今年もM1グランプリが開催され、マヂカルラブリーのおふたりが激戦を制してチャンピオンに輝きました。このコラムでは、そんなM-1グランプリについての話をしようと思います。
「回文界」
でのM-1の話です。
前から読んでも後ろから読んでも同じになる、言葉の神様のいたずらによって引き起こされる奇跡の文章。そんな「回文」がそこらじゅうにあふれる夢のような世界、それこそが「回文界」です。
回文界でもこちらの世界と同じようにM-1が開催され、やはりマヂカルラブリー、通称「マヂラブ」のおふたりが栄冠を手にしました。でも、現実世界のマヂカルラブリーと回文界のマヂカルラブリーには、決定的な違いがあったのです。
■ブラ自慢、マヂラブ
【ぶらじまんまじらぶ】そうなんです。回文界のマヂラブのおふたりの芸風は、とにかくブラジャーの自慢なんです。そしてさらに、
■ブラ自前、マヂラブ
【ぶらじまえまじらぶ】ちゃんと自腹で購入されているんですね。M-1優勝賞金の使い道として「ランジェリークの、ノンワイヤーの高級ブラジャーが、買いたいよ!」と喜んでいたそうです。
回文界のM-1グランプリ、ほかの出場コンビはどういう様子だったのでしょうか?
■痛み、勝つ!見取り図、バズり、富つかみたい
【いたみかつみとりずばずりとみつかみたい】見取り図のおふたり、回文界でもやはり3年連続の決勝進出を果たしていました。現実世界でもYoutubeチャンネルを積極的に活用していますが、回文界の見取り図ご両人は、「痛い」系の動画を痛みをこらえながら毎回アップして、ネット界で一攫千金を狙っているようです。
■錦鯉、最後、騎士に
【にしきごいさいごきしに】錦鯉のおふたりも決勝に駒を進めておりました。回文界のM-1では、最後、よろいに身をつつみ白馬に乗って登場、という大がかりなオチを繰り広げたそうです。
■「Dollar was over」オズワルド
【どるわずおーばーおずわるど】オズワルドのおふたりも、回文界でも2年連続決勝に進出していました。「もうドルの時代は終わった」と言い放ち、テンションを上げずに淡々とドル札を大量にばらまくという、なんともかっこいいネタを披露したとか。
さてここで。
回文界の過去のM-1はどんな様子だったのでしょうか。たとえば一昨年。2018年に優勝して以降、お笑い第7世代を引っ張り続けている霜降り明星。
■悲しそう…「やい!せいや!」「う、粗品か…」
【かなしそうやいせいやうそしなか】現実世界ではノリにノッているおふたり。回文界ではなぜだか暗いですね。コンビ間の掛け合いの息も合っていなくて、なんだかギクシャクしたやりとり……。
さあ、もっともっと時代をさかのぼってみましょう。
■「なんでだろう♪」「道路だ!出んな!」
【なんでだろうどうろだでんな】2002年、第2回目大会。いつもどおりのギター漫談で決勝進出し、異彩を放ったテツandトモのおふたり。回文界でも「なんでだろう」ネタは健在ですが、ところかまわず披露してしまっているようですね。危うく交通事故になるところでした。
■伊達のしけた技見とる、富澤たけしの手だ
【だてのしけたわざみとるとみざわたけしのてだ】2007年、M-1史上初の敗者復活戦からの優勝を果たしたサンドウィッチマンのおふたり。回文界では、伊達さんの変な動きを富澤さんが傍観する、ちょっと違ったスタイルのネタを披露している様子です。まさに「ちょっと何やってるのかわかんないです」……。
■ナイツか…イカついな
【ないつかいかついな】M-1グランプリで優勝はしていないのに、その卓越したお笑い論で、ボケの塙さんが大会審査員まで務めているナイツ。現実世界ではそんな印象はないですが、回文界ではだいぶガチムチみたいですね。あっちだと頭脳よりも筋肉重視なの?
■出汁、におってる哲夫・西田
【だしにおつてるてつおにしだ】決勝最多出場回数を誇り、2010年にみごと優勝を果たしている「ミスターM-1グランプリ」こと笑い飯のおふたり。回文界では食レポの仕事が多いんですかね?
そんなこんなで、M-1グランプリの話をさせていただきました。あくまで「回文界」でのことなので、現実世界での各コンビのみなさまとの関連性はいっさいありません。
来年、2021年のM-1グランプリでは、どんな漫才スターが誕生するのか。そして、それによって回文界のM-1グランプリにはどんな現象が巻き起こるのか。もう今から楽しみで仕方ない!
お~わり! わ~お!
【PROFILE】
文・イラスト:手賀沼ジュン
1979年、ネパール生まれの帰国子女(千葉県柏市育ち)。早稲田大学第一文学部卒業。サンミュージックプロダクション所属。お笑い芸人兼シンガーソングライターとして活動中。趣味で作り続けている回文を武器に「歌ネタ王決定戦2014」で優勝を果たす。著書に『回文さがし~たんぱつパンダの冒険~』(光文社)