■「あんびん」と大福餅

あんびんという和菓子のことはご存じでしょうか。これは大福餅と似ており、地域によってはあんぴん・おやき・ちゃなこ・はりこしと呼ぶこともあります。
特に山形や長野や山梨、埼玉などで郷土料理として親しまれています。

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塩あんびん

作り方はシンプルで、薄く伸ばした餅の皮で、あんこを包むというもの。この説明だけを聞くとまるきり大福餅そのものですが、その違いは材料の塩にあります。

あんびんは、餅の皮の中に塩が使われており、この塩味が小豆(あんこ)の甘みを引き立たせる役目をはたしているのです。

ここであんびんの表記の話になりますが、あんびんを漢字で書くと塩餅となり、まさに塩が一番の特徴であることが分かります。

また、あんびんと大福餅の大きな違いとして、皮の材質が挙げられます。あんびんの皮は先述の通り薄く伸ばしたお餅ですが、大福餅の皮は白玉粉と砂糖から作られた求肥です。

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豆大福

この材料の相違がどんな違いをもたらすのかというと、大福の皮は糖分が含まれているため時間が経っても柔らかいですが、あんびんは餅そのものなので、時間の経過と共に固くなるのです。

ただ、だから大福餅より劣るわけでもなく、そのかわり焼いて食べるという楽しみ方もあります。あんびんを焼くと「おやき」になると言えるかも知れません。

また、醤油や雑煮とも相性がよく、小豆の甘さを引き立たせるためにお汁粉に入れたり、砂糖をつけたりする食べ方もあるようです。

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よもぎのおやき



■縁起物だったあんびん

なぜ、あんびんで塩を使うのかというと、昔の日本では砂糖が貴重品だったので入手しにくかったからです。


またあんびんはもともと農村の食べ物で、新米の収穫祝いに供されていました。食紅で色を付けた大福と、白色のあんびんで紅白餅としてハレの行事で食べられることもあったようです。

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紅白の焼き餅

このように、あんびんにはハレの日の食べ物という特徴があります。桃の節句や端午の節句で食べられることもありました。

もともとがとても素朴なお菓子なので、現代ではバリエーションも豊富です。例えば、山梨県峡南地域で親しまれているあんびんは、皮やあんこにサツマイモやとうもろこしが使われている点が特徴的です。

皮で包まれたあんこには角切りのサツマイモが入っており、腹持ちがいいことから子供のおやつにも向いてます。

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つぶあん入りのおやき

この地域はもともと米作りに不向きで、サツマイモやとうもろこし、小麦の栽培が盛んであったことから生まれたといわれています。そういえば武田信玄も、甲斐国は米が作りにくいからということで、粉や野菜をメインにしたほうとうを陣中食にしていましたね。

このように、作り方や呼び名は地域ごとに微妙に異なっていますが、いずれの地域でも今でも愛されています。

参考資料
違い比較辞典
農林水産省
レファレンス協同データベース

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