そんな中、近ごろ気になったのが兜の鍬形(くわがた)。
兜の前立(まえたて)に差し込む形状になっているため、逆向きに差し込まれているパターンを多く見かけるようになり、何だか虫の触角みたいになってしまっています。
※逆向きに差し込まれた鍬形
もちろん鍬形の差し方に厳密な決まりがある訳でもなく、「これも個性だ」と言えば言えなくもないため、見かけてもごく親しい方以外に口出しするのも野暮と言うもの。
ただ、元のあり方を知っていて損をすることもないため、今回紹介しておきたいと思います。
■鍬形の向きはクワガタムシと同じ
鍬形は平安・鎌倉期より兜に装着され始め、獣の角のように自らの強さを誇示するパーツとして様々な発展を遂げていきます。
※一説には、アイヌや大陸の騎馬民族などから伝えられた文化とも言われています。
※鍬形の語源については、農具の鍬や火炎(くわ⇒か)の形、慈姑(クワイ。沢瀉の栽培品種)の葉に似ているから……などなど諸説ありますが、未だに定説はないようです。
そんな鍬形は、最初は兜と一体で作りつけられましたが、パーツが大きいと攻撃を受けた時に頭部や頸部のダメージも大きくなってしまうため、一定以上の力がかかると壊れるor外れるように改良されていきました。
ついでに、兜とセットで鎧に関する雑学はこちら。
具足、甲冑、胴丸など…みんな「鎧-よろい」なんだけど、それぞれの違いって何?

※クワガタムシの顎は、内側に反っている
ちなみに昆虫のクワガタムシは、特徴的な二本の顎(※角ではなく、アゴです)が兜の鍬形に似ていることから名づけられましたが、鍬形を差し込む向きで迷ったら、クワガタの顎を思い出すといいかも知れません。
■まとめ

かっこよくそそり立つ鍬形
いつの時代も強さとカッコよさが求められた戦場にあって、燦然と武人たちを彩り、その身を防護してきた兜の鍬形について紹介して来ました。
そんな中、現代人の感性で逆向きに差し込まれた鍬形もまた、新たな個性の追求として評価される時が来るかも知れませんね。
※参考文献:笹間良彦『図解日本甲冑事典』雄山閣出版、1996年2月
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