「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
という伝説をご存知でしょうか。
■元ネタは小説
結論から申し上げますと、元ネタはとある小説でした。その小説とはずばり、梶井基次郎の「桜の樹の下には」。梶井基次郎といえば、小説「檸檬」などが代表作の、大正時代に活躍した小説家です。
彼は若くして肺結核を患い、20篇余りの小品を残しながらも31歳の若さで没しました。儚い桜の花のイメージは、薄命だった梶井基次郎の生涯とどこか重なります。
そんな梶井基次郎が遺した「桜の樹の下には」は、「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という衝撃的な一言から始まる短編小説です。
内容は、桜の樹の下には死体が埋まっているのだというグロテスクな説を、「俺」という一人称を用いて、読者に力説するという独特のスタイルになっています。
なぜ梶井基次郎は「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」などという衝撃的かつグロテスクな幻想を力説したのでしょうか。
■都市伝説の真意
その答えは、「桜の花があまりにも美しすぎて不安になったから」でした。
例えば、あまりにも清廉潔白な聖人君子や、1つの欠点もない完璧なものなどを見ると、「何か裏に汚い秘密や欠点があるに違いない」などと考えてしまう。
同じように、「完璧な美しさなんてあり得ない」と考えた梶井基次郎は、桜の花があまりにも美しく咲き誇るがために、その根元には腐乱した動物の死体が埋まっていて桜の樹はその養分を吸っているのだという「醜さ」をプラスする事で、桜の美しさを信じようとしたのです。

■天才小説家たるゆえん
小説「桜の樹の下には」は、一見グロテスクな作品ですが、じっくり読んでみると、醜いものを対比させているためによりいっそう桜の美しさが際立ち、その美しさにリアリティが与えられている事に気が付きます。
また、表層的な桜の花の美しさのイメージに、ミステリアスで妖艶な奥行きを加える効果もあります。
総括すると、やはり梶井基次郎は天才小説家だったのだと言わざるを得ません。
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