よく時代劇にも登場する通称「下女」。武家のみならず商家などでも、おつかい、掃除、料理、様々な雑用をする女性たちですが、当たり前のように存在が描かれているものの、彼らはいつどのように使える場所を決めているの?…と思ったことはありませんか?

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絵本時世粧 歌川豊国(甘泉堂/和泉屋/市兵衞、享和2)(1802)

様々あった江戸の女性の仕事ですが、最も多くの女性が就いたのが奉公先で下働きをする「下女」と呼ばれる仕事でした。
江戸の町には武家屋敷や大店が集まっていたため、下働きの需要はかなりありました。

その仕事の内容が炊事・掃除・主人の使いなど専門知識は必要とされなかったことから、多くの女性たちが就くことが出来ました。

下女として働くためには、まず「口入屋」という斡旋業者のもとに行き、奉公先を紹介してもらいます。女性たちは口入屋から紹介された家に行き労働条件を確認して、一日その家での仕事を体験します。

その際に彼女たちが必ずしたのが食事を試食すること。主人が彼女たちの料理を食べるわけではなく、派遣される女性が派遣先の料理を食べるなんて意外ですね!


それもそのはず、下女は基本的な雇用形態が「賄い付きの住み込み」だったため、その家の食事は非常に重要でした。


そして自分が食事を作る役割で雇われるとしたならば、その家の食材や使用する量によって働きづらくなることもあったため、気に入らなければ断ることもあったとか。

雇い主も気に入れば翌日から住み込みで働き始め、10日ほど経ったら「請状」という契約書を取り交わして、ようやく本採用となったのでした。


現在の派遣制度と、大筋はほとんど同じですね。




■休みや給金は?

奉公人は士農工商で分かれ、ざっと下記のようになります。

・終身奉公…生涯を通じて奉公する。一般に武家などの世襲の奉公に多い。

・年季奉公…1年を越える年数を決めての奉公。徒弟奉公はその例。
・出替(でかわり)奉公…1年または半年の期間を決めての奉公。前者を一年季、後者を半

季の奉公といい、期限がきて奉公人が入れ替わるのを「出替り」という。

・日傭取り…1日や短期間の就労。現在の日雇労働者。

この記事では主に商家の下女を中心に記述します。基本、年季奉公か日雇いですが、安定した生活を望むのならば概ね年季奉公だったといえるでしょう。

給金は時代によって変わりますが、江戸中期頃で、男性は年3両、女性は1~2両。日雇の日当は大体150文から200文程度。

(下は町人屋敷でお茶を出している下女の姿)

江戸の女性は派遣の先駆けです!江戸時代の「下女」の仕組み。休暇や給金、「女中」との違いは何?


絵本時世粧 歌川豊国 ※一部抜粋(甘泉堂/和泉屋/市兵衞、享和2)(1802)

奉公人の休日はなんと正月と7月のたった2回! しかも各々たったの3日間だったといいます。それを俗に、藪入り(やぶいり)といって有名な落語の話になったり、川柳に詠まれました。
いやはや、下女は一日中・一年中働きづめですね。



■ちなみに「女中」との違いは?

もう一つよく耳にするのは「女中」ですね。「下女」とどう違うのでしょう。
実は正式には、女中は「上女中」、下女は「下女中」といいます。下女中を略して下女と一般的に呼ばれていました。

「女中」は商家や上層農家の娘などが、婚前に礼儀作法や家事見習いをかねて数年間奉公に出ることで、いわば本家や豪商のもとでの嫁入り修行の側面が強いものでした。


主に奉公先の稼業の手伝いや、来客時の接待や主人夫妻の身の回りのお世話などをします。


確かに時代劇でよく見る光景で、ある宅に訪問客がみえても、先に出てきて要件を聞く人物がいますね…! それを奥の間にいる主人に伝える場面はよく見る光景でしょう。女中はその家の恥にならぬよう一定の教養を持つ人物なので、こちらは民間の口入れ屋からというより、家から家の縁故での紹介がほとんどだったようです。

もう一方の下女中=「下女」は水回りを中心に行い、野菜や米を洗ったり、料理をしたり、雑巾がけの掃除などつらい体力仕事がほとんどでした。

どうでしたか。口入れ屋が働き口を斡旋してくれるとはいえ、女性が自立して働くのはなかなか大変だったでしょう。
現代よりも格段に職業の選択の自由は少なかったといえます。

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参考:『ビジュアルワイド江戸時代』など

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