「え、どこからかすえた玉ねぎのニオイが…」と思ってニオイの元をたどったら、自分の足だったときのショックといったら! 寒暖差が激しい今の時季、急に暑くなり少し汗ばんだだけで、強烈なニオイが鼻につくようになる。

「じつは、春は1年で最も汗のニオイが強くなるピーク期なのです」と言うのは、『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(光文社新書)の著者で内科医の桐村里紗先生。

「人の体は体温が上昇すると、エクリン腺と呼ばれる汗腺から汗を出します。夏の時季など汗腺機能が活発になると、汗腺に含まれるミネラルが血管に戻され、血液に再吸収されます。そのため汗には余分なミネラル分が残らず、サラサラした無臭のよい汗になるのです。

汗腺機能が低下する冬から春先にかけては、血液へのミネラルの再吸収率が低下して、蒸発しにくいベタベタとした悪い汗になります。ミネラル分が多いと皮膚の常在菌のエサになり、強いニオイを放つようになります。薄着になるのでニオイで周囲に迷惑をかけているのでは? と神経過敏になる人も多いのではないでしょうか」(桐村先生、以下同)

日常的に汗をかいていないと、体温調節を担うエクリン汗腺の機能が低下して、ベタベタした汗をかきやすくなる。

ミネラルを含んだ汗は、常在細菌のエサになり、ニオイを発しやすくなるというのだ。

■更年期世代は3種類の汗が同時に出てにおう可能性も!

特に、更年期世代はホットフラッシュの症状が出ると、短時間で大量の汗をかくようになる。女性ホルモンの分泌が低下して加齢臭も発生しやすくなるので、ベタベタ汗と加齢臭のダブルで強烈なニオイの発生源になることも。

そこにきて4月から、新たな職場への通勤や子どもが巣立つなど、環境の変化によるストレスが加わると、「精神性発汗」も起こりやすくなるという。

「ストレスがかかる状況下で汗をかくと、汗にアンモニア臭が混ざりやすくなるといわれています。化粧品メーカーの資生堂が、緊張によるストレスで皮膚から『STチオジメタン』という硫黄化合物のような特徴的なニオイの物質が発生することを発見しました」

STチオジメタンのもとになる物質は玉ねぎやニンニクなどと似たようなニオイと言われていて、それが更年期の加齢臭、ベタベタ汗と混ざり合うと、とんでもない悪臭に!しかも、ストレスがかかると交感神経が優位になるので、手と足の裏に汗をかきやすくなるそう。

特に足のニオイには注意が必要。

そこで、桐村先生に汗と足のニオイ対策を教えてもらった。

【1】消臭素材の靴下やストッキングを履く

肌着を速乾性に替えるだけでも汗のニオイを抑えられる。特に消臭素材のタイプがおすすめという。

「消臭素材のストッキングや靴下などは、ニオイの原因菌を抑える特殊な素材を使っているので、汗をかいてもニオイを軽減することができます」

寒暖差が激しい時季は、寒いと思って冬用のインナーを着てしまい、大汗をかいたという話も聞く。天気予報をチェックして、毎日の服装に気をつけよう。

【2】足専用の消臭クリームを足指の間、足の裏に塗る

朝、着替えるときに、足の裏や足指の間に足専用の消臭クリームを塗ると、夜まで持つ。

「脇用のものだけでなく、制汗スプレー、制汗クリームは足専用のものも売られています。一度塗ると塗り直しをしなくても夜まで持ちます。ストッキングを履いたときは、スプレータイプなどと使い分けてもいいでしょう」

【3】靴にインソールを敷き、汗が靴につかないようにする

靴に消臭効果の高いインソールを敷き、汗が靴につかないようにすることも大切だという。

「靴の中が高温多湿でむれると、菌が繁殖しやすい環境になります。菌が繁殖してしまうと、ニオイがついてしまいます。

インソールを敷いて汗を吸収させるようにしたほうがいいでしょう」

インソールも敷きっぱなしではなく、こまめに取り替えよう。

【4】靴をしまうときは「重曹を入れた靴下」を中に

靴を下足入れにしまうときは、そのまま靴を入れると汗のニオイが充満してしまう。そんなとき、重曹を入れた古い靴下を靴の中に入れると、汗臭さが取れる。靴の手入れはこまめに行い、パンプスなどの革靴を履いた後は、1~2日程度休ませるようにすると長持ちする。

【5】有酸素運動やぬるめの湯船につかり、汗腺を鍛える

汗腺機能が低下した状態で汗をかくと、ベタベタした汗になる。サラサラの汗をかくためには、汗腺を鍛えること。

「汗腺を鍛えると、ミネラルが再吸収されて汗と一緒に出てこなくなるので、サラサラとした汗をかくようになります。お風呂に入るときは湯船で、ぬるめのお湯にじっくりつかりましょう。また、少し息が上がる程度のウオーキングもおすすめです。1日15分程度からでも十分で、少しずつ強度を上げていくと継続できます。汗をかく習慣がつくと、ベタベタではなくサラサラした汗をかけるようになります」

【6】ストレスを感じたら深呼吸をして副交感神経を優位に

極度に緊張したり興奮したときにかく「緊張性発汗」は硫黄化合物を含むため強烈なニオイを放つ。少しでもストレスを感じたら深呼吸をしてリラックスを心がけよう。

「呼吸は無意識のうちに行っていますが、緊張や不安などを感じると浅く、速くなります。浅い呼吸は自律神経の乱れなどを招き、緊張性発汗にもつながります。『冷や汗をかく』と言うように、緊張した状態でかく汗も、強いニオイを放ちます。ストレスを感じたらゆっくり息を吸い、ゆっくり吐くと、副交感神経が優位になり心が落ち着き、発汗が抑えられます」

ホットフラッシュの症状が強く出る人は、ホルモンバランスが乱れている証拠なので、我慢しないで婦人科を受診するべし。

臭い汗をかかないよう対策して、体調をキープしよう。