今年は4月17日~5月16日の間のみ見られます。
根津美術館にはカフェや庭園もあり、作品を見た後はゆっくり寛いだりもできます。さらに、今年は開館80周年記念なのでなおさら見逃せないですね!
また、今年の入場は日時指定予約制となっているので、オンラインで日時予約をして作品を楽しみましょう。
■琳派絵師・尾形光琳の大作「国宝・燕子花図屏風」!
国宝《燕子花図屏風》尾形光琳(右隻)

「燕子花図屏風」は、尾形光琳[1657~1716]によって18世紀に描かれました。
光琳の作品には、制作年代のはっきりわかる作品は少なく、画風や、画面に捺されている印章などから制作年が推定されています。
大胆な構図や色づかいが印象的で、一度見たら忘れない作品です。
一つの屏風が6枚折り、左右2枚で一つの作品となっており、左隻には近景を、右隻には遠景を描いた、大地の広がりや臨場感を感じられる作品です。
■燕子花図屏風は『伊勢物語』第九段「東下り」を描いた作品
燕子花図屏風は『伊勢物語』第九段「東下り」を題材として描かれています。
本当はすごく長い物語なのですが、ひとまず絵に関係ある部分だけ、あらすじを紹介していきますね。
主人公は在原業平。都・京には居場所がないと感じ、自分の居場所を求めて東(当時はまだ未開の地)へ旅に出ます。
旅の途中、三河(愛知県東部)の八橋という場所で休憩していた時のこと。
八橋という地名は、水が流れていく川が八手に分かれていて、橋を八つ渡してあることに由来します。
橋のほとりに咲くカキツバタの群生を見て、ある人が業平に歌のリクエストをしました。
「『かきつばた』の五文字を、句の先頭に入れて、旅の気持ちを読んでください」
難しいリクエストですが、歌の名手であった業平はそれに応えます。
から衣
きつつなれにし
つましあれば
はるばる来ぬる
たびをしぞ思ふ
現代語に訳すとこんな意味になります。
「長く着ているうちに体になじんでくる唐衣の褄(つま=端)のように、長年連れ添ってきた妻が都にいるので、はるばるとやって来た旅のわびしさが身にしみる」
周りにいた人はみなこの歌に感動し、涙を流さずにはいられませんでした。
このエピソードが、燕子花図屏風の背景とされています。
あえて人物を描かないことで、装飾性や高いデザイン性が生まれています。当時の人々は、自分が伊勢物語に入り込んだ気分を味わっていたかもしれません。
■「高いデザイン性」と言われる理由!呉服屋出身だからできたこと
「デザイン性が高い」と評されるこの作品。確かに、大胆な配色やリズミカルな配置が心地よいです。しかし、それだけではありません。せっかくなのでさらに深掘りしていきましょう。
この作品がデザイン的と言われる理由は、パターン化された花の構図にあります。


赤く囲んだ部分に、パターンの繰り返しを確認できます。これは着物の染織の際に使う、「型紙」の技法を応用して描かれました。
しかし、同じ構図でも筆使い・色合いが微妙に異なるために、独特のリズムが生まれています。
この独自性は、呉服商に生まれた光琳だからこそ考えついたと言えるでしょう。
■三色だけでも豪華な理由!使用された画材はどれも最高級品!
実は、この燕子花特別展、毎年違うテーマで開催されています。
今年のテーマは「色彩の誘惑」。
そこで、贅を極めた色づかいにも注目したいと思います。
この作品は、日本・東洋において特別な伝統を有する三色、金・青・緑を使って描かれています。
たったの三色だけですが、どれも超高級画材です。
背景は全て金箔。その数なんと1000枚以上。
カキツバタの花たちは、どれも真っ直ぐ上を向いて生き生きと描かれています。発色の良い、高級で上質な絵の具を使う機会を得て、作者・尾形光琳の心も高揚していたのではないでしょうか。

■庭園ではカキツバタも見られる
なんと、燕子花図屏風特別展が毎年春に開催される理由、それはカキツバタの開花時期に合わせているからです。
根津美術館には庭園もあり、本物のカキツバタも見られます。
開花予測は4月末~5月上旬。
作品を見た後に庭園を散歩だなんて、なんとも粋ですね。
■注意!今年は日時指定予約制!
今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、日時指定予約制になっています。
来館の前日までにホームページにて日時指定入場券の購入が必要です。
会期終了直前の、5月11日(火)~16日(日)の6日間限定で夜間開館(19時まで)もしているのでありがたいですね。
■根津美術館特別展「国宝・燕子花図屏風ー色彩の誘惑ー」
- 会期:2021年4月17日(土)~5月16日(日)
- 会場:根津美術館
- 開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
- 夜間開館:5月11日(火)~16日(日)は19時まで(入館は18:30まで)
- 休館日:毎週月曜日※ただし5月3日(月・祝)は開館
根津美術館
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan