新型コロナ対策の給付金を巡る詐欺事件の摘発が後を絶たない。5月30日にはおよそ9億6千万円をだまし取ったとして、三重県の家族3人が逮捕。

また6月2日にはやはり2億円の不正受給の疑いで、なんと税金を預かる東京国税局の職員らが逮捕された。

「税金を巡る事件として、現代史に残る大きなものだと思います」と語るのは税金制度に詳しい中央大学法科大学院・酒井克彦教授。

「’20年にできた持続化給付金制度は、コロナの影響で売り上げが減少した中小企業や個人事業主に、それぞれ200万円と100万円を給付するもの。困っている人に早くお金を届ける必要があるということで、審査方法を簡素な仕組みにしました」(酒井教授)

スピードが重要なのはわかるが、審査があまりにザルすぎた。実際に持続化給付金を申請したアプリ開発会社社長が話す。

「事業の売り上げが前年同月比で50%以上減っていれば給付金が下りる仕組みです。

売上げ台帳は手書きでも申請可能なので、その気になれば不正もできるでしょう。

’19年の確定申告書類の控えほか銀行通帳も必要ですが、通帳で必要なのは表紙だけで、取引履歴の確認はありませんでした」

詐欺グループに付け込まれるのも仕方がないと言わざるをえない。さらにこの社長は、実際に耳にしたという悪質な手口を明かした。

「あるフリーのコンサルタントは制度を聞いて、毎月の顧問料の支払い間隔を3カ月に変更してもらったそうです。振り込みがない月は“前年同月比の収入が減少”となり、給付対象に。顧問料はのちほど支払ってもらうだけで、実際の収入は減っていないそうです」

’20年4月、当時は自民党政調会長だった岸田文雄首相が衆議院予算委員会で「制度の悪用が懸念される」と現在の状況を“予言”していた。

そのうえで「局面が局面だけに、性善説に立った迅速な支給を心がけること」と話している。

その性善説が裏切られてしまった格好だが、経済産業省によると、6月2日の時点で、一連の報道を見た不正受給者が自主的に返還を申し出てきたケースが1万5千440件、約166億円に上るという。

若者が犯罪に手を染めるケースも目立つという。

「公表はしていないが、(不正受給者に)若者が多いというデータはある」とは中小企業庁の担当者。しかし、犯行の代償は大きい。

「不正受給が認定されると、受け取った金額に加えて年3%の延滞金と、元本の20%にあたる加算金をお支払いいただきます。

期日までに支払わない場合、氏名を経済産業省のホームページで公開します」(中小企業庁担当者)

最終的な被害総額はどこまで膨らむのだろうか。経済ジャーナリストの松崎隆司氏は「公金詐欺である不正受給の申請人が処罰されるのは当然」としたうえで、このように語った。

「給付金の申請には確定申告が必要ですが、実はここ数年、確定申告者が急激に増えています。最終的な不正受給総額は1千億円を超えてもおかしくありません」

あ然とする金額。もう日本で性善説は通用しないのか。