた謎解きのシステムが組み込まれた良作品。
脱出ゲーム的な快感のある謎解き
冒険はゴミの山に主人公が廃棄されるところからスタート。チュートリアルを兼ねた謎解きでまずは自分の体を復元します。
重要なポイントは体を伸び縮みさせるギミック。主人公は手の届く範囲のものにしか触れることができないため、この動作が攻略のカギとなります。
体を伸ばすと高いところに手が届く。
体を縮めると低い位置のものに触ることができる。かわいい。
行き詰まってしまったときに、体を長さを変えると今ままで見えなかったものが見え、攻略の突破口が開けます。ガンガン伸び縮みしていきましょう。
また、収集した道具を組み合わせると新しいアイテムになるシステムも重要。昨今の脱出ゲームや謎解き等をプレイしている人にとってはお馴染みといったところでしょうか。
画面左上に注目。ロープと磁石を組み合わせると…
鉄骨に引っ掛けることが可能に。これで向こう岸まで移動できます。
特別な操作はこの2つだけ。これらを駆使してどんどん謎をといていきます。
登場人物達が非常にコミカルデザインのロボットであることも、このゲームに彩りを添えてくれます。
同族のロボットしか通してもらえない橋。どうにかここを渡る方法を画策します。
ひねり出した結論はこれ!門番がザルすぎる気もしますね。
ちょっとツッコミどころのある謎解き要素も本作の魅力です。
序盤から難易度は結構高めな印象ですがヒントもあるのでご安心を。イラスト一枚絵でざっくりと表されています。
ただし謎がすべて解けてしまうような書き方はされていません。裏を返せばヒントを見てもプレイの面白さを損なわずに遊べるということです。
見たら負け、とは思わずに気楽にプレイしていきましょう。
吹き出しのイラストも結構かわいい。しかしこれは一体何をしているところなのか。
かえって謎が深まることも…。
筆者もあまり謎解き得意では無いので、なんとかヒントを見つつ攻略を進めます。
ようやくたどり着いた先には赤と緑と三角形。ぐるぐる回して、何が何やら…(涙)
しっかり練られた仕掛けの数々は、頭の体操にぴったり。固くなった脳みそがだんだんほぐれて柔らかくなっていくのを感じました。
可愛らしさと哀愁、ポップとパンクが混在するデザインの妙
脳みそがほぐれすぎたためかまったく謎が解けなくなった筆者は、周りの景色やキャラクターを見て心を癒やすことにしました。
こちらはゲームスタートの画面。
スチームパンク好きなら見ているだけでもワクワクが止まりませんよね。
改めて見ても背景の書き込みは素晴らしいの一言。先にも述べましたが、いわゆるスチームパンクのような若干退廃的な未来像が描かれています。
可愛らしい絵本のようなタッチでありながら、くすんだ色合いと荒廃した風景、廃品の山、吹き出す排気ガスなどが並ぶことで、可愛くもどこか寂しげな雰囲気がうまく表現されています。
特筆すべきはキャラクター達の造形とアニメーション。主人公はカッコよくも可愛くもないブリキの土管のようなロボット。ちょっと弱そうで情けない感じがすごくたまりません。
仕草もいちいち可愛く、特に体を伸ばしたときのおぼつかない歩き方は、赤子を見ているようハラハラしてしまいます。
謎解きを考える仕草。本人は至って真剣なのにちょっとアホっぽいのがまたいじらしい。
トイレで用を足すところもイイ表情してますね。
キャラデザが絶妙でかつアニメーションによって彼のちょっとドジで頼りないところがより強調されています。いろいろな仕草を見せてくれるので、見ているだけでも楽しめること請け合いです。
物語を進めるうちに主人公が過去に大型ロボットたちにいじめられていたことがわかります。
過去の回想シーン。結構ひどいいじめを受けていたようです。
人が近くを通るといじめが見つからないように隠蔽。なんて卑劣な奴ら!
何故かはわかりませんが、いじめられている彼を見ていると次第に親近感が湧いてきました。何故かはわかりませんが。
一定時間操作しないで放置しておくと、過去の回想シーンが挿入されます。回想も何パターンかあるようで、手が行き届いた作り込みの丁寧さが伺えます。
回想シーンでは、彼女らしき女の子ロボットから誕生日を祝ってもらったり、
一緒にプール(オイルのプールです)で遊んだ思い出が呼び起こされます。
この主人公は彼女持ちだったんですね。ただの気弱ないじめられっ子だと思っていましたが、実は気弱な、彼女持ちの、いじめられっ子だったようです。積み上げられた親近感が風に吹かれて崩れ去るのを感じました。
謎解きに心を折られ、画面を楽しく眺めていただけなのにまたしても心を折られてしまいました。しかし必ず彼らの物語の結末をこの目に焼き付けたいと思い、ここ数日再び攻略に勤しんでおります。
謎解きの完成度の高さに、ハイクオリティなイラストとアニメーションを持つ本作。インディーゲーム業界も本当に侮れないと改めて痛感させられます。
現在はニンテンドーeショップでセールが行われており、ワンコイン(500円)で購入可能です。この機会に是非手にとっていただき、ポップでパンクな世界に浸りながら頭を捻ってみてはいかがでしょうか。
ニンテンドースイッチ向け『Machinarium(マシナリウム)』のセールは2019年11月7日まで行われます。