「コロナ禍以降、在宅時間の増加に伴って、送り付けによるトラブルに遭う人が増えています」

そう語るのは国民生活センターの担当者だ。買った覚えがない商品がいきなり届いたり、電話勧誘で断ったのに商品が強引に届けられる“送り付け”の被害が後を絶たない。

「もっとも増えているのが海産物の送り付けです。電話勧誘で『コロナ禍で収入が減って困っている』などと親切心につけ込み、断っても後日、ウニやホタテなどの商品が代引きで届くケースがここ最近増えています。相談者は高齢者が多く、6割が女性です」(前出・担当者)

同センターの7月14日の発表によると、海産物の送り付けトラブルは、’21年度は5000件を超え、前年度と比べて2倍以上に増加している。その理由を、前出の担当者は次のように説明する。

「外出自粛や行動制限で旅行者が少なくなり、海産物の事業者が電話勧誘に力を入れていることが影響しているようです。さらに、消費者側も家にいる時間が長くなり、電話勧誘を受けやすくなっているのではないでしょうか」

コロナ禍で、“食べて生産者を応援キャンペーン”が行われるようになったことも一因のようだ。

「ちょっとしたぜいたく品を、“応援”のためにお取り寄せする人も多いと聞きます。電話勧誘で海産物をオススメされても違和感なく話を聞いてしまう人も。『コロナ禍で売れないから安くする』と言われ、怪しいと思い断っても、勝手に送り付けられる悪質なケースがあるのです」(前出・担当者)

実際に、被害に遭った実例を教えてもらった。

【海産物/請求額:2万1000円】’22年6月

《「注文を受けた海産物を送る」と家に電話が。断っても「着信が残っており、2万1000円分の商品の注文を受けている」と2度目の電話が。再び断ったが海産物が代引きで届いた。

受け取りを拒否しているがどうすればよいか》(50代・女性)

送り付け商法が増えている背景には、コロナ禍での通販サイトの需要の高まりも関係しているという。

「通販の利用が増えたことで、消費者にとってあまり把握していないような荷物が届いても違和感を持たずに『注文した商品だ』と受け取ってしまった、という事例がとても多いのです。また、『家族の誰かが頼んだのだろう』と受け取ってしまうケースも。代引き配達の“つい受け取ってしまう”という消費者の心理をついている悪質なやり口ですね」(前出・担当者)

代引き配達でだまされてしまった実例にはこんなケースがーー。

【下着/請求額:1万円】’22年4月

《母からの荷物だと思い約1万円の代引き荷物を受け取った。中には下着が8枚。母は送っておらず送り主の業者に連絡をすると、音声で「返品の場合は品物を送るように」とアナウンスされて電話が切れた。返金してほしい》(50代・女性)

【バッグ/請求額:7000円】’22年6月

《通販サイトで注文した商品だと勘違いし、約7000円の代引き商品を受け取った。中には、覚えのないバッグが2つ。送り状の連絡先に電話すると、データ通信専用番号で音声による「対応はできない」が繰り返されてしまう》(50代・女性)

■身に覚えのない指輪が送り付けられた実例もーー。

また、こんな送り付け商法も。

【指輪/請求額:15ドル】’22年2月

《ポストに投函されていた黄色の封筒をうっかり開封すると、身に覚えのない安物の指輪が入っていた。

請求書はないが、封筒の表面に15ドルと記載がある。自分の住所や電話番号まで書かれていて不安だ》(50代・女性)

【グルコサミン健康食品/請求額:800円】’22年5月

《グルコサミン健康食品の電話勧誘があった。途中で名前と住所を確認され、お試し品をポストに入れておくと言われた。断って、電話を途中で切ったが、後日小さな荷物が届き、お試し品と800円の請求書が入っていた》(60代・女性)

電話勧誘をしてくる業者の中には、「顧客リストを見て連絡した」というパターンもあるのだという。

いったいどこから個人情報が流出しているのだろうか。ジン法律事務所の石井琢磨弁護士にその実態を解説してもらった。

「可能性が高いのは小規模の通販サイトです。とくに格安の通販サイトや買い取りの通販サイトは要注意。怪しいと思ったら、事業主の欄を見て、会社の規模に対して、資本金の額が多すぎないか、住所の位置を地図のパノラマ画像から見て、従業員数に見合っているかを確認しましょう。また、口コミの本文をコピーしてインターネットの検索に貼り付け、別サイトで同じ口コミが出てきたら使い回している“悪質サイト”の恐れが。通販サイトのなかには、安い商品は見せかけで、個人情報の取得を目的としている場合もありますし、そこから個人情報が裏で売買されることもあるのです」

■身に覚えのない商品は無視して処分が正解

では、このような送り付け商法を防ぐにはいったいどうすればいいのだろうか。前出の石井弁護士は、こう解説する。

「相手の話を聞くと、会話が続く人だと思われて、ターゲットになりやすい。すると、別会社を装った巨額の投資詐欺やオレオレ詐欺の電話がかかってくる可能性もあります。怪しいと思ったら、丁寧に対応せず、すぐに切りましょう」(石井弁護士)

身に覚えのない商品が届いた場合は“無視して処分”が正解だ。

「売買が成立するには、買い主の承諾が必要です。商品の購入を承諾していないにもかかわらず、勝手に送り付けられた場合は、送り主をメモしてすぐに処分してもかまいません。’21年に特定商取引法の一部が改正され、法改正前は一方的に送り付けられた商品は、14日の保管期間が必要でしたが、同年7月6日以降はすぐ処分してよいことになったのです」(石井弁護士)

たとえ、「返送しないときには、購入されたものとみなします」と一方的なメッセージがあっても、回答義務はない。

さらに、届いた商品の事業主にむやみに連絡するのは危ないと石井弁護士は警鐘を鳴らす。

「事業主に問い合わせるのは、個人情報を漏らしてしまうことと同じ。送付元や商品は写真やメモで残しておきましょう」

通販や宅配サービスを頻繁に利用する場合は、注文した情報を家族と共有しておくことも対策に。

「代引きを利用する場合は、家族間で事前に連絡するなどルールを決めておくことが重要です。身に覚えのない代引きは、配達業者に持ち帰ってもらうなど、受け取り拒否をしましょう」(石井弁護士)

悪質な“送り付け商法”にだまされないためにも、日ごろから十分に注意しよう。

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