「撮影中の岡江久美子さんは、エネルギッシュで元気そのものでした。お弁当もおいしそうに食べていてね。

出番を終えると『お疲れ様でした。また明日ね。今日は友達とご飯に行くんだ~』なんて言って、帰っていく……、そんな姿が強く印象に残っています。だから亡くなったことがあまりに唐突でいまだに信じられないんです」

そうしみじみと話すのは、俳優・村上弘明(63)だ。

岡江久美子さん(享年63)が新型コロナウイルス感染による肺炎のために4月に逝去してから、もうすぐ2カ月になる。女優、そしてタレントとして多くの作品で活躍した岡江さんだが、実はまだ“公開されていない”映画がある。それが『車線変更―キューポラを見上げて』(赤羽博監督)だ。

「川口市のオートレース場や鋳物工場などが舞台で、岡江さんは障害を負ったオートレーサーの母親役を演じています。この作品は、もともと今年の春頃に公開の予定でしたが、新型コロナ感染拡大のために上映できず、いまも公開日が決まっていない状況です」(映画制作関係者)

撮影は昨年1~2月に行われた。1月に行われた製作発表記者会見で、岡江さんは主演で息子役の平田雄也(26)を「おしゃべりがうまくて躍動感がある。今回の映画の主役で良かった」などと、絶賛していた。

この遺作映画で夫婦役を演じた村上は岡江さんとは同い年で、もともとは夫・大和田獏(69)とはかつてドラマで共演したこともあり旧知の仲だという。

「獏さんとは30年前に共演した連続ドラマ『月影兵庫あばれ旅』でご一緒になり、よく食事に行っていたんです。岡江さんが出ていたNHK銀河小説『友情』(’77年)を見ていたので、獏さんに『友情の岡江さん、きれいでしたよね』と言うと、照れながら『ありがとう』なんて言って夫婦の仲の良さがうかがえるようでした。

そういえば3年前に僕が京都で行きつけのイタリア料理店のパーティーで、獏さん夫婦、そして娘さん(大和田美帆・36)も一緒になったことがありました。そこで岡江さんは次々と出てくるワインと料理をただひたすら飲んで食べるその健啖家ぶりには驚かされました」

岡江さんが司会を務めていた情報番組『はなまるマーケット』(TBS系)では、ゲストがオススメの“おめざ”を紹介するコーナーがあった。村上がゲスト出演したときに紹介したイタリア発祥のケーキ『ズコット』は、その年の人気ランキング1位を獲得した。

「岡江さんとは映画撮影の待ち時間は、ほとんど仕事の話はしませんでした。だいたいは食べ物、そしてお酒の話ですね(笑)。

獏さんの話? そうそう、『月影』のときの獏さんとの思い出話をしたら、笑いながら『そんなことやってたの? ホントしょうがないわねえ』なんて笑ってました。お互いの好きな映画や音楽、小説など、とにかく話が尽きなくて、楽しかったですね」

撮影終了後は、「今度お互い夫婦で食事に行きましょう」と、村上から誘っていたという。しかし、コロナ禍もあったため計画は延び延びになり、岡江さんの訃報を聞くことになってしまった。

「私の妻がネットの速報を見て、岡江さんが亡くなったことを教えてくれたのです。私もすぐにテレビで見て茫然としました。

信じられませんでしたね……。

獏さんには後日、お悔やみのメールを送りました。その後まもなくして、《ありがとうございます。頑張ります》という返信をいただきましたが、取材の対応などで忙しい最中だったかと思います。

実は僕がお連れしようとしていたのが『はなまる』で披露したズコットのあるイタリアンレストランだったんです。

隠れ家的な名店なので、ぜひ、あのズコットを食べて欲しかった。『岡江さん、年間1位に輝いたスイーツはこれだったんだよ』って言いたかったですね」

最後に村上は公開未定の映画『車線変更』についてこう語った。

「この映画が早く世に出ることを願っています。私の妻役を悠々と熱演してくれた岡江さんもそう願ってくれていると思います。あらためて岡江久美子さんのご冥福をお祈りしたいと思います」

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