当時、日本に一大ブームを巻き起こした「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)。任天堂初のカセット式家庭用ゲーム機として登場した本機は、10年以上も新作ソフトが出るほど長く愛され続けました。


ファミコン以前にも家庭用向けのゲーム機はありましたが、ゲームの面白さをこれだけ広く知らしめたのは、ファミコンの功績と言って間違いありません。もちろんその影響力を支えたのは、斬新で刺激的だった名作ゲームの数々。彼らの活躍なくしては、ファミコンの成功もあり得なかったでしょう。

そんなファミコンが、2023年7月15日に40周年を迎えました。歴史の分だけゲームの現場も進歩し、ハード性能や表現力の広がり、そして開発規模など、何もかもが大きく変わっています。ですが、この令和に活躍しているゲームシリーズの中には、その原点がファミコンだったタイトルも少なくありません。


ファミコン時代から現代まで駆け抜けた、歴戦のゲームシリーズたち。その偉大なる足跡に敬意を表し、ファミコン40周年を機にその原点を紹介します。

■『スーパーマリオブラザーズ』:1985年9月13日発売
任天堂の顔とも言える「マリオ」。ゲームの世界だけでなく、映画の主役としても活躍中ですが、初めてその名を冠したゲームとして知られる『マリオブラザーズ』は、その原点が実はファミコンではありません。この作品はまずアーケードゲームとしてデビューし、後にファミコン版(1983年9月9日発売)が登場しました。

そのため、「マリオ」の名をゲームタイトルに掲げたファミコン発のシリーズ作は『スーパーマリオブラザーズ』になります。
もはや説明の必要もないほどの有名作ですが、本作がファミコン人気をさらに押し上げ、ファミコン時代を揺るぎないものとした立役者のひとりです。

この『スーパーマリオブラザーズ』の最新作は、今年の10月20日に発売予定の『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』。横スクロールアクションのシリーズ最新作は、なんと約11年ぶり。ですが、今回もきっと新鮮な驚きと楽しさを提供してくれることでしょう。

■『ボンバーマン』:1985年12月20日発売
『ボンバーマン』と言えば、友達やオンラインを通じて競い合う対戦ゲーム……というイメージを持っている方が多いはず。確かにこのシリーズは、対戦ゲームの面白さが広く伝わっており、その一面がきっかけでヒット作となりました。


ですが、原点となるファミコンソフト『ボンバーマン』は、対戦要素はなくソロプレイのみ。パワーアップアイテムで自分を強化しつつ、全50面のステージを踏破するアクションゲームでした。PCエンジン版『ボンバーマン』の印象が強いため、当時遊んでいたはずなのに、ファミコン版の記憶が薄い人も少なくありません。

■『ドラゴンクエスト』:1986年5月27日発売
不朽の名シリーズ『ドラゴンクエスト』も、同名の1作目がファミコン向けに登場しました。次世代のスーパーファミコン時代から今日に至るまで、様々なプラットフォームにリメイクや移植され、オリジナル版とは異なる部分もありますが、今でもアクセスしやすい環境にあります。

まだほとんど浸透していなかった“RPG”の面白さをゲーム少年たちに伝え、後に訪れるRPG黄金期への道筋を作った『ドラクエ』。
この原点がなければ、現在開発中の最新作『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』も存在しなかったことでしょう。

■『ロックマン』:1987年12月17日発売
ファミコン発のアクションゲームと言えば、『ロックマン』も外せません。難易度高めの硬派なバランスながら、攻略ステージを任意で選択できる柔軟性、ボスの攻略順で変化する難易度、親しみやすく優れたキャラクターデザインなど、独自性が高く非常に魅力的な作品でした。

『ロックマン』のナンバリング作品は、ファミコンだけでも6作品が登場。その後も、プラットフォームを変えながらシリーズを重ねていき、2018年10月に最新作『ロックマン11 運命の歯車!!』がリリースされました。

また、派生してシリーズ化を果たした作品が非常に多く、『ロックマンワールド』、『ロックマンX』、『ロックマンDASH』、『ロックマン エグゼ』、『ロックマン ゼロ』、『ロックマン ゼクス』、『流星のロックマン』……と、枚挙にいとまがないほど。
これほどの展開を見せたことが、高い人気の証左に他なりません。

■『ファイナルファンタジー』:1987年12月18日発売
『ドラクエ』と並ぶ人気RPG『ファイナルファンタジー』も、ファミコンでデビューを果たしました。当時、『ドラクエ』や『ドラクエII』のヒットを受け、各メーカーがRPGに進出し、しのぎを削っていました。『ファイナルファンタジー』もそのひとつですが、多数のRPG作品に埋もれることなく、1作目から確かな存在感を放ちました。

当時から“魅せる”演出に注力し、印象的なタイトルコール、キャラクターの強さを実感できるクラスチェンジ、序盤の展開が終盤に繋がる壮大な物語など、いずれも忘れがたいプレイ体験です。こうして始まった本シリーズは、 2023年6月22日に発売された『ファイナルファンタジーXVI』にバトンが渡されました。
おそらく今後も、そのバトンが未来に向かって渡されていくことでしょう。

■『桃太郎電鉄』:1988年12月2日発売
対戦ゲームの代表格として、『ボンバーマン』と並び立った『桃太郎電鉄』。こちらはボードゲームなのでまったくジャンルは異なるものの、我を忘れるほどの熱中度はいずれも共通。時には、友達同士でケンカに発展するほどでした。

こちらも『ボンバーマン』と同じく、『桃太郎電鉄』もPCエンジンのイメージが色濃く残っています。マルチプレイ向きだったPCエンジンでヒットを飛ばしたほか、本シリーズに欠かせない「貧乏神」の初登場がPCエンジン版だったため、その印象を強めたのでしょう。

本シリーズも長年愛されたものの、『桃太郎電鉄WORLD』以降、6年ほどの空白期を迎えます。ですが2016年に再始動し、『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』は350万本を超える大ヒットを記録。最新作『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』が今年の11月16日発売予定と、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進が止まりません。

■『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』:1990年4月20日発売
かつての戦略系シミュレーションゲームは、戦車も兵士も「ユニット」として扱い、そこに個性はなく、資源の限り生産できる駒扱いでした。しかし、このスタイルに一石を投じ、後に“シミュレーションRPG”と呼ばれるジャンルの先駆けとなったのが、『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』です。

どのユニットも異なる顔と名前を持ち、ステータスの成長率も個別に設定。RPGのように成長するユニットは、苦労を重ねた数だけ愛着も沸き、唯一無二の存在となります。ですが、一度倒れれば例外を除いて復活はせず、愛着の分だけ喪失感が増す作りは、数多くの悲劇と忘れがたい思い出を生み出しました。

この名シリーズも、時代と共に少しずつ形を変え、しかし今でも多くのユーザーから支持を集めています。最新作の『ファイアーエムブレム エンゲージ』は、今年の1月20日に発売されたばかり。そのため新展開はまだ先になりそうですが、『ファイアーエムブレム』の歩みはこの先もまだ続くことでしょう。

今回はファミコンソフトのみを取り上げましたが、周辺機器の「ディスクシステム」からは、『ゼルダの伝説』(1986年2月21日発売)や『悪魔城ドラキュラ』(1986年9月26日発売)などが原点となり、シリーズの産声をあげています。

今回40周年を迎えたファミコン。そこから巣立った名シリーズは、今もゲーム業界を輝かせています。彼らの活躍が続く限り、ファミコンの偉業もまた語り継がれることでしょう。