♪むつき はねつき つばきもち
うめのはなさく うぐいすもち……♪
※「くいしんぼうのカレンダー」より
明けまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
昔から1月を睦月(むつき)と呼びますが、どうしてそのような名前になったのでしょうか。
知らなくても別に困らないけど、興味をもって調べてみると、新しい発見があるかも知れません。
そこで今回は、睦月の由来と、他にもたくさんある1月の別名を紹介したいと思います。
■親族みんなで睦び合う月
睦月の語源については諸説ありますが、新年には親族が集まって親睦を深める(睦び合う)ことから、睦び月が訛って睦月になったとする説が有力です。

コロナ禍でなかなか帰省できない人も、オンラインで睦び合える(イメージ)
他には春の始まりに生命が生み出される「生月(うむつき)」や草木が萌ゆる「萌月(もゆつき)」、一年の元(もと、はじめ)となる「元月(もとつつき、元津月)」が訛ったとも言われます。
新たな生命が生まれ、家族が睦びあう喜びをよく表現したネーミングですね。
他にも1月の別名はたくさんありますが、ここでは特に面白いものを紹介したいと思います。
太郎月(たろうづき) 一番初めに生まれた男の子「太郎」の月だから太郎月。桃太郎や金太郎みたいな力強さを感じます。

今年1年、元気いっぱい(イメージ)
でも、一姫二太郎(最初は女の子、次に男の子がよいとされる)とも言われるように、1月を女の子に喩える表現も、今後生まれるかも知れません。
時に、最初の女の子ならではの名前って、何でしょうね。
初春月(はつはるづき)
新(あらた)しき 歳の始めの 初春の
今日降る雪の 弥重(いやしけ)吉事(よごと)
【意訳】新たな歳の始まり、この初春に今日降り積もる雪のように、どうかよいことがいつまでも重なりますように。

大伴家持。Wikipediaより
日本最古の歌集『萬葉集』の大トリを飾る大伴家持(おおともの やかもち)の歌は、天平宝字3年(759年)の新年会で詠まれたもの。
千年以上の歳月を経た令和4年(2022年)も、どうかよいことが重なりますように。
孟春(もうしゅん) 旧暦では1~3月を春とし、その最初の月を長男(孟)に喩えた表現で、今でもちょくちょく見かけます。
孟は「はじめ」の意味を持ち、古代中国人男性が通称として用いた字(あざな)がその由来です。

曹操孟徳。月岡芳年「月百姿 南屏山昇月」
『三国志』が好きな方なら、曹操孟徳(そうそう もうとく)の孟徳が字、彼は長男でした。
ちなみに2月は仲春(ちゅうしゅん)、3月は季春(きしゅん)となり、いずれも字に由来します。
January

二つの顔を持つヤヌス神。それぞれ過去と未来を向いているのだとか。Wikipediaより
ちなみに、英語で1月を示すJanuaryはローマ神話に登場する出入口、転じてドアを司る神ヤヌス(Janus)の月を表し、一年の入口を意味しているのだとか。
どこの国でも、新しい年の訪れは特別な気持ちで迎えているようです。
1月の別名はまだまだたくさん(開、初、首など、始まりを意味する表現が多く)あるので、手紙やメールなど、おりに触れてサラッと使いこなしてみたいですね。
※参考文献:
- 伊宮伶『異名・別名の辞典』新典社、2003年7月1日
- 岡田芳朗ら『現代こよみ読み解き事典』柏書房、1993年2月
- 角川書店 編『俳句歳時記 第五版 春』角川ソフィア文庫、2018年2月24日
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