駿河町の大通りをはさんで向かいあって江戸本店と江戸向店があり、江戸見物に訪れた人にとって絶好の観光スポットでもあった越後屋は、どんな所が魅力だったのでしょう?
ゑちご屋チラシ 歌川広重
■お店もお客もうれしい販売システム
当時の一般的な呉服屋は訪問販売が主で、いつでも売掛金があるようにするため一度で清算しないシステムでした。こうすることで、お客との関係が切れないようにしていたのですね。しかし、越後屋は「現金」「掛け値なし」の販売方式でした。入金までの利息分を価格に上乗せしないのでお客も嬉しいし、越後屋にとっても売掛金回収の手間が省かれて、どちらにとってもメリットがあるわけです。
当時、値札をつけていない呉服屋が多かったので、価格交渉は日常茶飯事でしたが、越後屋はすべて値札をつけており、値引きはしませんでした。あらゆる面で、画期的な販売方法だったといえるでしょう。
この販売方法のおかげで、仕事の効率化が進み、ライバル店よりも安く売っても、充分利益が出るという仕組みに。いい話は、自然と口コミで知れ渡るもの。大名や旗本も店頭で購入し、現金で決済するようになりました。

「浪花百景 三井呉服店 」歌川国員
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■様々なニーズに応える越後屋
越後屋の企業努力はまだまだあります。顧客に娘がいたら定期的に訪問販売して新柄の反物を届けるという顧客に応じての対応や、一反単位ではなく希望の長さに切り売りも、新しい販売手法でした。
「お客の様々な期待に応え、従来の方法にとらわれない」越後屋は、多くの人にとってなくてはならない場所になったのでしょう。そうか!「慣習にこだわらないからこそ、消費者の様々なニーズに応える」ことができたのかもしれませんね。
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