骸骨・髑髏・スカル・シャレコウベなどいろいろな呼び方があるどくろ。

仏教では、「永遠に普遍なものはない」という真理のシンボルといわれています。
昔は飢饉や疫病で埋葬されることのない遺体を捨て置いたため、野晒しになった髑髏は珍しいものではなく、仏教的なモチーフとして図像化されていました。

たとえば、千手観音の持ちものの中には「髑髏宝杖(どくろほうじょう)」という、鬼神を操れる杖があります。

骨だけの姿で蘇ったどくろは、東洋西洋問わず怪物とも妖怪ともいわれ恐れられている一方、昔から洋服やジュエリーなどファッションのモチーフとして愛されている不思議な存在です。

さまざまな捉えられ方をされるどくろですが、今回は日本の巨大などくろの妖怪「がしゃどくろ」についてご紹介しましょう。

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千手観音の左手には髑髏杖が(wiki)

■骸骨・髑髏・スカル…は何が違うのか?

人を喰らう巨大な骸骨の妖怪「がしゃどくろ」は奇想の絵師・歌川国芳が生みの親だった!【前編】


骸骨のイメージ(unsplash)

いろいろな呼び方がありますが、簡単に違いを挙げると……

▪︎骸骨(がいこつ):脊柱動物・ヒトや哺乳類の骨格のみが残っているもの
▪︎髑髏(どくろ):髑髏はどくろ・しゃれこうべ・されこうべなどいろいろな呼び方があり「頭蓋骨」を指す
▪︎スカル:骸骨や骨格のことを英語で「Skeleton(スケルトン)」、髑髏は「Skull(スカル)」

だそうです。

いずれにしても、髑髏は「死の象徴」と思われていますが、怖くて恐ろしい意味だけではありません。

仏教では「無常」「普遍のものではない」という意味があり、髑髏を身に付けると「死後も地獄に落ちない」と考えられているとか。

またメキシコでは骸骨や髑髏はカラフルな花に飾られた「Calavera(カラベラ)」(直訳すると頭蓋骨)というモチーフがあり、生きた魂を解放する「自由の象徴」とされているそうです。

そのため、11月の「死者の日」にはカラベラは家や店に飾られたり、さまざまなデザインのグッズが登場したりしています。

死・終焉などの重く深刻なイメージだけではないところが世界中で愛されている理由かもしれません。

昔から、髑髏モチーフはファッション・雑貨・アニメ・漫画・映画ほかさまざまなところで愛用されていますよね。

人を喰らう巨大な骸骨の妖怪「がしゃどくろ」は奇想の絵師・歌川国芳が生みの親だった!【前編】


メキシコの髑髏「Calavera(カラベラ)」(photo-ac)



■日本の妖怪「がしゃどくろ」とは!?

そんな髑髏ですが、日本生まれの「がしゃどくろ」という巨大な骨の妖怪がいるのはご存じでしょうか。


「がしゃどくろ」は、戦死したり野垂れ死したりして、誰にも埋葬をされることなくそのまま遺体が朽ちて骸骨になった者たちの無念・怨念などが集まり、巨大化した妖怪です。

この巨大な「がしゃどくろ」が誕生したきっかけになったのが、江戸時代の浮世絵師・歌川国芳が描いた有名な作品『相馬の古内裏』(そうまのふるだいり)という作品。

人を喰らう巨大な骸骨の妖怪「がしゃどくろ」は奇想の絵師・歌川国芳が生みの親だった!【前編】


歌川国芳「相馬の古内裏に将門の姫君瀧夜叉妖術を以て味方を集むる大宅太郎光国妖怪を歌川国芳『相馬の古内裏』(1845年 – 1846年頃)(wiki)

がしゃどくろを描いたものではありませんが、巨大な髑髏である点から、がしゃどくろのイメージとして初期から使用されてきました。

後編では、この「がしゃどくろ」にまつわるお話をご紹介しましょう。

【後編】の記事はこちらから↓

人を喰らう巨大な骸骨!妖怪「がしゃどくろ」は奇想の絵師・歌川国芳が生みの親だった【後編】
人を喰らう巨大な骸骨の妖怪「がしゃどくろ」は奇想の絵師・歌川国芳が生みの親だった!【前編】




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