奔走するのは道長、そして道兼。
しかし、奇しくも疫病が道長とまひろを引き合わせてしまう。
まひろは何も悪くない……
疫病の暗い影がひたひたと近づいている中、まひろ(吉高由里子)の心に影が落ちる。さわ(野村麻純)に突き放されたから。いや、こういう場合、突き放されたというか、絶交というやつなのか、なんなんだろう、仲違いとも少し違うような。さわ曰く、私は家でいらない子だし、石山寺でもどうでもいい女だった、と。「蜻蛉日記」のときの話をしていたときも自分だけのけ者だった、と。
まひろが藤原寧子(財前直見)と「蜻蛉日記」で盛り上がっていたからなのか。それとも、「蜻蛉日記」に描かれた心情をまひろが分かる、と言ったからなのか(そんなこと言われても……という話だが)。
考えてみれば、まひろとさわはタイプが違う。おまけにさわは、まひろの父・為時(岸谷五朗)が世話をしていた女性の娘なわけで。そう考えると仲が良いのは不思議というか。
ケンカ別れとなってしまったさわに文を出し続けるまひろ。
それだけ、まひろにとってさわは大事な存在ということなのだろう。
またクセモノがひとり
一条天皇(塩野瑛久)も民を案じるが、道隆は貴族は疫病にかからないと決めつけている。確かに、屋敷も広いし、民より清潔さを保てるからそうかもしれないが、ならば同じことを民にすればいいのでは……とはならない道隆。
今回からは、伊周(三浦翔平)の弟・隆家(竜星涼)が登場。こちらもなんだかクセモノそうな、というかふてぶてしさもあるというか。伊周とはまた違うタイプだが……。
道兼、覚醒
両親が熱を出し、悲田院(今でいう救護施設)に薬草をもらいにいったまま帰ってこないのだという。たねと共に悲田院に向かうまひろだったが、すでにたねの両親は亡くなっていた。そしてたねも発熱。まひろが懸命に看病をしたが帰らぬ人となった。
それから、まひろは悲田院にやってきた子どもたちの看病を続けていたが、次々と亡くなっていく。
一方、そこに道兼(玉置玲央)がやってくる。悲田院に行こうとした道長を「汚れ役は自分の役目」と言って止めたのだ。結局、道長もやってきたわけだが、道兼が前回とは見違えるような表情に。父との鬱屈とした関係がなければ、道兼ももっと早くから政の才を発揮していたのだろうけれど……。
悲田院の状況に絶句する道兼と道長。
そしてここで出会ってしまう道長とまひろ。発熱し、もうろうとした状態のまひろと道長が偶然ぶつかったのだ。
しばし、見つめ合う2人だったが、まひろはそのまま意識を失う。道長の腕の中で。
ときめきしかないのだが……道長との再会
ずっとまひろに語りかけながら看病をする道長。それは倫子(黒木華)にも明子(瀧内久美)にも見せない姿。愛というより、もっと深いところでつながっている。一緒に乗り越えてきたものが大きすぎる故だろう。
とは言え、特別な女性であることに変わりはない。道綱が石山寺で良い女と出会ったと、言いまひろの名を口にした途端に道長の表情が変わっていたが、もし夜這いが成功していたら道綱の命はどうなっていたことやら……。
それにしても、ここまでままならないものなのか、道長とまひろ……。
倫子の笑みが怖い
道長の姿を見送り。恐ろしいことを口にする。
「殿のお心にはもうひとりの誰かがいるわ」
自分でも、明子でもないもうひとり。
そして、怒るでもなく、笑う。
この笑いがどういう意味なのかが分からなくて怖い。
もうひとりいるなら、道長の言動に合点がいくということか。倫子は鷹揚にしていても、自分とは文のやりとりをしていなかったのに、明子とはしていたのか、と気にしていた。周りが想像しているよりも、倫子は道長に強い想いを抱いているのでは?
そして、その相手がまひろだということもすぐに察するのでは……いや、もう察している?
「香炉峰の雪」についても触れなければと思っていたのだが、すっかり後半の展開に持っていかれてしまった……
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ