江戸から明治に替わり、様々な西洋文化が導入されましたが、文明開化を象徴するものには蒸気機関車や蒸気船などが挙げられます。そして西洋文化が庶民の暮らしに浸透していくにつれて、人々の服装も大きく変化していきます。
歌川広重「東京汐留鉄道舘蒸汽車待合之図」
着物から洋服、丁髷から散切頭、武士の誇りである刀を取り上げる廃刀令など、あまりにも急速な変化に戸惑いを隠せない人たちも少なくありませんでした。当時の絵師たちの風刺画からもその戸惑いの様子が伺えます。
地獄も骸骨もドタバタ!文明開化を揶揄する明治時代の強烈な風刺画たち

明治時代も中頃になると、文明開化という現象も落ち着き、人々の暮らしの中に西洋文化が根付いていきました。そのころに、絵師として活躍していた水野年方(みずのとしかた)が描いたひとつの作品を紹介します。
それが「開化好男子」という作品です。
水野年方「開化好男子」

「開化好男子」は、水野年方が明治23年(1890年)に描いた作品で、8人の様々な職業の男性の服装を描いたもの。水野年方は明治時代、浮世絵師・月岡芳年に師事し浮世絵を学びました。
右から上等官吏、法学博士、豪商紳士、醫師(医師)、代議士、壮士、学校生徒、若旦那を描いています。明治時代になって23年、洋装がどれほど浸透したのかが端的に表現されているかと思います。
右端の上等官吏の服装は明治時代らしさが溢れてますね。
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麦わら帽をかぶっている”壮士”とは、明治時代の自由民権運動での活動家のこと。イケメン武士として有名な織田信福も自由民権運動家でしたが、着物の着方に共通するものを感じますね。

作品が描かれた明治23年前後は、和装姿と洋装姿は半々くらいの割合で存在し、正装は洋装で、という流れができてきた時代だったのかもしれませんね。
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