そうしたシーンは、参加している兵の数が多いほど迫力満点のビジュアルになるでしょう。
「信州川中嶋合戦之図」(Wikipediaより)
しかしそのような総力戦は、臨場感を楽しむドラマのワンシーンとして観る分にはいいですが、実際の戦いでこれをやると双方ともに犠牲が多くなるものです。
そこで、合戦に際しては、さまざまな「作戦」が考えられるようになりました。
自軍の犠牲を最小限に抑えながら効率よく敵を倒すために、戦国武将たちは正面から戦うのを避けるようになります。
例えば奇襲を仕掛けたり、囮を使ったり、隠れて待ち伏せをしたり……。
こうしたさまざまな戦法が採用されるようになりました。
■武田軍「きつつき戦法」
武田信玄がよく用いた戦法として有名なのが、きつつき戦法です。
きつつきは木の中に潜んでいる昆虫を食べますが、こうした昆虫を捕獲するために、虫が隠れているのとは反対の方向から樹木をつつきます。そして、驚いて中から虫が出てきたところを捕まえるわけです。
武田軍はこれにヒントを得たのでしょう、まず別動隊に背後を襲わせて、驚いた敵軍が反対に逃げてきたところで襲撃する――というやり方を好んで行っていました。

JR塩山駅北口の武田信玄像
実際、このきつつき戦法は効果的ではありましたが、弱点があります。それは自軍を二つに分けざるを得ないという点です。
軍を別動隊と本体の二つに分けてしまうと、どうしてもひと固まりで動いているときよりも攻撃力・防御力ともに落ちてしまうのは避けられません。
川中島の戦いでは、上杉謙信がこのきつつき作戦を見破り、先に武田の本隊に総攻撃をかけました。そのため、信玄は苦戦することになったのです。
■島津軍「釣野伏せ」
また、薩摩の島津氏は囮作戦を得意としていました。

伊集院駅前の島津義弘像
まず正面から切り込み隊が敵陣に突入し、応戦する敵と刃を交えてしばらく戦います。
やがて切り込み隊は退却するのですが、敵が追撃するところを、隠れていた兵が左右から挟み撃ちにするのです。
これが有名な、島津勢の十八番である「釣野伏せ」という戦法です。
本隊による待ち伏せ、囮による陽動……。このようなきつつき戦法も、釣野伏せも、ドラマや映画、あるいは漫画など、合戦が出てくる娯楽作品ではよく見かけるタイプの戦法ですね。
戦国時代の武将たちも、効率よく敵軍を倒そうと、こうして知恵を絞っていたのです。
参考資料:歴史の謎研究会『舞台裏から歴史を読む雑学で日本全史』2022年、株式会社青春出版社
画像:photoAC,Wikipedia
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