■歯ブラシの代わりに房楊枝?
まず、就寝は、ほぼ四ツ頃(午後10時頃)と割と早かったようです。寝る前にすることといえば、歯磨きですよね。
といっても、歯ブラシというものは、まだありません。その代わりに、房楊枝(ふさようじ)という、柳や竹などの木を細かく削り先端をたたいて房のようにしたものを使っていました。
そして、横向きにして柄で歯のざらつきをとったりと、房楊枝をフルに活用していました。この房楊枝は、専門の店で売られていて、若い美人の売り子が客の引き寄せに重宝されていたとか。歯磨き粉は、房州砂を原料としたものに薄荷(ハッカ)などの香料を加えたものが主で、なんと100種類以上もあったそう。
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■布団はとても貴重なものでした
いざ歯磨きを終えて、就寝となっても、当時は布団=敷布団でした。さらに敷布団の下には大きな風呂敷を敷いているので、朝さっと風呂敷でくるんで布団をしまえるし、万が一夜中に火事があっても、持ち出しやすいように、いろんなメリットがあったのです。
そして、いわゆる寝間着というものもなく、下着や肌着で寝ていました。布団は、当時とても高価なものだったから、そう簡単に買い替えることもできません。布団は、とても貴重なものだったのですね。
布団といえば、枕もマストアイテム。江戸時代初期は括り(くくり)枕が多く、これは長方形の袋の中に綿や蕎麦粉、茶殻を入れて円柱形の枕です。
このときの主な髪型は、結って垂らすだけだったので、この枕で充分でしたが、前後左右に大きく張り出た髷(まげ)が流行すると、木枕が流行するようになりました。この木枕というのは、丸い形や四角い形など、さまざままな形や高さのものがあり、寝ている間も髪が崩れません。
■箱枕で髪型をキープ!
さらに、江戸時代後期には、箱枕が流行しました。これは、木枕と括り枕が合体したもので、髪をキープすることもできつつ括り枕の柔らかい感触もありと、大人気。髪についている油で枕が汚れないように、枕の上にのせた紙を取り換えることができたのです。
江戸っ子たちは、その枕でどんな夢を見ていたのでしょうね。
参考文献:彩色江戸の暮らし事典 双葉社
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