eスポーツ市場が拡大し、賞金右肩上がりのゲーム業界に彗星のごとく現れたプロゲーマー・ふぇぐ。なぜ勝てた? 賞金の使い道は? 天才を生む教育とは? 24歳で億万長者となった男子のリアルに迫る。
なりたい職業の上位に「プロゲーマー」がランクインするようになって、まだ3年足らず。弱冠24歳にして賞金1億円を獲得したプロゲーマー・ふぇぐは、小中学生の憧れの存在だ。大人より子供たちのほうが認知している、世間的には“新キャラ”の彼だが、そもそもゲームのプロって? 勝てないと無収入? その実態を明らかにするべくインタビューを行った。
■どうやったらプロゲーマーになれるのか
「僕は2018年からプロゲーマーとして活動しています。プロの公募があったので、履歴書を送って面接を受けました。2017年の世界大会で負けて悔しくて、本気になったところでタイミングよく公募があったんです。2~3年前は大人が盛り上げているだけだと思っていたんですが、大会賞金も高額になり、一般的にも認知されつつありますね」
彼はプロのシャドウバースチーム「NTT-WESTリバレント」に所属し、「RAGEシャドウバース・プロ・リーグ」に参戦するのがおもなスケジュール。シャドウバースとはカードゲームのジャンルで、オンライン対戦し、相手の出方を先の先までシミュレーションして手札を出していく。頭脳戦というと聞こえはいいが、若者がゲームに没頭している姿は「ただ遊んでいるだけ」ととらえられがちだ……。
「シャドウバースをやり始めたのは先輩からすすめられたのがきっかけでしたが、ハマったのは現実逃避したい時期だったから(笑)。本気でやりたいから大学を休学したい、と両親に伝えたら、『ゲームで稼いでいけるのか!』って、父からはものすごく叱られましたね。初めて殴られました。
所属チームからは月給30万円が最低でも支給され、「生活を守るための金額を出してもらえているので、食べてはいけます」とリアルな金額も教えてくれた。
「でも、母からは『サスティナブルな仕事ではない』と言われていて。この職業の認知度拡大のためにも、YouTubeチャンネルを開設して動画配信も工夫していきたいですね」
ふぇぐいわく、プロゲーマーが稼ぐ方法はおもに2つ。賞金を稼ぐか、ゲームをしているところをYouTubeなどで配信してアクセス数による広告料で稼ぐか。
「僕がやっているシャドウバースは賞金額の大きな大会が多いので、やはり勝つことが重要だと思っています」
■気になる賞金1億円の使い道は
2018年に獲得した賞金約1億1千万円の使い道については、「ほぼ手をつけていません」と堅実な答え。「父が不動産の仕事をしているので、マンションを買う時期は相談しています。実際には漫画を大人買いしたのと、服を買ったくらい。物欲がまったくないので、買い物をしようと思っても困っちゃうんです(笑)」
■無双のプロになるためにはーー負けず嫌いの資質
プロゲーマーに憧れる小中学生にとって、ゲームをする以外にどんなことをしたら上達するかは知りたいところだろう。そもそも理系? 文系? 勉強するジャンルもゲームの上達に関わってくるのだろうか。
「シャドウバースをやっている人は理系が多いですかね。僕は明治大学経営学部なので文系ですが、子供のころから算数は得意でした。アクションゲームは苦手でしたが、オセロとか、考える系のゲームは小学校のクラスで無双していた気がします」
負けなし、右に出るものなしの「無双」。
「勝つために何をすればいい、それがどこにも書いてないんですよ。自分で見つけなきゃいけなくて。ただ、基本ができていないと応用にたどり着けないので、僕は世界大会の前にはひたすら数をこなしていましたね。とにかく負けず嫌いなので、負けて悔しい思いをしたくないからやっている感じです。センス自体はそんなにないと感じているので、とにかく練習量だ! と思って。1日15時間くらい対戦していますが、まったく苦じゃないです」
■「無双」を育てた母の教育方法とは
子供が引きこもりともいえるゲーマーになったら、親としては心配でたまらない。今や有名プロゲーマーとなったふぇぐだが、どんな子供だったのか? エピソードとともに、教育方針について母親にも話をうかがった。
「小学5年生のころ、カードゲームの大会に連れていけと言われて同行したとき、『この子は強いのかも』と思いました。“ほめて伸ばす”が教育方針だったからか、自己肯定感の強い人間になったと思います。自分で道を切り開くイメージで、たくましく育ってほしいと思っていました。
■プロにならずともゲームが役に立つことも
ふぇぐが続ける。「子供がゲームばかりやっていたら、親御さんは心配になるかもしれませんが、カードゲームをやっていると算数が強くなります。子供の好きなゲームのジャンルは、得意ジャンルでもあると思うので、そういう視点で見てあげてもいいかもしれません」
ちなみに、ふぇぐの好きなプロゲーマーは、「君らがプロゲーマーを目指すなら大学に行け、学業はしっかりしろ、そこから自分の選択をするんだ!」と話しているという。子供がゲームをやりすぎていたら、この言葉を借りるのもよさそうだ。
プロになるとSNSでバッシングされることも当然あり、メンタルが強くないと一線で活躍するのは難しい。少々お気楽なイメージを抱きがちなゲームの世界だが、堅実に鍛錬できる人間だけがトップになれる。頭脳戦でしのぎを削るアスリートたちの今後に注目だ。
【PROFILE】
ふぇぐ
26歳。プロゲーマー。NTT-WESTリバレント所属。2018年「Shadowverse World Grand Prix 2018」で優勝し、賞金1億円超を獲得。
(取材協力:RAGE Shadowverse/Cygames)