70代の女性ふたりが主演のドラマとして注目を集めている『照子と瑠衣』(NHK BS)。主演を務める風吹ジュンさん(73)に、女性同士の友情や50年以上におよぶ芸能生活について伺った。

――今回、風吹さんが演じる照子は、モラハラ夫との生活に限界を迎えていた専業主婦。長い間第一線で活躍されていますが、照子に共感できたところはありますか?

「照子は、『これは許そう』『これは目をつぶろう』といったことを上手にやってきた女性です。でも、それが重なり自分を見失いそうになっている。自分を犠牲にして生きてきた女性なので、そういう意味では共感するところはありました」

――撮影中は風吹さんも夏木さんも体調を崩されたそうですが、照子と瑠衣のように、励まし合ったことは?

「心が折れそうになったときは、お互いの存在がすごく大事でした。今日は寝不足で少しきついなと思っても、夏木さんの存在があったおかげで頑張れたことはすごくありました。環境を共有していたのでわかってもらえる。ですから夏木さんには言えることがたくさんありました」

――照子と瑠衣は、約40年の長い友人関係にありました。風吹さんご自身、長い友人関係の方はいらっしゃいますか?

「芸能界ではいないかも。プライベートならデビューする前からの付き合いになる女友達がいます。中学、高校と環境的に私は転校が多くて親友はなかなかできなかったんですけど、そういった中でも女友達ができました。頻繁に会うことないんですけども、LINEしたりしていますよ」

――友情が長く続く秘訣は何でしょう?

「全然違う人間同士だから、わかってくれないところもあるけれど、相手に勝手な期待をするよりも、自分がその人を好きだと思う心、それがすごく大事だと思います。本当に相手を好きだという感覚は、そんなにぶれないと思うんです。

好きなところがあるから友達になってるわけですし。いまは電話じゃなくてもSNSで気軽に連絡できるので、ふとしたときに連絡したり。しばらく会っていなくても、ふっとすぐ当時のように戻る瞬間があるので」

――芸能生活50年以上、長く活躍する原動力を教えてください。

「最初は自分が生きるため、子供が生まれたら子供を守るため。今も子供を守りたいし、孫も守りたいと思って生きています。だけど、自分を好きでいられるような自分であること、そこを基本に置かないと、原動力も生まれてこないような気がします。働くことに対して自分を犠牲にしていると思った時から力が出ないんですよね。自分が基本で、自分主導にものを考えると、自分に責任をとっていけるような気がします。それが原動力につながっていくような気がします」

――現状に満足せず、自分は未完であるという思いがあるのでしょうか?

「そうです。女優としてはもう完全にそうだと思っています。ですから、いろんな役も挑戦していかないといけないだろうし、できないといけないなと思っています。課題があるっていいことじゃないですか」

――風吹さんの持っているチャーミングさに憧れる女性は多いです。

チャーミングさを保つ秘訣とはなんでしょう?

「カトリーヌ・ドヌーヴさんと共演したときに、彼女を見ていたらありのままなんです。美術さんがつくったセットを興味津々に楽しんでいたり、疑問に思ったことは聞いてみたり、そういったことを素直にされていました。好奇心が旺盛というか。私もどちらかというとおっちょこちょいではあるけれど、好奇心が強いんです。自分のことを自由な人間だなとよく思うんですけど、好奇心を持って、自分で自分を好きでいられるようにしていようと心がけています。

あと、好きなものは譲らないです。これがいいでしょうと周囲から勧められても、自分に合わないと感じたら、すみませんと断ります。妥協はしません。そうやって自分の好きなものを選んできた結果が今の姿だと思いますで、実際、楽しんでいますし、ハッピーだとすごく思っていますよ」

――素敵です。では最後に『照子と瑠衣』の見どころをお願いします。

「不思議な芝居や唐突なシーンが出てくるので、何度も見直したり、聞き直したりするのはこのドラマの楽しみ方のひとつだと思います。監督がいろいろなところに仕込んでいますから。

そしてやはり醍醐味は、照子と瑠衣の未来を決めないで未来に進む、自分を解き放った生き方だと思います。そこから学べるところはたくさんあると思います。70代でも成長していく姿を見て、自分もこうありたいとか、こういう生き方があるのかなとか、いろいろと感じていただけたらうれしいですね。

あと、瑠衣の衣装もとても楽しみにしてくださいね。夏木さんご自身でスタイリングされて、とてもご苦労されていました。本当にいつもセンスがよくて、夏木さんでしか表現できない瑠衣でした。全く違う周波数を出している照子と瑠衣ですが、いつも仲良く生きています。お互いの自由を認め、お互いの存在を尊重しながら、相手を見守っている。友情というのは、距離感なのだと思います」

【INFORMATION】

プレミアムドラマ『照子と瑠衣』

NHK BS/NHK BSプレミアム4K 毎週日曜22時~〈全8回〉

モラハラ夫に限界だった照子(風吹ジュン)は、長年住んでいたアパートを追い出され、途方に暮れていた瑠衣(夏木マリ)を助手席に乗せ、東京から逃避行を開始する! 70代の2人が《自由》を手に入れ、《新しい人生》に踏み出し、若い世代に《希望》を繋いでいく様を、爽快に、時にコミカルに、歌と笑いと涙いっぱい描く。実力派俳優二人の夢の競演による、女性の連帯“シスターフッドドラマ”。

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