元気でいられる期間を少しでも長く延ばしたい。そんな当たり前の願いの助けとなる研究結果を今年9月に米国の大学が発表した。
「日ごろから口にする食事や食材が、実際にどれほどの健康寿命に影響を与えるのか--。その疑問に答えたのが、’21年8月、アメリカの名門・ミシガン大学の研究者たちが『ネイチャーフード』に掲載した論文です。ここでは約5,800品目を対象に、1食あたり健康寿命がどのくらいプラスまたはマイナスになるのか、分単位で記載されています」
こう語るのは、ハーバード大学の元研究員で、ボストン在住の内科医・大西睦子さんだ。
日常生活を制限されることなく、健康に生活できる期間である「健康寿命」。厚労省によると、’16年の健康寿命は女性で74.79、男性で72.14となっている。
この論文は、世界の研究者7,000人の協力で開発されたデータベースから、1回の食事が健康寿命に与える影響を導き出している。
「非常に複雑な計算がされており、かなり具体的な数値が出ています。たとえば加工肉1グラムで、健康寿命が0.45分(27秒)失われると計算。ホットドッグに含まれる加工肉が61グラムだとすると、27分が失われる。高血圧の原因になる塩分、心臓病の原因になるトランス脂肪酸など、ほかのリスク要因をあわせ、ホットドッグ1個で、健康寿命が36分失われるのです」
こうして算出された食材・食品から、日本人になじみの深いものを抜粋して一覧表にまとめた(画像参照)。
■ナッツを食べると25分もプラスに
「まず、使い勝手のいいポークソーセージ(マイナス22.15分)や豚肉のベーコン(マイナス6.44分)など加工肉は、健康寿命を縮める代表格という結果。
赤身のビーフステーキは7分、牛ハンバーグは7.79分も健康寿命を縮めるという結果だが。
「健康寿命を延ばす生トマト(プラス3.82分)、きゅうり(プラス3.78分)などの野菜を付け合わせたり、デザートにりんご(プラス13.46分)を食べたりするなど、マイナス分を“帳消し”にしてはいかがでしょうか」
野菜や果物同様に、好成績だったのは豆類(プラス10.42分)やナッツ。大豆には善玉菌の栄養ともなるオリゴ糖、抗酸化作用を促す成分も含まれている。
「塩味のピーナツ(プラス25.5分)、ピスタチオ(プラス25.28分)などナッツは食物繊維、タンパク質、ミネラルなどが豊富です。スペインの調査では、1週間に28グラム食べると、心疾患による死亡リスクが55%、がんのリスクが40%も減少したという結果も。ピーナツバターは、23.91分も健康寿命を延ばすという結果が出ていますが、アメリカのピーナツバターは甘くないため、日本の商品とは別と考えるべきでしょう」
一方、日本人の典型的な朝食にも目を向けると--。
「白米だけ(マイナス2.15分)よりも、納豆ご飯(プラス13.79分)が、ぐっと健康的です。動脈硬化を抑制するオメガ3が含まれた焼きザケ(プラス15.98分)を合わせれば最強ですね」
意外なところではゆで卵が1.24分、卵焼きが0.86分、健康寿命を縮めることだ。
「マイナスポイントはわずかですし、卵は完全栄養食で優れているので、避ける必要はないでしょう。ほかのプラス食材で補いましょう」
また同論文では、水の必要量、廃棄物などの観点から、地球環境への影響も調査している。
「牛肉や加工肉の代わりに、果物、野菜、ナッツ、豆、魚介類を10%摂取することで、毎日48分も健康寿命を延ばし、二酸化炭素の排出量を33%も削減できると結論づけています」
野菜を中心としたバランスのよい食事は、健康にも地球にもやさしいのだ。