見た目も性格もバラバラなワケあり3人が、キッチンカーでスパイスカレーを移動販売しながら各地を巡るグルメロードドラマで、本田さんはその場のノリだけで生きてきたドライバーの北野祐樹を演じています。
現在25歳の本田さんは、昨年大きな話題になった連続テレビ小説『虎に翼』でNHK朝ドラ初出演。今年もドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)に出演し、情報バラエティ番組『王様のブランチ』(TBS系)にもレギュラー出演するなど、多方面で活躍が期待される人気若手俳優です。現況についてお話を聞きました。
ただのグルメドラマではない作品

本田響矢(以下、本田):まず主演でやらせていただけるということが、素直に嬉しかったです。その後、内容を聞いたときに「グルメドラマ」というジャンルだと知り、「きっと現場でカレーが食べられるのかな」って。とても素敵な現場になるのではないかなと、撮影に入る前から楽しみでした。
──物語は3人の登場人物で進行しますが、脚本全体や作品の世界観についてはいかがでしたか?
本田:最初に「グルメドラマ」というワードだけ聞いたときには、「毎回カレーを食べるドラマなのかな? どう展開するんだろう?」と思ったのですが、キッチンカーで地方を巡って、その場の食材を使ってカレーを作るという設定がすごく面白そうだと感じました。
そこに3人の関係性が描かれることで、ただのグルメドラマではない、人間模様も含まれた作品になっている。全10話を通して3人が成長していくストーリーがあって、その点でもとても素敵だなと思いました。単なるグルメドラマではなく、「グルメロードドラマ」ってという言葉がぴったりの素敵な作品だなという印象でした。
強がっているけど弱さもある役柄

本田:もちろん、カレー好きの方にはハマっていただけるのではないかなと思います。特にスパイスカレー好きにはたまらない作品に! 調理シーンもかなりこだわって撮っていて、僕は現場にはいなかったのですが、森田晃役の奥野壮さんが一日中調理シーンを撮影する日があったそうなんです。1話を観させていただいて、「こんなに美味しそうにカレーが映っているんだ!」とびっくりしました。
──演じられた北野祐樹というキャラクターの印象はいかがでしたか?
本田:とてもリアルにも存在しそうな人物だなと思いました。強がっているけれど、実は弱さもあり、多くの方も共感できる部分があるのではないかなと。3人の人間模様を自分に重ね、「俺も頑張ろう」「私もちょっと頑張ってみよう」と思っていただけることもあるのかなと思っています。
グルメ好きにもドラマ好きにも届くような作品になっています。普段グルメドラマを見ない方でも入りやすい作品です。
仕事とプライベートのバランスで心がけていること

本田:休みの日や少し空いた時間で自分の好きなことをする! を心がけています。服が好きだったり、温泉やラジオといろいろあるんですが、お仕事も本当に好きなのでどちらかに偏りすぎず、どちらも大事にしていきたいなと。
──お芝居してるときのこだわりも現場ごとに違うと思いますが、今回の『すぱいす。』ではどうでしたか?
本田:食べるシーンで、観ている方が「美味しそう!」、「お腹すいた」と思っていただけるようにと演じていました。アドリブもたくさんやってみたり。すごく楽しかったです。ちょっとした所作も含めて、どの作品をやるときも「この作品ならでは」というこだわりはありますね。
その作品で一番求められているものは何なのか、一番大事にしようと思うことは何なのかを考えます。どうしたら作品を愛していただけるかと。
ルーティンはお風呂に入りながら“あるラジオを聴く”

本田:毎週、週一でロバート秋山さんのラジオを聴きながらお風呂に入ることですね。ルーティンです。本当に楽しみで。
──お笑いがお好きなんですか?
本田:ただただ秋山さんが好きなんです。初めて「ラジオを毎週聴こう」って思えて、それまではラジオをあまり聴いていなかったのですが、秋山さんのラジオのおかげでラジオの面白さを知ることができました。
──朝ドラ『虎に翼』など、出演作品への反響もすごそうですよね。注目が集まっている状況は、本人としてはどう感じてますか?
本田:素直にうれしいです。仕事をするにしても自分のためだけじゃないところがあって、「この作品を観てどう思っていただけるかな?」と考えます。応援してくださっている方、初めて僕を知ってくれる方、あとは僕の一番身近な家族が喜んでくれるかなって。それを生きがいにしているところもあります。新しい自分を観てもらう機会というか。
「自分を見失わずにいたい」

本田:そうですね。会ったことのない方からも知り合いを通じて感想のお声をいただきました!(笑)。
──本田さんの出演作を拝見していて、演じている人の背景が想像できるような奥深さをお芝居に感じます。役作りで人物像をかなり掘り下げたりするのでしょうか?
本田:それはすごく嬉しいです。作品に入る前に本人の「履歴書」みたいなものを自分で書くんです。脚本を読んでいて、たとえば「お父さんがいる」と書かれていても、「お母さんは?」「友達はいるの? いないの?」みたいなことは書かれていなかったりするんです。年齢は書いてあっても、普段何を食べて過ごしているのか、書かれていなかったりして。
──そういうものを補完していくんですね。
本田:はい。「好きな食べ物はラーメン・餃子」だったり、「友達は少ない」だったり。そういうことを想像してバックボーンを作ってから作品に入ることが多いです。
──最後に、20代後半をどう過ごしたいか、今考えていることがあれば教えてください。
本田:これまで以上にお芝居としっかり向き合っていきたいです。それと同時に、自分自身とも向き合っていきたいです。自分を見失わずにいたいなって。
──見失いそうになる瞬間ってあるんですか?
本田:ありますね。毎日、朝同じような時間に起きて、夜は同じようなものを食べて、と繰り返し同じ生活をしていると、「自分、何してるんだろう?」ってふと考えたりするんですよね。
でも、そういうタイミングは、自分の好きなものだったり、趣味だったり、友人と会ったり、家族と話したり、そういう時間はずっと持ち続けたいと思っています。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>

【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。