『時のオカリナ』は、いわゆる「3Dゼルダ」を確立させた名作として知られています。同時にアクションゲームの在り方そのものを変革し、当時の子供たちに仮想空間での操作の仕方を教えたという功績もあります。
これはデジタルデバイドの問題を語る上で、欠かすことのできない話題だったりもします。『時のオカリナ』があったからこそ、我々はPCやスマートフォンを器用に使いこなせる……と言ってもいいのではないでしょうか。
◆「日本経済暗黒期」の中での発売
1998年。この時代は、日本にとっては「暗黒期」でした。
これは決して大袈裟な表現ではなく、バブル崩壊以降の経済の低迷がついに実生活にも及び、高度経済成長期では主役だった大企業や金融機関が次々と倒産しました。山一証券の衝撃的な経営破綻は、1997年11月のことです。
平成10年度年次経済報告には、こう書かれています。
1997年度は、自律回復過程への復帰が挫折して景気が足踏みし、停滞状態になった年である。税負担増やある程度の駆け込み需要の反動により「97年度前半は景気の足取りが緩やかになる」ことは、政府の経済見通しでも織り込んでいたが、影響は予想以上に大きく現われた。とくに96年度末の駆け込み需要は政府の予想を大きく上回り、その反動減も大きかった。
(中略)
現在景気は停滞を続け、厳しさを増している。
(平成10年度年次経済報告 第1章 景気停滞が長びく日本経済 内閣府)
もはや今まで通りのやり方では全く業績を上げられなくなり、かといって自分自身の発想で物事を変えることも周囲の目があるからやりづらい……という状況に陥っていました。当時中学2年生だった筆者の目から見ても、周囲の大人は明らかに焦っていたように思えます。
そんな時勢の中で登場した『時のオカリナ』は、極めて画期的な作品でした。
それは、単に3Dグラフィックのゲームだったという点を大きく超越したものでもあります。
TPVにしろFPVにしろ、初めてそれをプレイする人は「視界操作」に難儀するのではないでしょうか。TPVの場合は、プレイキャラを特定の方向に振り向かせたり、追い駆けてくる敵に正面から対峙して堂々と戦う操作は決して簡単ではありません。人によってはかなり長い時間の練習が必要です。
驚くべきことに、『時のオカリナ』はそれに対する解決策をゲーム内に実装していました。「Z注目システム」です。
◆「Z注目システム」が3Dアクションゲームの在り方を変えた!
Nintendo 64のコントローラーにはZトリガーボタンが搭載されています。
これを敵や目標物の近くで押すことで、そこにプレイヤーキャラの視点が固定されるという仕組みです。
このZ注目システムが、後世の3Dアクションゲームでは常識となっているエイム補正機能の開発につながりました。
こうして3Dアクションゲーム初心者が必ずぶち当たる「エイム合わせ」という壁が取り払われると、アクション自体も多様化していきます。『時のオカリナ』にはパチンコや弓矢といった飛び道具も登場しますが、Z注目システムを使うことで確実な遠距離攻撃が可能です。
その上で、ゼルダシリーズはアクションゲームでありながら「謎解き」が物を言う作品群であることを思い出す必要があります。
◆リメイク版の操作方法はどうなる?
難解でありながら理不尽さを感じさせないダンジョン内での謎解きは、2D・3D問わずゼルダシリーズの醍醐味と言えます。
その謎解きに、「高さ」と「奥行き」が加わったのが『時のオカリナ』です。「3Dだから当然ではないか」という意見は、歴史を後世から見下ろす行為。缶詰を開けるための缶切りという道具は、缶詰が発明されてから約50年後にようやく登場しました。それと同じように、エイム補正機能は3Dゲームの登場と共に存在したものではなかったのです。
3Dゼルダの第1作にして、恐るべき完成度を誇っていた『時のオカリナ』。これは仮想空間のキャラクターをどのように動かすか、というレクチャーを当時の子供たちに施しました。現代では左ジョイスティックでキャラ移動、右ジョイスティックで視界移動という操作が定着していますが、そうした常識が確立する前段階として、『時のオカリナ』に実装されていた操作機構は大きな社会的意義を含んでいたと考えることができます。
これらの機能が、リメイク版ではどのような形になるのか。
リメイク版はよりモダンな操作方法になると予想できますが、一方でオリジナルに忠実な操作を望むファンも少なくないと思われます。そうしたことも含め、リメイク版がどのような形に落ち着くのか注目する必要があります。
※参考:平成10年度年次経済報告 第1章 景気停滞が長びく日本経済 内閣府


](https://m.media-amazon.com/images/I/51pHWdWD1sL._SL500_.jpg)






