女子プロレスラーの木村花さん(享年22)が亡くなったことで、ネット中傷が社会問題となった’20年。しかし、いまだSNS上での誹謗中傷が収まりを見せることはない。

そんななかでも、故人の元パートナーに対する誹謗中傷が目立った。

たとえば今年9月、竹内結子さん(享年40)が亡くなったときのこと。訃報の前日、前夫である中村獅童(48)がInstagramに我が子の写真をアップしていた。すると、コメント欄にはこんな声がつづられたのだ。

《一人の女性、一人の子供を不幸にしておきながら、自分がいかに幸せかアピール》
《竹内さんは、自分のお子さんの笑顔を、もう見れないし、撮れない。中林さんはインスタに載せる余裕もない。他人の子の人生を考えている。獅童さんご夫婦身勝手だと思う》

また’18年に三浦春馬さん(享年30)との熱愛が報じられた三吉彩花(24)にも、同様のケースが発生していた。

今年5月には竹内涼真(27)との“半同棲”が報じられた三吉。すると三浦さんの訃報が伝えられた際、彼女のInstagramに「あなたが三浦さんを傷つけた」といった内容のコメントが書き込まれたのだ。その後、三吉はコメント欄を閉じる事態に発展した。

死の真相がわからないにもかかわらず、元パートナーのせいだと言わんばかりに攻撃する人たち。

彼らはなぜ、ネット中傷に走るのだろうか。

「元パートナーを中傷する人たちには、2種類のタイプがいます。ストレス発散型とダーティーハリー―症候群タイプです」

こう語るのは心理学を専門とし、「トップ2%の天才が使っている『人を操る』最強の心理術」(河出書房新社)の著書でもある山本マサヤ氏(Twitter:@3m_masaya/Instagram:@masaya_mentalist)だ。

「ストレス発散型は、著名人の亡くなった悲しみがやがて怒りに変化して起こるものです。怒りを一人で溜め込むことは難しいため、中傷で発散することになります。とはいえ、職場や家庭で溜まったストレスを発散しているだけの人もいるでしょう。

ダーティーハリー症候群は『犯人をこらしめたい』と正義を追求するがあまり、時として暴走してしまう精神状態を指します。『自分は正しいことをしている』と思うとドーパミンが分泌されて快感となり、行動が過激になっていきます。正義に依存するのは『正しいと認めてほしい』という承認欲求もあるでしょう」

しかし、なぜ中傷の標的が元パートナーになるのだろうか。山本氏は「錯誤相関が起きてしまうのでは」と推測する。

「錯誤相関とは無関係な事柄を結び付け、関係があると思い込むことを指します。竹内さんや三浦さんがこの世を去った理由を探すとき、因果関係に確証はないのに前後関係から『亡くなったのは元パートナーのせいだ』と錯覚するのです。

ネガティブな記憶は印象に残りやすいため、すでに終わった関係に結び付けるのではないでしょうか」

また中傷をするひとは、元パートナーたちに“期待”をしていることもあるという。

「彼らのなかには、『悲しんでいるならこういう行動をすべき』と元パートナーに期待している人もいます。期待通りに沿ってくれなかった場合、怒りが生まれて中傷に走ります。

『なぜ訃報にコメントを出さないんだ。亡くなった人が悲しむのでは?』などと中傷する人たちも見受けられます。これは、故人の気持ちに忖度している状態といえるでしょう。故人がどう考えるのかは、誰にもわからないのですが……」

山本氏は「SNSで発散することにより、ストレスが軽減されるという研究報告もあります」と話し、「いっぽう、その投稿を見た人にストレスが溜まるとも。SNSは、感情のはけ口として適切ではありません」と続ける。

しかし、ネット中傷をする可能性は誰にでもあるかもしれない。例えば家族や友人など、親しい人たちが手を出さないよう防ぐにはどうすればいいのだろうか?

「普段から話に耳を傾けてあげてください。そのなかで『竹内さんが亡くなった理由は中村さんにあると思う』と言われて賛同できないのなら、『そういうふうに考えているんだね』と受け流して大丈夫です。わざわざ『そうだね!』という必要はありません。

聞き手側がむしろ自分の気持ちに嘘をつくことになり、ストレスが溜まって『やっぱり、私はそう思わない!』と暴発する可能性もありますから。

いちばん大事なことは、『相手の考えを否定しない』ということです。否定されると、より感情的になってしまいます。ネットで発散しないよう、普段のコミュニケーションを大切にすることが重要です」

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