物価高が家計を直撃する中、小売り各社のプライベートブランド(PB)を巡る動きが活発化している。

大手食品メーカーなどが製造し「メーカー品」と呼ばれるナショナルブランド(NB)に比べ、PBは値ごろ感が強く、消費者からの人気が高まっているのだ。

各社はそれぞれPB戦略を強化し、収益の柱にしようとしている。

好調なイオン「トップバリュ」、24年2月期に1兆円超えの見込み...新商品開発で「独自の価値を追求」

PBとは、小売店などが自社で開発、企画、販売などを行う商品だ。製造はメーカーなどに委ねることが多いが、小売店自身が企画など多くの業務を担う。

このため、NBを販売する場合に比べて仕入れコストが安く、比較的安価で消費者に提供できるのが特色だ。

小売り各社のうち、イオンの動きは特に目立っている。イオンのPBの中核である「トップバリュ」は、値上げラッシュが続く中、好調な売り上げを見せている。

2023年2月期のトップバリュの売上高は前期より約1割増えて約9000億円になり、24年2月期には1兆円超えも見込まれるほどだ。

こうした中、イオンは今春、トップバリュの再構築を図り、NBと同じものを単に安く売るのではなく、「独自の価値を追求するブランド」を目指す方針を掲げた。

このため、新商品の開発に力を入れており、卵黄だけでなく白身も使った全卵タイプのマヨネーズを売り出すなど、独自色を打ち出そうとしている。

その一方で、23年9月からは客の要望が多かったというトップバリュ31品目の値下げに踏み切るなど、臨機応変の対応をしている。11月からは期間限定ながら、一部商品を増量するなど、トップバリュを盛り上げる取り組みが相次いでいる。

セブン&アイは低価格「セブン・ザ・プライス」を強化、西友は新PB「食の幸」開始、「ファミマル」はプレミアム商品追加

セブン&アイ・ホールディングスは、傘下のイトーヨーカ堂のPB「セブン・ザ・プライス」を強化している。

セブン・ザ・プライスはセブン&アイグループのPB「セブンプレミアム」のラインで、低価格を追求したブランドとして2022年秋から販売している。

パッケージのデザインの色の数を減らすなどしてコストを削減したといい、食パンは105円、焼きそばは5食入りで192円と、NBよりかなりお得感があり、買い物客に人気だ。

西友は23年4月、野菜や肉、魚など生鮮食品の新しいPB「食の幸」の販売を開始した。生鮮食品の商品力を強化する一環の取り組みだといい、「こだわりの味と品質をお求めやすい価格で提供したい」としている。

ファミリーマートは21年秋に発売したPB[ファミマル」が好調で、売り上げは発売以来、前年比を上回り続けているという。23年10月からは、素材と製法に特にこだわったファミマルのプレミアムライン「ファミマルPREMIUM」の商品14品を新たに加えた。

「真鯛の煮付け」(468円)、「極じゅわハンバーグ」(450円)などがあり、厳しい家計の中でもちょっとしたぜいたくを味わってほしい、と呼びかけている。(ジャーナリスト 済田経夫)