「PGF生命の調査では、60歳の25%が『貯蓄が100万円未満』。4人に1人は老後資金がほぼない状態なのです。

とくに私が心配しているのは女性の老後です」

こう話すのは、最新著『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』が話題の“年金のプロ”長尾義弘さん。

長尾さんが心配する「女性の老後に待ち受ける3大リスク」は次のとおりだ。

【リスク1】受け取れる年金額が男性より少ない

「共働きの女性の場合、老後に受け取れる厚生年金の平均額は月額約11万円。男性は約17万円なので6万円も少ない。理由は、出産や育児などのため就労期間が短く、さらに、そもそも男性に比べて平均賃金が低い場合が多いから。また今まで専業主婦だった人は基礎年金の月額約5万円だけ。老後、夫の年金と合わせてなんとか生活できたとしても、妻1人になった場合はかなり厳しい状況です」(長尾さん・以下同)

【リスク2】男性より長生きする確率が高い

「2020年の平均寿命を見ると、男性は81.64歳、女性は87.74歳。一般的に、最後は女性が一人暮らしの可能性が高い。遺族年金も夫の年金が丸ごと入ってくるわけではないので、1人になったら女性は自分の年金をメインに生活することを考えておく必要があります」

【リスク3】平均寿命と健康寿命の差が12年もある

「平均寿命とはべつに、人が元気に暮らせる期間を健康寿命といいます。平均寿命と健康寿命の間には当然差があり、男性は約9年、女性は約12年とされています。つまり女性は12年、もしくはそれ以上の年月、介護を必要として生きると考えておかなければなりません。

介護にかかる費用は総額約800万円といわれていますが、この費用を女性は男性より大きく見積もっておく必要があります」

もともともらえる年金が少ないのに、老後の年金を支える柱である夫より長生きし、介護費用も大きくなる可能性が高い。女性はこれだけ老後資金でリスクを背負っているのだ。

「ただ、50代までに、自分の老後についてきちんと対策を考えておけば、女性も年金だけで“安心な老後”を送る方法はあります」

■年金だけで“安心な老後”を過ごすために取れる対策は?

「まずは公的年金の仕組みをよく理解することです」

ひとくちに年金と言っても、その仕組みは複雑だ。専業主婦、共働きや自営業かによって、年金受給額は大きく異なってくる。

「原則的な対策は次に挙げる3つになります」

【1】働いている間に給料をできるだけ上げる!

「厚生年金の受給額は給与の金額や加入期間に比例しています。専業主婦なら、とにかく夫にがんばってもらって1円でも多く稼いでもらってください。シングルや共働きの場合は自分の収入も上げるように努力する。もしパートで働くときは厚生年金に加入できる仕事を選ぶことが肝心です」

【2】可能な限り長く働く!

「年金は受給開始年齢を遅らせれば遅らせるほど受給額がアップします。夫には最低70歳まで、できれば75歳まで働いてもらうようあなたから働きかけてください。そしてあなた自身も最短でも65歳までは働く覚悟が必要です」

【3】年金受給開始時期を遅らせる!

「いまの年金制度は、年金受給開始を65歳から70歳まで遅らせる(繰下げ受給)ことにより、42%受給額が増える仕組みになっています。70歳まで働き、受給開始を遅らせて夫婦2人で節約をすれば、老齢厚生年金だけで生活することがほぼ可能です」

貯金は使えば減るが、公的年金は確実に国から支払われる老後生活の“減らない財布”だ。

「妻のほうが長生きすることを前提で考えれば、老後はなるべく夫の収入や年金を頼りに生活して妻の受給開始を遅らせる。

それが、妻1人になったときの受給額を最大化させる最良の備え方でしょう」

【PROFILE】

長尾義弘

ファイナンシャル・プランナー。新聞・雑誌・WEBなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの?教えてください。』(河出書房新社)など著書多数

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