2024年4月13日から奈良国立博物館にて、空海の生誕1250年記念特別展として「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」が開催されています。

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この展覧会は同館の館長が「かつてない空海展」と豪語するほどの規模と内容。
いったい、どんな部分が”かつてない”のか。その魅力をじっくり深掘りしてみましょう。

ついに”かつてない空海展”がやってきた!密教を学び体感できる展示は必見「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」


弘法大師坐像(萬日大師)室町~安土桃山時代 和歌山・金剛峯寺

展示の約8割が国宝か重要文化財!

ついに”かつてない空海展”がやってきた!密教を学び体感できる展示は必見「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」


まず、何と言っても同展に集まった展示物の数と質がかつてない!

国宝28件、重要文化財59件が一堂に会し、展示の約8割が国宝か重要文化財に指定されています。

貴重な品をこれほど一挙に見られる機会はこれまでになく、この点だけでも来場の価値ありなのです!

さらに、国内の博物館やお寺だけではなく、インドネシア国立中央博物館に所蔵される名宝の数々も並びます。

これにより、シルクロードを通って日本に伝わってきた密教だけでなく、”海のシルクロード”と呼ばれるルートで広がっていった「もう一つの密教」の姿も知ることができるようになっています。



テキストでの学びだけではない!感じるのだ!

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空海は「密教は奥深く、文筆で表し尽くすことが難しい。そこで、図や絵を使って、悟らない者に開き示すのだ」と言っています。

文字や言葉の情報を知識として得るのではなく、図や絵からこそ密教の真髄は感じ取るものだということです。

ブルース・リーが言った「Don’t think.Feel!(考えるな、感じろ!)」にも通づるものがありますね。

そうした空海の思いから、今回の展示も仏教世界を絵図にして表した「曼荼羅」が数多く出典されています。

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国宝 両界曼荼羅のうち胎蔵界 平安時代 京都・神護寺

中でも注目すべきは京都・神護寺に所属される国宝「高雄曼荼羅」です。

赤紫の布に金銀泥で描かれた両界曼荼羅で、現存最古のものとされている非常に貴重なもの。


また、空海自身が制作に関わった現存唯一の曼荼羅であるという点も、見逃せません。

今から1200年ほど前に描かれた曼荼羅は、1793年に当時の光格天皇の命によって修理をされて以来、230年ぶりに2016年から2022年まで6年間をかけて丁寧な修理が施されました。

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国宝 両界曼荼羅のうち胎蔵界(部分) 平安時代 京都・神護寺

それにより、流れるような美しい線で描かれた諸尊の端正な姿が、再び浮かび上がりました。

同展はその修理後始めての一般公開。

是非、一辺が約4mという大きさに圧倒され、近づいてみて図像の緻密な描かれ方に感動してください!



仏像も見逃せない名品がズラリ!

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国宝 五智如来坐像 平安時代 京都・安祥寺

今回の展示で、入場者を最初に迎えるのが京都・安祥寺の「五智如来像」です。

空海が開いた真言宗の根本道場である「東寺」(教王護国寺)には、立体曼荼羅があります。絵図であった曼荼羅を、仏像を並べて表現した3Dの曼荼羅。

この五智如来も、陳列した展示ではなく、中心に真言宗の中心物である大日如来を配置、周囲にそのほかの如来像を置くという曼荼羅スタイルの展示になっています。

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孔雀明王坐像(快慶作・重要文化財) 鎌倉時代 和歌山・金剛峯寺

さらに、東大寺仁王像の政策などでも有名な快慶の作品も。

金剛峯寺の「孔雀明王坐像」(重要文化財)で、手が4本もある異形にも関わらず、自然なバランスが完成している巧みな腕の配置や、端正な顔立ちが快慶らしさを伝えます。

孔雀明王は、毒蛇を食べるとされる孔雀を尊格化した仏で、一切の災いを取り除くとされています。

仁和寺に伝わる空海ゆかりの孔雀明王の画像を手本に作られた名品です!

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不動明王坐像(重要文化財) 平安時代 和歌山・正智院

また、密教には欠かせない不動明王も複数展示。


不動明王は、真言宗の中心仏である大日如来の化身とされる存在です。

穏やかな表情の如来像と違って、憤怒相(怒りに満ちたような表情)をしています。

これは、怒りを持って煩悩を抱えた人を絶対に救済するという意思の現れであり、怖い顔とはウラハラに慈悲の仏なのです。

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不動明王坐像(重要文化財) 鎌倉時代 石川・法住寺

目に水晶を嵌めて生命感を生み出す「玉眼」という技法は、鎌倉時代以降に広まりますが、こちらの不動明王は、歯の部分にまで水晶が用いられているのが特徴的。

是非、近寄って確かめてみてください!



別ルートで伝わった密教まで網羅する展示

ついに”かつてない空海展”がやってきた!密教を学び体感できる展示は必見「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」


四面八臂降三世立像 10世紀 インドネシア国立中央博物館

密教は元々、仏教発祥の地インドで誕生しました。

その根本的な経典は『大日経』と『金剛頂経』の二つ。このうち、大日経はシルクロードを通って中国から日本に入ります。

一方で、金剛頂教はインド洋から”海のシルクロード”と言われる海路でインドネシアを経て大陸に戻ってきます。

日本に密教をもたらしたのは空海ですが、今回は、インドネシア国立中央博物館の名宝も展示され、空海以前の密教まで学べる空間になっているのです。

ついに”かつてない空海展”がやってきた!密教を学び体感できる展示は必見「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」


また、この展示方法も曼荼羅が表す「密教の宇宙」を感じさせるような空間に仕上がっており、ここでも知識としての学びでだけでなく「体験して感じる」ことが大事にされています。

この他にも、三筆(書の三大名人)にも数えられる空海直筆の書など、ご紹介しきれないほど見所が多数。

密教宇宙が体感できるアトラクションとして、同展に訪れて見てはいかがでしょう。


■展示会情報

奈良国立博物館 (奈良市登大路町50番地)
2024年4月13日(土)~6月9日(日)
4月13日~5月12日 後期:5月14日~6月9日(展示替えあり)
午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
月曜休館、5月7日(火)※ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館

特別展「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」

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