愛らしいペットとしての猫・ちょっと怖い妖怪になった猫・福を招いてくれるありがたい猫など、さまざまな表情を持つ猫達は庶民の暮らしの中に息づいていました。
そんな、猫ブームの歴史やどのような猫がいたのかなどを紐解いてみましょう。
■江戸時代に爆発的な猫ブームが
豊原周延「猫」猫と遊ぶ女性と少女
一説によると、猫は奈良時代頃に経典などをネズミの被害から守るため中国から輸入されたそうです。そして、平安時代には貴族や文化人に愛され、「枕草子」「源氏物語」などにも愛玩動物として登場していました。
さらに、江戸時代に入ると、猫文化は爆発的な広がりをみせました。
その理由としては……
1)都市化が進む中でネズミを駆除する必要が増え、庶民の間で猫を飼うことが当たり前のようになった
2)有名な人気絵師達が猫をモチーフとして作品に取り上げた
などが挙げられます。
また、当時産業として盛んだった農業や養蚕業を営む人々にとっては、猫は商売の天敵であるネズミを駆除してくれる大切な存在でした。
そして、お守り・縁起物として愛されるようになり、絵画や招き猫の置物なども登場。庶民の間に広がっていったのです。
■愛猫家として有名な歌川国芳

猫の当字「か つ を」歌川国芳
江戸時代の浮世絵師として有名な歌川国芳。大の愛猫家で数十匹も同時に飼っていたそうです。
国芳は、飼い猫がなくなるとその当時はどの家にもなかった「猫の仏壇」に、亡くなった猫の戒名を書いた位牌を置いていたと伝わります。
そんな国芳はさまざまな猫を描き、その作品は版画となって数多く擦られました。人々はネズミ除けのお守りとして買い求めたことも、猫人気へとつながったのです。
猫を好んで描いた絵師は歌川国芳だけではありません。また、猫は単に愛玩動物としてだけではなく「妖怪」として描かれることもありました。

「流行猫の戯れ」歌舞伎をパロディ化した全五図からなる大判錦絵(歌川国芳&山東京山)
江戸~明治時代に民衆の間で広がった猫の妖怪「猫又」も、さまざまな作品が残されているのです。
【後編】に続きます!
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