ニンテンドースイッチで配信された『はたらくUFO』は、主人公のUFOである「ジョブスキー」が地球上のさまざまな仕事を経験する「UFOキャッチャー・バイト生活ゲーム」とでもいえるゲームです。

ジョブスキーは農園で作物を収穫したり、おもちゃ屋さんでぬいぐるみを積んだり、あるいはサラダやパンケーキを盛り付けたりします。
つまり仕事です。なのに、なんで現実の仕事はつまらなくて、ゲームの仕事は楽しいのでしょうか?

◆仕事とゲームの違いって何?
そもそも仕事とゲームの違いとはなんでしょうか。「仕事はつまらなくて、ゲームは楽しい」と考えられますが、逆に楽しい仕事もあればつまらないゲームもあります。

「ゲームは思いどおりになるけど、仕事は思いどおりにならない」と考えてもダメです。『はたらくUFO』は物理演算で物が動くうえに、UFOキャッチャーのように物を掴む必要があります。よって、考えたとおりに配置できないこともしばしば。
でも楽しいのですから。

「仕事は報酬のためにするもの」というのも微妙なところ。確かに仕事は賃金を目的にするものですが、ゲームも「遊んだうえでの楽しみ」が報酬とも言えます。無報酬のサービス残業も仕事のうちと言えるのではないでしょうか(本当はよくないものですが)。

「ゲームはプレイヤーが開発者におもてなしされるもの」なんて考えは良さそうですが、完璧とは言えません。仕事でも上下関係があって配慮する側・される側が存在します。
業界において有名な人に対しては、みんなペコペコしますよね。

「ゲームはストレスがない」というのも違います。対戦ゲームはとても楽しい半面ストレスが大きいですし、いわゆるソシャゲを遊んでいるとまるで仕事のような作業だと思ってしまうことも。

そもそも筆者のようなゲームライターはゲームを遊ぶことが仕事に繋がりますし、プロゲーマーなんかさらに「ゲームを遊ぶこと=仕事」といえます。なかなか仕事とゲームの違いをはっきりさせるのは難しい気がしてきますね。

◆『はたらくUFO』のバイトが楽しい5つの理由
では逆に、『はたらくUFO』ではさまざまな仕事をするのになぜ楽しいのか? と考えてみましょう。
そうすると本作がいろいろなバイトなのにを遊んでいて楽しく感じる理由がわかるはず。

第1に「注目してくれる&褒めてくれる」ところがポイントです。周りの人たちはみんなジョブスキーの働きぶりに一喜一憂してくれますし、うまくクリアすれば報酬アップ。「栄光の記録」という新要素は、実績(トロフィー)のようにさまざまな記録をつけてくれます。こうなれば嬉しくなってしまいますよね。

第2に「失敗しても怒られない」。
化石など貴重品を落とすと傷んでしまうわけですが、それでもとんでもなく怒られることはありません。やはり仕事をするうえでむやみに怒られるのはつらいだけですよね。

第3に「音楽がノリノリ」なのも大事です。本作では「は~たらく ゆぅ~ふぉお~」というフレーズがいろいろなジャンルにアレンジされた楽曲が採用されており、つい口ずさんでしまいます。職場でBGMを流すのは難しいかもしれませんが、楽しく働ける雰囲気であったほうがいいのは確かですよね。

第4は「飽きさせない」。
『はたらくUFO』ではステージがいろいろと用意されており、プレイヤーを飽きさせません。仕事も飽きたらダレますし、ポジティブな変化があると嬉しいのは当然ですよね。ついでにドット絵もかなりキュート。

第5のポイントは「装飾がすごい」です。本作では「オートセーブした」という文字情報もかわいく動きますし、ジョブスキーが着替えるときはファッションショーのような演出が用意されています。職場も綺麗なら働く意欲がより湧くはずです!

……と、『はたらくUFO』ではプレイヤーにバイトをさせる配慮がたくさんあるので、さまざまな業務も楽しく遊べるのでしょう。
つまり身も蓋もなく言ってしまうのであれば、そもそも「仕事は楽しくしようとしていないから楽しくない」のだと思われます。

「なるべく怒らないで丁寧に教えよう」くらいなら最近でもよく言われるようになってきましたが、職場の物理的な環境は場所によるでしょうし、そもそもそのあたりに手が回らないという可能性も十分にありえます。あるいはミスしたときのリスクが軽減できない仕事もあるでしょう。

◆「はたらく」ことを考えさせられるゲーム
ゲームは「娯楽のため」あるいは「利益を出すため」といった理由で作られます。一方で会社や仕事は「利益を出すため」にはあっても「娯楽のため」には存在しないわけで、そこが違いであるといえそうです。

まあ、筆者はゲームライターという仕事なんだか趣味なんだかよくわからないもので飯を食っているので余計に複雑なのですが(楽しくもあり苦労もあります)。誰もがジョブスキーのように前向きに働ける世の中になるといいですね。