「今回の新しい経済対策は、新型コロナ対策に万全を期し、コロナ禍で厳しい影響を受けた方々に寄り添って万全の支援を行うとともに、成長戦略と分配戦略により、新しい資本主義を起動していくものです」

11月19日、第14回経済財政諮問会議でこう述べたのは岸田文雄首相(64)。岸田政権が発足して1カ月あまりが経ち、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が打ち出された。

しかし“新しい資本主義”を目指すための「成長・分配戦略」に、“的外れ”と国民の間で批判が相次いでいる。なかでも懐疑的な声が上がっているのが、マイナンバーカード保有者を対象に最大2万円分のポイントを付与するマイナポイント事業。これは成長戦略の一環として策定され、「DXの推進」を目的とされている。

この最大2万円分のマイナポイントは、次の3段階に分けて付与される。

1.マイナンバーカードの新規取得者に最大5,000円相当のポイント(既にカード取得者のうち、現行マイナポイントの未申込者を含む)
2.健康保険証としての利用登録者に7,500円相当のポイント
3.公金受取口座の登録者に7,500円相当のポイント

さらに1.に関しては、ある条件をクリアする必要がある。

「この“最大5,000円相当のポイント”は、自動的には付与されません。カード保有者が特定のキャッシュレス決済サービスをマイナンバーカードに登録し、その決済サービスの利用額もしくはチャージ額の25%分がポイントとして付与される仕組みです。つまり上限分のポイントを得るには、決済サービスで2万円相当の利用もしくはチャージをする必要があるのです」(全国紙記者)

■マイナポイント事業予算は、介護士ら収入引上げの7倍

このような段階付与かつ煩雑な手続きで、全国民にマイナンバーカードは浸透するだろうか。総務省の公式サイトによれば、カード交付枚数は全国で49,552,693枚(11月1日時点)。全人口1億2600万人以上に対して、40%にも満たない状況だ。

そんななか財務省は26日、21年度の補正予算を発表。分配戦略の「看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の収入の引上げ」は2,600億円に留まった一方で、マイナポイント事業には1兆8,134億円もの費用を計上したのだ。

収入引き上げの約7倍もの税金を投入するほど、マイナポイント事業は重要事項なのか。

「マイナポイント事業の予算は、総務省が全人口の約75%にあたる9,500万人が申請すると見込んで積算したといいます。そもそも今回の事業を主導したのは公明党。衆院選での公約は3万円分のポイントを謳っていましたが、蓋を開けてみれば2万円分に減額されました。

またスマホやパソコンを使ったカード申請、ポイント付与の登録は高齢者にとってハードルが高い。さらに申し込んだカードは、自ら市区町村窓口に取りに行かなければなりません。仕事の都合上、そのためだけに休めないという人もいるでしょう。政府は“馬の鼻先に人参”のようなやり方で国民にカードを作らせようとしていますが、本当に1兆8,000億円もの費用対効果が見込めるのか訝しむ声が上がっています」(前出・全国紙記者)

10日に開催された「全世代型社会保障構築会議」の初会合では、看護師や介護士らの給料増額を最優先課題として「前倒しで引き上げを実施致します」と語っていた岸田首相。だが、マイナポイント事業との予算配分の不均衡さに対して批判の声が上がっている。

《口座や保険証の情報も登録して最大2万だろ 情報漏洩した時のリスク考えたら2万じゃ安すぎるよな》
《必要な人に給付金が届かないなか、マイナンバーカード普及に1兆8,000億円も税金を使うとは…》
《口ではどんなに素敵なことを言ってても、予算案をみれば何を大切にし、何を軽んじるかがわかる》
《マジに桁違いの配分間違いだと思う》

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