日本中に感動を呼び起こした北京五輪・カーリング女子の銀メダル。なかでもリザーブの石崎琴美選手は43歳でのメダル獲得となり、スキージャンプの“レジェンド”葛西紀明がソチ大会で獲得した41歳での銀メダル(個人ラージヒル)、銅メダル(団体)を越え、冬季五輪での日本選手の最年長メダリストとなった。

石崎は受賞後、インタビューに

「いや~、塗り替えちゃいましたね。みんなのおかげで塗り替えられたんですよ。結構、抜かれないんじゃないかと思ってます。ミドルネームに“レジェンド”って入れようかと。みんなには感謝してます」

照れ笑いしながら、そう冗談交じりに話していた。スポーツライターは言う。

「石崎選手は以前、河西建設女子、チーム青森で、現ゼネラルマネージャーの本橋麻里さん(35)とチームメイトだった時期があります。15年と18年には戦列を離れていた本橋さんの助っ人としてロコに加わったこともありますが、中継の解説者を務めるなど、現役から一時離れていました。

今回のチームには2020年、他の4人のメンバーから何度も請われて“三顧の礼”でメンバー入りした経緯があります。受賞後のインタビューでも『4年前は取材している立場だった。それが4年後、表彰台に。ずっと五輪は夢見てきたんですけれど、カーリング人生、こんなことあるんだなと…』と感慨深げに語っていました」

今回の銀メダル獲得の大きな要因はまさに、石崎選手の分析力にあったと前出のスポーツライターは続ける。

「どうしてもスキップの藤沢五月選手に焦点があたりがちですが、石崎選手はメンバーの精神的な支柱となっていました。リザーブは“控え”というわけでは決してなく、重要な役割の1つに『ナイトプラクティス』があります。これは、試合前夜、会場でストーンを投げて氷との相性を10分ほどでチェックするもの。短時間で氷とストーンの状況を把握し、翌日の試合の戦略に生かすのです。『チーム入りしてから自分なりに、最良のパフォーマンスがその10分間でできるだろうかというのは考えてきた』と語っていたこともあります。最も状態のいいストーンを最終投で使うことがよくあるため、チームの勝敗を決することもあるのです」

■ロコ・ソラーレの長所とは…石崎選手、北京五輪半年前の“予言”

彼女の分析力が如実に表れているのは、試合前の“予言”インタビューでも明らかになっていた。昨年8月29日、所属する松田整形外科記念病院のHP上のインタビューでロコ・ソラーレの長所について、石崎選手はこう断言している。

《ロコ・ソラーレの特徴としては、“曲がるアイス”に強いんです。世界基準のアイスは、屋内アリーナで2週間程度かけて熟練のアイスメーカーが作るんです。するとストーンの変化量の多い“曲がる”アイスができるんです。でも国内では曲がりづらいんです。すると、ショットや作戦の幅が少なくなり、勝ち着ることが難しくなるんです。

(略)だから今回も、曲がるアイスかそうじゃないかが、ひとつのポイントです。もちろん練習はしてきているのでアイスに合わせていきたいと思います》

前出のスポーツライターは言う。

「転機となった中国戦で、その“曲がるアイス”を最大限生かしていました。中国は予選落ちはしましたが、スウェーデン、カナダ、韓国を破っています。スウェーデンは銅メダルを獲りましたし、カナダ、韓国は中国戦の敗退が結果的に予選落ちとなったわけですから、運命の試合となったわけです」

さらに石崎選手は、ロコ・ソラーレのもう一つの長所を分析している。

《聞き手:曲がるアイスに強いってことは、世界にも通用するってことですよね。先攻後攻を決めるLSD(ラストストーンドロー より中心に近い方が勝ち)も強いってことですよね?》

《石崎:はい、強いです。道銀クラシックでも、全チームでナンバーワンでした。アイスを読むのは早いチームです。ということは他のチームの調整具合も判断できるということなんです。またこのショットの平均値が小さいほど(中心にストーンがどれだけ寄るかの距離が小さいほど)たとえば、勝敗が同じだった場合、順位が上になったりもします》

「まさにこのLSDの9.44cmの差で、カナダを上回り予選通過ができたのです。石崎選手のこうした見事な分析力が、他の4人の若いメンバーに絶対的な安心感を与えていたのです」(前出・スポーツライター)

レジェンド級の分析力を見せた石崎選手。

メダル授与式では最後に藤沢選手から銀メダルがかけられた。「琴美ちゃんにメダルを!」は、チームの合い言葉になっていたという。ロコ・ソラーレの5人、感動をありがとう!

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