最大震度7を記録した熊本地震の本震から10年を迎えた4月16日、天皇陛下と雅子さまは愛子さまとともに、御所で黙とうされた。
「天皇ご一家は、発生から15年の節目となった東日本大震災の被災地・福島県を4月6日、7日に訪問されました。
延期となった岩手・宮城両県ご訪問も5月中の実施が調整されていますし、そして秋には熊本県の被災地を訪問される予定です。国民の安寧と幸せを願うご一家のご活動の幅は、いっそう広がっていくことでしょう」(宮内庁関係者)
国民に寄り添うべく、両陛下や皇室の方々は日々活動に励まれている。そのいっぽうで、皇族数の減少という危機を脱するための議論は長く停滞を続けてきたが、ようやく再開されることとなった。
4月15日、衆議院議長公邸で衆参両院の議長と13の党・会派が集まる全体会議が開かれた。初参加となった中道改革連合、チームみらいを含めた党や会派が意見を述べた今回の会議。焦点となってきた「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する」案と、「旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える」案の2つについてそれぞれのスタンスを再確認する形となった。
しかし、1年ぶりの議論の再開で、結果として2月の総選挙で大勝した自民党が、大きく議論をリードする形となっていたのだ。全国紙政治部記者は、
「自民党から選出された森英介衆院議長は、“今国会中に皇室典範の改正案を成立までこぎつけたい”と打ち出したほか、“中道には1カ月後をめどに党見解をまとめるよう求めた”と、会議終了後の記者会見で明かしました。
中道は、結婚後の女性皇族の身分保持案、養子縁組案へのスタンスが旧立憲民主党側と旧公明党側で異なり、意見集約がなされておらず、そもそも見解がまとまるか不透明です。自民党内からは、“全会一致でなくても与野党がおおむね一致すればいい”という声も出ています。今後の議論は、自民党が主導権を握る形で進むことが鮮明になりました」
高市早苗首相も、12日の自民党大会で養子縁組案を“第一優先”とした皇室典範改正への熱意を示したが、こうした“男系男子による皇位継承の堅持”という党内保守派の旗頭となってきたのが、麻生太郎副総裁だ。
「麻生氏は寬仁親王妃信子さまの実兄であり、長らく自民党の保守強硬派をまとめてきました。全体会議の翌日、麻生氏は自身の派閥の会合で、『死活的な課題だ。今国会中に皇室典範改正を実現する』と述べています。議論の取りまとめ役の森議長は長年の腹心であり、麻生氏が執念を燃やしてきた養子縁組案の実現が、いよいよ現実味を帯びてきました」(前出・政治部記者)
衆院での3分の2超という戦後最多の議席数という数的優位をかさに、保守派の主張はさらに声高となっている。
■「愛子天皇」論をけん制したい保守派の圧力
高市首相をはじめ、自民内の保守強硬派の政治家122人が名を連ねる議員連盟「日本の尊厳と国益を護る会」(以下、護る会)も動きを見せている一派だ。代表を務める青山繁晴環境副大臣の発言が、いま物議を醸していると前出の宮内庁関係者は明かす。
「皇族数確保策の全体会議が開かれる直前の4月1日、護る会は会合を開き、提言について議論しています。その後のブリーフィングでの青山氏と記者のやり取りの内容に、宮内庁内にも驚きが広がったのです」
青山氏は記者とのやり取りで、
「日本で最初の女性天皇、推古天皇に始まり8人10代の女性天皇がいらっしゃる。いずれも即位された後はご成婚なさらず、御子ももうけておられない」
という意見が会合で挙がったことを紹介。さらに続けて、
「論争の種になることをあえて言う。愛子内親王殿下がもし即位されれば女性天皇として9人目でいらっしゃる。日本の歴史と何も違うことはないが、古代のいわば知恵のように『ご成婚召されるな』『御子はもうけられません』――そんなことは言えるはずがないし、絶対に言ってはいけない。
「護る会の考え方としても、古代と違って、皇族の方々におかれても基本的人権は貫かれるべきだ」
などと主張していた。しかし、記者から“愛子天皇も決して否定しないが、未婚を強いかねないということか”と問われると青山氏は、
「そういうことも考えに入れるべきだということ」
と述べたのだ。一連の発言について本誌は、青山氏の事務所に取材を申し入れたが、
「青山は現在、環境副大臣として政府に入っておりますため、取材につきましては控えさせていただいております」
との回答だった。
神道学者で皇室研究家の高森明勅さんはこう指摘する。
「女性天皇なら独身を通さなければならないかのような、歴史も知らず当事者の尊厳もないがしろにする提言です。はからずも男系限定論者の本音が、現在の価値観とかけ離れている本質があらわになったといえます」
メディア各社の世論調査では、女性天皇や女系天皇を容認するという声は9割に上る結果を報じたものもあるほか、愛子さまのご即位を望む声は高まっている。そうした状況下において、保守的な立場を示す政治家の発言の余波は小さくないとしつつ、前出の宮内庁関係者は続ける。
「昨今の『愛子天皇』論の高まりには、保守派の政治家や論客による反論の機運も高まっています。ただ『護る会』の主張は、“愛子さまが即位されれば、結婚や出産が許されない状況になりかねないが、それでもいいのか”と、女性天皇を支持する国民を威圧するような意図を感じました」
近現代の皇室に詳しい静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんは、次のように警鐘を鳴らす。
「昭和天皇は昭和21年元日に『新日本建設に関する詔書』(人間宣言)で、戦後の象徴天皇のあり方を示しています。“天皇と国民は、終始相互の信頼と敬愛とによって結ばれ、神話や伝説で生まれたものではない”という内容です。そのあり方は、平成、令和の皇室に受け継がれています。
“結婚もならず、御子ももうけてはならない”という主張は、愛子さまのご人格への配慮や思いやりに欠けています。このまま時代錯誤で恫喝のような保守派の意見が押し通されていけば、将来的に天皇と国民の結びつき方に、大きな変化が生まれてしまうことを懸念しています」
さらに17日、「護る会」は衆参両院議長と面会し、旧宮家の男系男子を皇族の養子とするか、女性皇族の婿養子とすることを皇室典範改正で可能にするよう提言した。さまざまな動きが国会の内外で広がるなか、両陛下のご心中を、前出の宮内庁関係者はこう察する。
「旧宮家の男系男子と女性皇族の結婚というシナリオについては、かねて両陛下も憂慮され、宮内庁も注視してきました。
両陛下は、愛子さまのご将来についても、“国民が決めること”というご姿勢を貫かれているように拝察しています。ただ親として、愛子さまに幸せな出会いや結婚、円満な家庭を築いてほしいとも真摯に願われています。
愛子さまの未来への配慮が十分になされないことは、雅子さまにとっても許しがたいのではないでしょうか」
「愛子天皇」を望む国民に対する恫喝。人々にいっそう“分断”を広げることは、雅子さまも望まれているはずがない。
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