フェイスブックを運営する米SNS大手メタが、新しい投稿サービス「Threads」(スレッズ)」を始めることが明らかになり、衝撃が走っています。

英語や日本語など30以上の言語に対応する新サービスは、見た目も機能も「ツイッター」にそっくり。

果たして、2022年10月のイーロン・マスク氏の買収後、頻発する障害や閲覧制限などでユーザー離れが進む「ツイッター」の「alternative」(代替)となるのでしょうか。

「マストドン」や「ブルースカイ」などのライバルSNSが伸び悩むなか、英BBC放送は、ザッカーバーグ氏の「ある能力」に注目して「最大の脅威になる」と予測。ザッカーバーグ氏が王者「ツイッター」に仕掛けた戦いに、早くも関心が集まっています。

英BBC放送「ザッカーバーグ氏は、他社のアイデアを...」

米メタが、投稿サービス「スレッズ」を2023年7月6日から開始すると発表。イーロン・マスク氏の買収以来、トラブル続きの「ツイッター」を離れるユーザーが増える一方で、「受け皿」となる競合サービスの不在が指摘されていましたが、いよいよ本命ライバルが登場かと、世間を沸かせています。

「Twitter alternative」(ツイッターの代わり)を探し求めてきた「元ツイッター民」にとって、「スレッズ」は安住の地となるのでしょうか。

各国メディアもその点に注目しているようです。

Instagram owner to launch Twitter rival
(インスタグラムの経営者が、ツイッターのライバルとなるサービスを開始:英BBC放送)

Instagram's new Twitter rival 'Threads' appears to be showing up
(インスタグラムが提供するツイッターの新ライバル「スレッズ」、まもなくお目見え:米メディア)

どのメディアも、メタが新たに提供する「スレッズ」を、「ツイッターのライバル」として紹介しています。

これまでも、「マストドン」や「ブルースカイ」などのSNSサービスが「ツイッター」に幻滅した元ユーザーの「受け皿」になると期待されていましたが、「ツイッター」の利便性や規模に後れを取っていたのか、大きなうねりにはなっていませんでした。

どんなにトラブルが続いても、結局はツイッターに勝るサービスはないのか...。そんな「閉塞感」が漂うなかで、突如登場した「スレッズ」。圧倒的な資金力と約20億人に上るインスタグラムの基盤を背景に、早くも本命視する報道が相次いでいます。

英BBC放送は、「スレッズはツイッターの最大の脅威になる」と予測していますが、まだ「スレッズ」の全容が見えないうちに、どうして断言できるのでしょうか。その理由としてザッカーバーグ氏の「ある能力」をあげていて、思わず納得してしまいました。

Mark Zuckerberg has a history of borrowing other company's ideas - and making them work
(ザッカーバーグ氏は、他社のアイデアを借りてきた歴史があり、それらをうまく活用してきた)

BBCは、「フェイスブック」や「インスタグラム」は、動画アプリ「TikTok(ティックトック)」や「スナップチャット」の機能を一部、模倣していると指摘。他社の機能を上手く取り入れて活用してきた実績があることから、今回も「ツイッター」の良さを生かした新サービスが成功すると「予言」しているのでしょう。

もちろん、メタの卓越した企業力や、すでに数億のアカウントを持つ「インスタグラム」と連携できるといったメリットも利点としてあげていますが、ザッカーバーグ氏の「過去の実績」は、妙に説得力があります。

BBCはポッドキャストでも、「スレッズのリリースは最高のタイミング」と指摘する専門家の声を紹介していました。

2023年6月に起きたロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジンが引き起こした「プレゴジンの乱」では、これまで「アラブの春」などの混乱時に現地の情報を知るツールとして存在感を示してきた「ツイッター」が、あまり活用されなかったというのです。

「プレゴジンの乱」で「ツイッターの凋落」が浮き彫りになるなかでのリリース。ザッカーバーグ氏は、「ツイッター」に幻滅した利用者の相当数を取り込めると踏んでいるのでしょう。ザッカーバーグ氏VSマスク氏。二人の大富豪が仕掛ける戦いは、世界中で数億人規模の人々を巻き込むことになりそうです。

英紙ガーディアン、ツイッターの「元広報アドレス」から届いた「poop emoji」に苦笑

満を持しての「スレッズ」の登場に、警笛を鳴らす声もあります。

「スレッズ」の個人情報ポリシーが、ユーザーが利用を躊躇する要因になると指摘するのは、「ツイッター」共同創設者で、現在はSNSサービス「ブルースカイ」を運営するジャック・ドーシー氏。英紙ガーディアンは、同氏のコメントを紹介しています。

Jack Dorsey tweeted a screenshot of Threads' app privacy information, along with the caption "All your Threads are belong to us"
(ジャック・ドーシー氏は、「すべてのスレッズは我々のものだ」という注記をつけて、「スレッズ」のプライバシーポリシー画面を投稿した)

ガーディアン紙は、「スレッズ」のアプリは、ユーザーの健康情報や金融情報、通話やメール、ネット閲覧の履歴、位置情報や買い物購入履歴といったすべての情報を集めることができると警告。

実際、「スレッズ」のプライバシーポリシーについては、BBCもスマホの情報を「hoover up」(掃除機のように吸い上げる)と表現しているほどですから、便利さと引き換えに手渡す情報も多いようです。

ちなみに、ガーディアン紙が今回の「スレッズ騒動」についてツイッター社の「広報」に問い合わせメールを送ったところ、自動応答で返ってきたのはなんと、「poop emoji」(う〇この絵文字)だったとか!

ツイッター社が広報を廃止しているため、以前のアドレスに問い合わせた結果だそうですが、世間を揺るがす「スレッズ騒動」の報道を「poop emoji」情報で締めくくるとは、いかにも英国メディアらしい皮肉です。

一方、「スレッズ」の可能性については、米ニューヨークタイムズ紙も「スレッズはツイッターの刺客になり得る」という専門家の見解を紹介していました。

ライバルと比較して一歩リードしている背景に、マスク氏の買収後、メタ社がツイッター社を去ったエンジニアやプロダクトマネジャーらの「受け皿」になっていたと明かしています。

かつてツイッターの買収も視野に入れていたとされるザッカーバーグ氏にとって、「スレッズ」のリリースは満を持しての勝負だったようです。

それでは、「今週のニュースな英語」は、「belong to」(~に属する)を使った表現を取り上げます。

I belong to general affair
(私は総務に所属しています)

She said it belonged to her
(彼女は、それは自分のものだと言っていた)

Russia claims Baltic countries belong to us
(ロシアは、バルト三国は我々に属していると主張している)

今回の「スレッズ騒動」で実感したのは、「Twitter alternative」(ツイッターの代わり)を求めるニーズです。マスク氏買収以前の「旧ツイッター」を懐かしむ声の大きさに、「ツイッター」が人々の生活に深く根付いていたことが伝わってきました。

ただ残念ながら、自動応答システムで「poop emoji」を返信する会社に、ユーザーの声はもう届いていないのかも?(井津川倫子)