◆勝川春章/前野朋哉
かつかわ・しゅんしょう/まえの ともや

葛飾北斎の師匠で、当代一の役者絵師

蔦重(横浜流星)が手がけた『青楼美人合姿鏡』を北尾重政(橋本 淳)と共に描いた当代一の役者絵師。のちに葛飾北斎など多くの弟子を抱え、役者似顔絵を得意とする勝川派の代表となり、喜多川歌麿(染谷将太)の「美人画」や写楽の「大首絵」に大きな影響を与えることになる。


※NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。

当代一の浮世絵師として知られ、蔦屋重三郎の出版事業にも大きく貢献した勝川春章。

勝川派の代表的存在として活躍する勝川春章は、どのような人物だったのでしょうか。

今回は勝川春章の生涯をたどり、大河ドラマの予習をしたいと思います。

■勝川春章の生まれや名前

前野朋哉「大河べらぼう」で前野朋哉が演じる、当代一の浮世絵師...の画像はこちら >>


勝川春章「風流錦絵伊勢物語」

勝川春章は寛保3年(1743年)、葛西にいた医師の息子として生まれました(諸説あり)。

本名を藤原正輝(まさてる)、通称を要助(ようすけ)と言ったとか(これらも諸説あり)。

字を千尋(せんじん)と名乗り、安永3年(1774年)に春祐助(はるの ゆうすけ)と改名します。

浮世絵師としての画号は、以下を使い分けたそうです。

【画姓】
宮川→勝宮川→勝川・勝など

【画号】
春章・旭朗井・李林・六々庵・縦画生・酉爾など

当時の文化人は何かと号や字(あざな。中国の成人男性が用いた通称)を用いていますが、様々な心境の変化などがあったのでしょうか。

■勝川春章の画風

前野朋哉「大河べらぼう」で前野朋哉が演じる、当代一の浮世絵師・勝川春章とは何者?その生涯を予習!


勝川春章「東扇 初代中村仲蔵 斧定九郎」

絵の師匠は宮川春水(みやがわ しゅんすい)や高嵩谷(こう すうこく)、また向かいの家に住んでいた北尾重政(きたお しげまさ)からも親しく指導を受けたそうです。

また英一蝶(はなぶさ いっちょう)にも影響を受けました。


勝川春章は明和年間(1764~1772年)から亡くなるまで浮世絵師として活躍し、その特色は立役や敵役の男性美にあったと言います。

容貌を役者ごとに描き分けない鳥居派とは対照的に、写実的な似顔絵で人々の支持を得ました。

明快な色彩と誇張のない表現が人気を呼び、大首絵の先駆者として地位を確立したそうです。

■勝川春章の弟子たち

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勝川春章「婦女風俗十二ヶ月図 五月(蛍火)」

勝川春章は勝川春好(しゅんこう)や勝川春英(しゅんえい)をはじめ、多くの弟子を抱えていました。

  • 勝川春潮(しゅんちょう)
  • 勝川春林(しゅんりん)
  • 勝川春童(しゅんどう)
  • 勝川春常(しゅんじょう)
  • 勝川春泉(しゅんせん)
  • 勝川春暁(しゅんぎょう)
  • 勝川春朗(しゅんろう。のち葛飾北斎)
など、彼らは勝川派として隆盛を誇り、役者の似顔絵を得意としたそうです。

弟子たちが活躍する一方で、春章自身は版画から肉筆画に注力。緻密な美人画を手がけ、洒落本『後編風俗通』では「春章一幅価千金(しゅんしょうのいっぷく、せんきんにあたいす)」と賞賛されました。

■私生活と辞世の句

前野朋哉「大河べらぼう」で前野朋哉が演じる、当代一の浮世絵師・勝川春章とは何者?その生涯を予習!


勝川春章「雪月花図(部分)」

そんな勝川春章は人形町の地本問屋である林屋七右衛門(はやしや しちゑもん)の元に寄寓します。

画印に同店の壺判を用いたことから「壺屋」「壺春章」などとも呼ばれました。

また俳諧を嗜んだそうで、酉爾(ゆうじ。西示とも)のちに宣富(せんぷ、のぶとみ)という俳号で作品を残しています。


また孫に勝川春橋(しゅんきょう)がいるものの、絵を教えたかどうかは分かっていません。

そして寛政4年(1793年)12月4日または12月8日に世を去りました。

戒名は勝誉春章信士(しょうよしゅんしょうしんし)。辞世として以下の句が伝わっています。

枯ゆくや 今ぞいふこと よしあしも

【意訳】今まさに枯れよう(世を去ろう)としているが、死期は来るべくして来るものであり、良い(ヨシ・葦)も悪い(アシ・葦)もない。だから心安らかに逝こう。

善し悪しと葦(ヨシ、アシ)をかけ、死を枯れることにかけながら、潔く旅立つ姿勢を感じられますね。

■終わりに

今回は江戸時代を代表する浮世絵師の一人・勝川春章について、その生涯をたどってきました。

蔦屋重三郎とも関係の深い勝川春章の活躍が、ドラマではどのように描かれるのでしょうか。

前野朋哉の名演を、今から楽しみにしています!

※参考文献:

  • 小林忠 監修『別冊太陽 浮世絵師列伝』平凡社、2006年1月
  • 内藤正人『勝川春章と天明期の浮世絵美人画』東京大学出版会、2012年3月

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