そして、コアなゲームファンを中心に根強い支持を集め、今も高い注目度を集める人気シリーズの最新作が、本日発売を迎えました。
シリーズファンにとってはお馴染みであり、また忘れがたい一作でもありますが、本作に惹かれつつもまだ未体験、というユーザーも多いことでしょう。そこで今回は、「真・女神転生」シリーズはどういう作品なのか、その中でも『真・女神転生III』はどういった位置づけに当たるのか。リマスター版の発売を記念し、本作の魅力や特徴などをお伝えしたいと思います。
なお、シリーズにおける『真・女神転生III』の特徴を示すのが目的のため、後に展開された『真・女神転生IV』と『IV FINAL』には深く触れず、ナンバリング以外のシリーズ作についても言及しておりません。また、記事内に使われているゲーム画像で注釈がないものは、全て『真・女神転生III HD』(PS4版)のものとなります。
「真・女神転生」シリーズの原点は、もうひとつのシリーズにあり
1992年に発売されたスーパーファミコンソフト『真・女神転生』が、本シリーズの幕開けを飾りました・・・が、原点とも言うべき出発点は、このタイトルから更に遡る形になります。
その出発点とは、1987年にリリースされたファミコンソフト『デジタル・デビル物語 女神転生』です。本作は開発こそアトラスですが、発売元はナムコ(現 バンダイナムコエンターテインメント)と、その形態からして「真・女神転生」シリーズとはやや趣が異なります。
しかも『デジタル・デビル物語 女神転生』は、西谷史氏の小説シリーズ「デジタル・デビル・ストーリー」を原作としたメディアミックス展開のひとつとしてゲーム化されたもの。同時にOVAも作られ、原作や映像作品との関連性を持つゲームタイトルでした。
画像は、マイニンテンドーストアの『ナムコットコレクション』DLC『デジタル・デビル物語 女神転生』のものです
こういった経緯を持つ作品なので、現在の「真・女神転生」シリーズとはあまり関係がないんじゃないか、と疑問に思う方もいることと思います。ですが、この『デジタル・デビル物語 女神転生』から、「真・女神転生」シリーズに見られるシステムの多くが生み出されたのです。
「主人公が悪魔(仲魔)を使役」「使役する方法は、コンピュータ(COMP)による“悪魔召喚プログラム”」「敵として出てきた悪魔を仲間にする会話交渉」「悪魔同士を合体させて新たな悪魔を作り出す“悪魔合体”」など、「真・女神転生」シリーズに欠かせない様々な要素は、この『デジタル・デビル物語 女神転生』から始まりました。
世界観や掲げるテーマ、作品の雰囲気なども「真・女神転生」シリーズとは違う部分もありますが、ゲームシステムを含めた原点として、『デジタル・デビル物語 女神転生』は無視出来ない作品です。
ちなみに、ニンテンドースイッチソフト『ナムコットコレクション』の第3弾DLCのひとつとして、この『デジタル・デビル物語 女神転生』が有料配信中。気になる方は、そちらもチェックしてみては。
もうひとつの「女神転生」も、「真・女神転生」シリーズの礎に
当時の主流だった西洋風ファンタジーRPGとは一線を画した『デジタル・デビル物語 女神転生』は、新たな刺激を求めていたユーザー層に直撃。その人気を受け、シリーズ展開を果たす『デジタル・デビル物語 女神転生II』が1990年に発売されました。
ただし、シリーズ化と言っても物語面での繋がりはなく、登場人物も含めて世界観を一新。COMPによる悪魔の使役や会話交渉、悪魔合体など、ゲームシステム面を引き継ぐ意味でのナンバリング作品として登場します。また、「3体の悪魔を組み合わせる“3身合体”」など、システム面のパワーアップも行われました。
ですが、『デジタル・デビル物語 女神転生II』が「真・女神転生」シリーズに与えた影響は、これだけではありません。
また「真・女神転生」シリーズの作品は全て、自身の選択によって物語に変化が生まれ、エンディングも分岐します。そんなマルチエンディング制度を、この系譜の中で最も早く取り入れたのが『デジタル・デビル物語 女神転生II』でした。
崩壊した東京で、プレイヤーの考え方や判断が物語と結末に影響を与える。その先駆けとなった『デジタル・デビル物語 女神転生II』も、「真・女神転生」シリーズを語る上で外せない一作と言えるでしょう。
<cms-pagelink data-text="「女神転生」を経て、「真・女神転生」シリーズが幕開け" data-page="2" data-class="center"></cms-pagelink>
シリーズの基盤を作り上げた『真・女神転生』と『真・女神転生II』
Wii U向けバーチャルコンソール『真・女神転生』紹介ページの画像です
「女神転生」シリーズからゲームシステムや方向性を継承する一方で、設定などを刷新し、開発のみならず発売もアトラスが担った作品が、 1992年に発売された『真・女神転生』です。前述の「女神転生」シリーズの経験を踏まえつつ、本シリーズがここで産声を上げました。
近未来の東京で幕を開ける物語は、主人公が「悪魔召喚プログラム」を手にしたことで動き始め、数々の異変や緊迫した状況を経て、その世界が大きく一変します。その、日常から非日常への推移は、プレイヤーに没入感と興奮を与え、多くの方々が本作の刺激に酔いしれました。
Wii U向けバーチャルコンソール『真・女神転生』紹介ページの画像です
前述の通り、本作も選択による分岐やマルチエンディングを搭載していますが、その結末は単なる“ハッピーorバッドエンド”といったものではありません。理想を掲げるがゆえに排他的な思想を持つ「メシア教」に、秩序はあれど自由はありません。
それまでの一般的なRPGに多かった“勧善懲悪”を描かず、プレイヤーの行動によって世界の命運が左右される『真・女神転生』。本作の世界観や構成は、1作目の時点ですでにシリーズの基盤となり得る力強さを放っていました。
Wii U向けバーチャルコンソール『真・女神転生II』紹介ページの画像です
そして、「真・女神転生」のシリーズ展開を決定づけたのが、1994年発売の『真・女神転生II』です。ゲームシステムや、『真・女神転生』で築き上げた構成などを踏襲したのはもちろん、物語面でも直接繋がっており、文字通りの意味での続編として登場しました。
悪魔合体などの特徴的なシステムを受け継ぎ、魔法の継承といったパワーアップ要素を用意。シナリオ展開も更に壮大なものとなり、悪魔と天使の狭間に置かれた人間の生き様がより深く描かれました。こうした2作品の挑戦と発展により、「真・女神転生」シリーズの基本が確立されたと言えるでしょう。
<cms-pagelink data-text="シリーズ3作目ながらも、独自の切り口が多かった『真・女神転生III』の異端ぶりに迫る" data-page="3" data-class="center"></cms-pagelink>
異色、なれど名作な『真・女神転生III-NOCTURNE』の特徴
シリーズ化した「真・女神転生」の新展開として2003年2月20日に発売されたのが、『真・女神転生III HD』のオリジナル版に当たる『真・女神転生III-NOCTURNE』(以下、真・女神転生III)です。前2作はスーパーファミコンソフトでしたが、本作のプラットフォームはPS2。描画を含め、高い性能に支えられて大きく進化した「真・女神転生」最新作として、当時大きな注目を集めました。
一目で分かる変化といえば、その見た目。これまでのダンジョン探索は、いわゆる一人称視点での3Dダンジョン形式でした。ですが本作は三人称視点で、ダンジョンもマス目による構成から脱却。3D空間のダンジョンを、自由に歩き回れるようになりました。
悪魔合体などの基本は継承した一方で、シリーズ作品ながら本作独自の要素も数多い『真・女神転生III』。そのため、シリーズ内では異端的な立ち位置に置かれることもありますが、それは決して否定的な意味ではなく、本作だけの個性として高く評価されています。
その特徴的な部分は、言うまでもなく『真・女神転生III HD』でも楽しめるので、これまで紹介したシリーズ定番の要素とは異なる独自性に迫り、『真・女神転生III』の異色さをお伝えしたいと思います。
■主人公自身が悪魔
これまでの主人公は基本的に人間で、当然魔法なども使えません。銃や剣が主な攻撃手段ですが、COMPを使って悪魔を使役することが、主人公にとって最大の攻撃方法とも言えます。
ですが『真・女神転生III』の主人公は、ある一件を経て「人修羅」と呼ばれる悪魔へと変じます。「マガタマ」を装備して悪魔の力を振るうだけでなく、主人公専用のスキルなども習得。また、コンピュータを使わずに悪魔を使役するなど、過去作の主人公とは在り方が大きく異なります。
■崩壊を通り越し、東京が“異界”に
本作の舞台も、過去作と同じく東京です。しかし、“崩壊”や“荒廃”といった程度ではなく、世界を作り替えるレベルで変異しており、かつての東京は「ボルテクス界」と呼ばれる姿に一変します。
変わり果てた東京を舞台に、様々な物語を描いてきた「真・女神転生」シリーズですが、『真・女神転生III』を超える変容ぶりは、後の作品でもなかなかお目にかかれないレベルです。
■コマンドバトルを進化させた「プレスターンバトル」
「真・女神転生」シリーズは、世界観や設定、物語に至るまで、多彩な面でその個性を発揮してきましたが、悪魔との戦いはコマンドバトルを採用しており、その点は比較的ベーシックな内容でした。
ですが、ナンバリング3作目となる『真・女神転生III』で、コマンドバトルにも大きくメスが入ります。新要素となる「プレスターンバトル」は、“敵の弱点を突くことで、行動回数が増える”といった効果があり、このシステムによってバトルの戦略性と爽快感が一気に膨らみました。
相手の弱点を突くほど有利になり、編成と戦い方によっては一方的に壊滅させることも可能。ただし、条件は敵側も同じなので、一瞬の油断であっという間に全滅する危険性も合わせ持ちます。この、爽快感と緊張感が表裏一体となったシステムが、バトルの楽しさを大きく引き上げ、本作の評価を後押しする一因にもなりました。
その影響は本作に留まらず、後のシリーズ作『真・女神転生IV』『真・女神転生IV FINAL』に受け継がれたほか、同社のRPG作品などにも影響を及ぼすほどでした(『ペルソナ』シリーズの「ワンモアプレス」や『幻影異聞録#FE』の「セッション」など)。
■話が独立しており、シリーズ未体験でも問題なし
前述したように、『真・女神転生』と『II』は直接的に繋がっています。また、後に展開する『真・女神転生IV』『IV FINAL』も物語的に密接な関係にあり、切り離して考えにくい作品となりました。
一方、『真・女神転生III』はどちらともストーリー上での繋がりはなく、単独で完結している作品です。そのため、必要な事前情報などはなく、シリーズ未体験のプレイヤーが『真・女神転生III』から遊び始めても、物語の理解度という点では全く問題ありません。
そのため、本日発売の『真・女神転生III HD』で、「真・女神転生」シリーズの一歩を踏み出してみる、という選択も十分アリでしょう。戦闘の手強さや、ストーリー展開の独特な味わいなどに衝撃を受けるかもしれませんが、そのハードルを超えた先には、本シリーズならではの面白さが待ち受けています。
■完全版とも言える「マニアクス」「クロニクルエディション」の存在
昨今では、追加要素や新たなストーリーのDLC配信などは珍しくありません。シリーズ内の展開でいえば、『真・女神転生IV』と『IV FINAL』でDLC展開が行われました。
ですが『真・女神転生III』の発売当時は、オンライン環境が今ほど広がっておらず、追加要素をユーザーに届けるためには、追加ディスクや完全版の販売などの手段しかありません。『真・女神転生』や『II』は、別プラットフォームへの移植時に新要素が加わることはありましたが、『真・女神転生III』の場合はひと味違います。
『真・女神転生III-NOCTURNE マニアクス』と、タイトルも改められた完全版とも言うべきソフトが登場したのは2005年のこと。本作には、新ダンジョン「アマラ深界」や新たなエンディング、悪魔の追加など、相当なボリュームが用意されました。
しかも、「デビルメイクライ」シリーズの「ダンテ」が登場し、主人公と敵対するといった刺激的かつメーカーの垣根を越えた展開も待っており、二重の意味で「真・女神転生」ファンを驚かせました。
この「マニアクス」は好評を博し、ほどなく入手困難なソフトとして知られるようになります。その事態を改善すべく、2008年に発売された『デビルサマナー 葛葉ライドウ対アバドン王Plus』に、ダンテを葛葉ライドウに差し替えたバージョンの『真・女神転生III NOCTURNE マニアクス クロニクルエディション』が同梱されました。
・・・が、後にこの『葛葉ライドウ対アバドン王Plus』もプレミア価格になってしまい、需要の高さを裏付ける結果を残して販売が終了。そのため、「真・女神転生」シリーズファンの中にも、手を出せていない人が少なくありません。
しかし、その不遇の時代も『真・女神転生III HD』が発売されたことで、終わりを告げます。というのも、『真・女神転生III HD』の内容は「クロニクルエディション」に準じているため、追加要素部分も『真・女神転生III HD』で遊べるのです。
さらに、有料DLC(980円)の「マニアクスパック」を購入すると、葛葉ライドウをダンテに差し替えることが可能。ダンテに会いたかった方も、その夢を『真・女神転生III HD』で実現できます。
この『真・女神転生III』が発売された後に、シリーズのナンバリング展開としては『真・女神転生IV』と『IV FINAL』が登場します。こちらも独自の個性を持つ作品ですが、前述した『真・女神転生III』の特徴とは異なっており、またシリーズ全体で見ると『真・女神転生』『II』に近い立ち位置です。
シリーズの中でも特異な位置にあり、それでいてしっかりと「真・女神転生」だった『真・女神転生III』。その完全版とも言える内容を引っ下げて復活した『真・女神転生III HD』を、本日から腰を据えて楽しむことができます。
既に手を出しているシリーズファンも多いことでしょう。まだ未体験という方は、これを機に「真・女神転生」の世界へ飛び込んでみてはいかがですか?