インターネットが発達した時代においても紀行バラエティ番組『クレイジージャーニー』(TBS系)が人気を博すなど、人間の“まだ見ぬ世界”に対する好奇心は今においても尽きることはない。

そんななか廻った世界50カ国以上にして渡航歴300回以上の取材歴20年を誇る映像ディレクター・越智龍太さんが、これまで渡航先で体験した恐怖と怪異の世界をご紹介しよう。

まず、最初に越智さんが「怖かった」と挙げるのが、オーストラリアのグレート・バリア・リーフに浮かぶ『レディ・エリオット島のゴースト伝説』だ。

ここは世界遺産として知られる世界最大のサンゴ礁・グレート・バリア・リーフの最南端にある小さな島で、水中カメラマンの中村征夫氏が「世界で一番美しい」と称した海に囲まれている。しかし、越智さんは「悲しい歴史に彩られた伝説の幽霊話があるのです」と語る。(以下、「」は越智さん)

「ここはサンゴ礁に囲まれているため、古くから船が座礁してしまう“魔の海域”として知られているところです。私は有名女性キャスターを連れて取材に行ったんですが、そのときもセスナで物資を運んでから島に入りました。すぐに美しいサンゴ礁の取材をすませコテージ(ホテル)に泊まった夜の事。スタッフの一人が女性の姿をした幽霊らしきものを見たというのです。我々は寝ぼけていたからだろうなんて思っていたのですが、現地のコーディネーターから100年前に起きたレディ・エリオット島の悲しい伝説を聞いたのです。

それによれば、昔アイルランドからやってきた移民の家族が、当時は過酷な仕事とされていた灯台を守る仕事をしていたそうです。当然ながらインフラも整備されておらず、情報も隔離されているなか、灯台守の妻だったスザンナがノイローゼになってしまった。最後はそんな生活に耐えかねて自殺したとも夫に殺害されてしまったとも言われる伝説が、現在も島に残っていることを聞いたのです。

その話を聞いてからも、不思議なことが起こりました。

女性ADが幽霊を見たといって一晩中寝られなかったり、深夜2時に突然パソコンの電源が入るなどの現象が。ちなみに深夜2時というのは、スザンナが殺された時刻(深夜午前2時頃)なのです。ちなみにこの話は、英語圏の観光客に最近広まっていますね」

■死んでいるような人間の顔にゾンビパウダーを

続いて越智さんが挙げてくれたのは、カリブ海に浮かぶ島『ハイチのゾンビ伝説』。ホラー映画などで知られるゾンビの、リアルな光景を垣間見たという。

「ハイチには世界遺産となっている『シタデル』と呼ばれる巨大要塞を撮影しに行きました。フランスから独立した世界で初めての黒人の国ですが、現在では最貧国として知られており行った時も水は汚いし、野良犬とかヤギが平気で町中に歩いているほどでした。このシタデルという城はアンリ・クリストフという国王が自分の要塞城を造ったもので、200年以上経った今でもそのまま残っています。ここも奴隷の幽霊が出るなんて言われてましたが、リアルな恐怖を体験したのはこの後でした。

取材中に雨が降ってきたので城のふもとの村の宿に泊まったのですが、夜中に休んでいると太鼓のような音が聞こえてきたのです。どうやら外の広場からなので慌てて向かってみると、そこには4~50人ほどの地元民が集まって、何やら怪しげな儀式を行っている……。現地のコーディネーターに聞いてみると、ブードゥー教の儀式だというじゃないですか!

ブードゥー教といえばホラー映画などでもおなじみで、黒魔術なんて言う人もいます。ゾンビ映画で知られる“ゾンビ伝説”の素ですね。

実際にはゾンビを見たわけではありませんが、死んでいるように見えた人間の顔にゾンビパウダーと呼ばれる毒を塗っているんです。撮影はほとんどできなかったのですが、まるでホラー映画のようなシーンを実際に目の当たりにすると本当に怖かったですね」

越智さんが見聞きした世界の不思議な体験を漫画化した書籍『映像ディレクター越智は見た(1)世界怪奇録』(朝日新聞出版)が1月20日に発売された。世界の不思議は尽きない。

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