佐藤健主演のNetflixドラマ『グラスハート』(7月31日から世界独占配信)で、音楽ユニットOVER CHROMEのメンバー・有栖川真広を演じる。
男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、レイニ演じる有栖川真広役に期待を込めて解説する。
登場人物たちに寄り添う主題歌
あざやかなネオンサインと手元を照らす間接照明がまろやかにきらめく夜の屋上、力強く魅力的な八分の六拍子が響きわたる。木村文乃主演ドラマ『愛の、がっこう。』第2話ラストの場面である。その魅力的な八分の六拍子とは、同作主題歌「Spiral feat.Yura」である。主題歌は各話のクライマックス、ここぞという瞬間に画面上を彩る。「この曲を聴いてくれ」と言わんばかりに大音量で大げさに流されることもあれば、あくまで控えめに使われることもある。
この作品では完全に後者。登場人物たちの行く末を見守るようにそっと寄り添う主題歌がしめやかにかかる。この曲を歌うレイニによるボーカルフローが、八分の六拍子と見事にマッチしていて、久しぶりに心地いい主題歌を耳にした。
徳永英明の次男として知られているレイニ
リズミカルなバックトラックに対するハイトーンボイスに定評があるレイニは、彼は徳永英明の次男として知られている。レイニという名前の由来は徳永が1986年にリリースした名曲「Rainy Blue」らしい。ONE OK ROCK Takaに憧れて16歳でアメリカ留学。上述した『愛の、がっこう。』で再度ドラマ主題歌をYuraと声を重ねて担当。さらに期待高まる中で今度はどうくるかと思えば、主演の佐藤健が共同エグゼクティブプロデューサーを兼ねるNetflixドラマ『グラスハート』に出演するという。でもこれが初俳優仕事というわけではない。
相葉雅紀主演ドラマ『今日からヒットマン』(テレビ朝日系、2023年)第3話ではヒットマン役を演じ、木村拓哉主演映画『レジェンド&バタフライ』(2023年)では織田信長(木村拓哉)の世話をする戦国武将・長谷川橋介を演じて冒頭場面から出演した。どちらも端役ではあるため、レイニが俳優としてどんな特性があるのか、もう少し出番が多い作品で確認する必要がある。
歌と演技を両立するNetflix ドラマ『グラスハート』
2024年に出演した大人気シリーズドラマ『相棒』season23 第8話では、盲目の女性の恋人役でゲスト出演。足音を鳴らしてフレームに入ってくる初登場場面が印象的である。フレームインする間合いがうまい俳優だなと思ったりするが、いずれにしろ、まだメジャーデビュー前だった頃の俳優仕事に対してレイニ本人はどんなスタンスだったのか?
初インタビュー記事(2025年1月25日リアルサウンド掲載)を読むと、「歌う時は自分の気持ちをさらけ出すことができるけど、演技の世界では演じる役のキャラクターやバックグラウンドが自分とはまったく違ったりすると、そこで自分をどこまで出していいのか、そのさじ加減が本当に難しい」と率直に語っている。
たしかに歌も演技も演じるということでは似ているところもあるが、当時のレイニにとっては領域区分がはっきりしている。メジャーデビュー作を含め二つの主題歌を担当した今、『グラスハート』で演じるアーティスト役は歌と演技をうまく両立できる機会かもしれない。
ライブ場面で6カットの出番
レイニが演じるのは、主人公たちと敵対する音楽ユニット・OVER CHROMEのメンバーである有栖川真広。現実にもアーティストである二人の佇まいが重なる。アーティスト役を演じることで俳優として演技する「さじ加減」もつかみやすく、役柄に寄り添いやすいのではないかと想像する。本編中の実際の演技はどうか。
第1話終盤、主人公である天才音楽家・藤谷直季(佐藤健)に才能を認められたドラマー・西条朱音(宮崎優)がライブ会場に呼び出される。聴衆がひしめく熱気にまぎれて朱音がステージ上に見るのは、OVER CROMEのパフォーマンスだ。
菅田演じる真崎が激烈な表情で歌う隣、静かだが熱くビートを打つユニットメンバーが画面にちらりと写る。レイニ演じる有栖川である。そのあと、楽屋近くの廊下でライバル同士による会話場面がある。
有栖川は「真崎君、厄介事は勘弁してください」と気だるそうに言って画面下手の部屋に入り、フレームアウト。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu