福内鬼外こと平賀源内(安田顕)の序によって、吉原細見『嗚呼御江戸』は確かに売れた……が、吉原遊郭の集客にはつながりません。

何とか吉原遊郭に客が足を運びたくなる本を出したい……試行錯誤の末に作り出した『一目千本』。
女郎を活花に見立てる独創性と、あえて本屋で売らない営業戦略が奏功し、みごと吉原の活況を取り戻したのでした。

あえて売らない蔦重の営業戦略!”カモ平”の魅力上昇!【大河べ...の画像はこちら >>


大河ドラマ「べらぼう」公式サイトより

一方そのころ、江戸城では田沼意次(渡辺謙)らと松平武元(石坂浩二)らの政争が続き、田安賢丸(寺田心。松平定信)の養子問題が波紋を生じています。

困難にあっても挫けることなく創意工夫を続け、書肆(しょし。本屋)として着実に成長していく蔦屋重三郎(横浜流星)。その姿に多くの視聴者が元気づけられたのではないでしょうか。

それでは今週もNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第3回放送「千客万来『一目千本』」を振り返っていきましょう!

■なぜそこまで?駿河屋市右衛門の怒り

あえて売らない蔦重の営業戦略!”カモ平”の魅力上昇!【大河べらぼう】1月19日放送の解説・振り返り


蔦重の活躍に怒る市右衛門(イメージ)

田沼屋敷へ乗り込んだ蔦重に対する制裁(第1回放送)は当然として、吉原細見の改(あらため)にまで怒りを見せた駿河屋市右衛門(高橋克実)。

本業の引手茶屋に支障が出ているならともかく、なぜそこまで怒るのでしょうか。

劇中では松葉屋さんが「可愛さ余って憎さ百倍」と表現していましたが、

①実子である次郎兵衛(中村蒼)のボンクラぶりが浮き彫りになって苛つく。

②他業で才能を開花させると、独立してしまうかも知れない。

要するに、こんなところだったのかも知れません。

実際のところ、市右衛門が蔦重に駿河屋か蔦屋のどちらかを継がせたかったのでしょう。


それならそうと伝えておけば、そもそも蔦重も出て行く心配もなかったと思いますが、本作では不器用な父親が描かれていました。

■「これしか中橋」入銀で本を出した蔦重

困窮する遊女屋を立て直すため、蔦重は入銀で本を出版する企画を立ち上げます。

入銀とは本の出版に先立って予約金を入れてもらうもので、現代で言うところのクラウドファンディングのような感覚でしょうか。

遊女たちの競争心を煽り立てながら巧みに資金を集めましたが、九郎助稲荷(綾瀬はるか)の言う通り、かなり危ない橋でした。

結果として集まったからいいものの、もし空振りすれば、最初に寄付してしまった長谷川平蔵宣以(中村隼人)の50両はどうするつもりだったのでしょうか。

いくら窮余の策とは言え、もう少しリスク対策を考えたいところです。

しかしあまり細かくすると話のテンポが悪くなるので、視聴者の観てない陰で何か考えていたものと解釈しましょう。

■『一目千本』ヒットの理由は

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礒田湖龍斎「雛形若菜の初模様 丁子屋内名山」と蔦屋重三郎『一目千本 椿 丁子や名山』

あえて書店に並べないことで、買えないからこそ欲しくなる消費者の意欲をくすぐった蔦重。

遊女の実物を描かず、あえて花に見立てることで「実際はどんな女性なのか」一目見ようと多くの客がやってきます。

それにしても、花の絵を見ただけで女性の姿を思い浮かべ、吉原遊廓まで足を運ぶとは、なかなか想像力豊かですね。

そんな『一目千本 華すまい』では、花が東西に分かれて相撲(すまい)をとる趣向となっていました。

サブタイトルの「華すまい」は「放すまい」に通じ、客が放したくないほど魅力的な遊女の姿を彷彿とさせます。


また本作では、市右衛門に対するメッセージのようにも感じられました。

ちなみに当時の人々が熱中した『一目千本』はこちらで見られますので、蔦重たちに思いを馳せてみるのも一興ですね。

■ネットで愛称「カモ平」こと長谷川平蔵の魅力上昇

50両の身銭を切って吉原遊廓を救ったものの、親の遺産をすっかり食いつぶしてしまった長谷川平蔵宣以。

かつて「本所の銕(ほんじょのてつ)」と恐れられた札つきもこれでは形無し。後に「鬼平」と恐れられる傑物も、ネット上では「カモ平」と揶揄されてしまいます。

しかしこの「カモ平」の偉いところは、

①借金してまで吉原通いをしない。

②律儀に「行けない」とことわりの文を送る。

この2点。よほど花の井(小芝風花)へ真剣に入れ込んでいたことがわかります。

最も当時、この「カモ平」には妻子がいましたから、誠実かと言われれば微妙ですが……。

しかしここまでやらかした過去があるからこそ、後の男ぶりも上がろうと言うもの。今後の活躍に期待しましょう!

■賢丸の養子入り・田安家の受難

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白河藩へ養子入りする田安賢丸(松平定信。
画像:Wikipedia)

田沼意次の献言により、白河松平家への養子入りが決まった田安賢丸。

母の宝蓮院(花總まり)は強硬に反対するものの、そのまま押し切られてしまいます。

そして兄の田安治察(入江甚儀)が若くして急死。一橋治済(生田斗真)の不気味な態度が、不穏な思惑を感じさせずにはいられません。

劇中では「治察に万が一のことがあった際は、賢丸を呼び戻してよい」というお墨付きをもらっていました。しかし実際には許されることなく、田安家の当主はは永らく空席(明屋形/あきやかた)となってしまうのです。

「おのれ田沼!」

地団駄踏んでも後の祭り。いよいよ一橋派と田安派の対立は深まっていくのでした。

■第4回放送「『雛形若菜』の甘い罠」

蔦重(横浜流星)は西村屋(西村まさ彦)と共に、呉服屋の入銀で錦絵の制作を順調に進めるが…。城内では、田沼意次(渡辺謙)による賢丸(寺田心)の養子計画に暗雲が…。

※NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。

初めての出版本『一目千本 華すまい』でヒットを飛ばした蔦重。
しかし鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)はこれが面白くありません。

蔦重はもっと吉原を盛り上げるべく、次なる出版企画を立ち上げますが、果たして……。

横浜流星がいきいきと演じる蔦屋重三郎のキャラも立ってきて、面白くなってきたのではないでしょうか。

「あの子は、この街を誰よりも見ているんだねェ」

ふじ(飯島直子)の言ったとおり、吉原に対する蔦重の愛情と熱意が、視聴者の共感を呼んでいるように感じます。

次週も蔦重たちの活躍を、楽しみに見守りましょう。

トップ画像:大河ドラマ「べらぼう」公式サイトより

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