今や、大学生の2人に1人が奨学金を受給しているそうです。日本最大級の奨学金ポータルサイトを運営するガクシーが、同サイト利用者(大学生、高校生、保護者対象)に行ったアンケート調査(※)によると、77.3%が奨学金の返済が結婚に悪影響を与えると回答しています。奨学金の返済があると結婚がしにくくなるのではないかと、不安な方もいるでしょう。(※調査対象627人、調査期間2025年6月6日~6月16日)
奨学金受給率が上がり受給者数も増えているのに、返済しながら生活している人の実態はあまり見えてきません。
今回、奨学金返済中ながら4年前に結婚し、2年前にはお子さんも生まれた男性・高橋さん(仮名・31歳)に取材しました。高橋さんは京都にある同志社大学理工学部機械システム工学科と同大学大学院(前期・後期)を卒業するために、トータルで1095万円ほどの奨学金を借りて、今も返済中です。
1095万円の奨学金を借りた、その後の人生は
高橋さんは東京都出身。中学高校時代は運動部に所属しながら勉強も頑張っていた、普通の学生だったそうです。高校時代に親から「うちはお金に余裕がないから、私立大に行くなら奨学金を借りてね」と言われていたため、はじめは旧帝大の東北大学を目指します。
学費は国立大の3倍で、1年間約150万円ほどでした。さらに同志社大学は京都にあるので、東京の実家を出て一人暮らししなくてはなりません。
高校3年生の時点で、700万円超の奨学金を契約
高校卒業前に、高橋さんはJASSO(日本学生支援機構)の奨学金を契約します。無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金を両方契約し、毎月16万円の受給でした。通学形態、学校の種類によって上限が異なりますが、無利子の奨学金上限は月6万円程度。足りないと、有利子の奨学金も借りざるを得ません。
親が連帯保証人になってくれましたが、親が一人っ子だったこともあり2人目を用意できず、保証料の必要な機関保証制度を使いました。そのため、手数料が高くなってしまったそうです。

大学入学時、親とともに参加した学部のオリエンテーションでは、「この学部の平均卒業年数は5.7年です。教職は身がもたないので諦めてください。留年しやすいので、アルバイトやサークル活動はほどほどにしましょう」と言われたのが印象的だったそうです。
大学院進学で追加400万円の奨学金を借りる
高橋さんの通ったキャンパスは奈良県に近く、のどかな環境でした。家賃2万9000円のワンルームから大学に通う生活がスタートします。「大学生といっても、公園で遊んだりマクドナルドでバイトしたりと、高校生の頃と変わらない生活でした。一方で、東京の大学に進学した友達はナイトクラブに行ったりして、どんどんませていっていました」
高橋さんはアルバイト先のマクドナルドで知り合った、同じくバイトで働いていた2歳年下の女性と付き合うことになります。
付き合っている時から奨学金を借りていることは伝えていたそうですが、具体的な金額までは伝えていませんでした。
留年が珍しくない学部を高橋さんは4年で卒業。周りの学生たちは、大手家電メーカー、自動車メーカーへの就職を目指しており、大学院進学が前提の環境でした。高橋さんも大学院(2年)に進学し、奨学金(一種と二種)を追加で約400万円借りました。

その後、無事に大学院を修了した高橋さんは2018年に新卒で音楽配信コンテンツ会社に就職し東京へ戻ることに。京都にいる彼女とは遠距離恋愛になります。
手取り22万円、奨学金返済4万6千円はカツカツ
新入社員時代、月の手取りは22万円ほどでした。毎月の奨学金返済が4万6千円、実家暮らしに戻ったので家賃はないものの、実家には3万円入れていたそうです。週末に京都の彼女に会いにこうとすると、交通費と宿泊費で1回4万円以上の出費です。

彼女には「お互いに近くでいい人を見つけよう」と提案し、別れることになりました。
高橋さんはマッチングアプリを使って、自分と同じバンドを好きな女性と知り合い、付き合い始めました。ですが一緒にライブハウスに行ったときに、もみくちゃになって楽しむ高橋さんを冷めた目で見ていた彼女と温度差を感じ、趣味が同じはずなのに楽しくないと思ってしまい、ほどなくして別れます。
「妻とは趣味がまったく一致しないけど、一緒にいて楽しかったことを思い出したんです」と語る高橋さん。そう、高橋さんが結婚した女性は、京都に残して遠距離恋愛で別れてしまった元カノだったのです。

奨学金額を伝えたら彼女はびっくりした
彼女は東京のコンテンツ制作会社に就職が決まり、2020年に同棲が始まります。同棲を始めるタイミングで高橋さんは、奨学金の総額を伝えます。「金額が大きいので打ち明けるのは不安で、奨学金が原因でフラれても仕方がないと思っていました」
彼女は大変驚いていましたが、返済があることも受け入れてくれました。新居の家賃は11万円ほど。同棲開始時にはまとまった貯金がなく、初期費用を親に借りて同棲をスタートさせました。


スタートアップ企業に転職した同僚から誘われ、奨学金プラットフォーム「ガクシー」を運営する株式会社ガクシーに転職します。年収は100万円以上アップします。
ガクシーでは奨学金の代理返還制度(企業等の奨学金返還支援制度)を導入しており、月の返済額4万6000円のうち、2万3000円を肩代わりしてもらえることに。ここで生活はだいぶ楽になったそうです。
人材確保のためにも奨学金代理返還制度を導入する企業は増えており、2025年時点で全国で2700社以上あるそうです。
「奨学金を借りて大学に行ったおかげで妻とも出会えたし、今の仕事にもつながっています。返済中は大変だと思いますが、僕のように奨学金代理返還制度のある企業で働くことや、多くの自治体でも条件を満たせば代理返還制度を導入しているところもありますのでそういった選択肢もあることを知っていただけたら嬉しいです」
奨学金を借りた後のライフプランの参考になれば幸いです。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
<取材・文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt