そのイメージを覆してくれるのが、鶴屋南北作の「桜姫東文章」です。今回は「桜姫東文章」のシナリオのヤバさを紹介し、少しでも歌舞伎って面白い、そして身近なものだと感じていただきたいと思います。
■今風のストーリー
「桜姫東文章」の物語の主軸かつ見どころの一つが、桜姫と釣鐘権助(つりがねごんすけ)という盗賊の恋愛と濃密な濡れ場です。
美しく身分の高いお姫様とアウトローの恋愛は恋愛ものの王道といえるほど人気の設定ですよね。
しかも桜姫と権助が相思相愛なのではなく、桜姫の片思いで権助の方は桜姫に愛情がないがために桜姫が堕ちるところまで堕ちてゆくという超今風のストーリーなのです。
■主人公、桜姫の感覚がヤバい
さて、この話の何がヤバいって、桜姫が恋に落ちたきっかけがヤバいのです。2人は出会いは権助が桜姫の家に盗みに入ったのがきっかけです。しかも権助はその場で桜姫をレイプし、それによって桜姫が妊娠するという権助のクズ男っぷり!
それでも桜姫は子供をちゃんと生み育て、それどころか権助を一途に愛し続けているのです。現代の私たちから見ても恋愛感覚がぶっ飛んでますよね。
■超濃厚なのにいやらしくない濡れ場
2人は後にもう一度出会い、歌舞伎の演目でも屈指の濃厚な濡れ場を見せてくれます。
しかしそこはさすが歌舞伎、濡れ場の描写は観客全員がうっとりするほど美しく、ため息が客席のあちこちから聞こえてきそうなほど。
歌舞伎は古臭くないどころか、現代の感覚でも新しすぎる上記のシナリオを、いやらしさとは真逆の美しさで魅せてくれる魅惑の伝統芸能なのです。
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