また、喪黒福造のキャストが配信直前まで明かされず、多くの予想がSNSを賑わし、かなりの注目を集めて満を持して配信された。ただ、配信後はお世辞にも盛り上がっているとは言えない。Amazon内のレビューは8月7日現在、星2.8と何とも言えない評価にとどまっている。昨年Netflixで配信された『地面師たち』をはじめ、配信ドラマがブームになる傾向は高い。にもかかわらず、なぜ『笑ゥせぇるすまん』は評価されていないのか。その理由を考えたい。
23分を「長い」と感じさせる
とにもかくにも喪黒役の秋山竜次(ロバート)の影響が大きい。『笑ゥせぇるすまん』はブラックコメディ色が強く、ユーモラスでありながらも作中には緊張感がある。ただ、アニメをインスパイアしているのか、かなりデフォルメした演技が見られ、全体的にどことなくコントっぽい。もちろん、秋山がハマり役であることは間違いない。ポップで見やすくなっているが、その反面、作品の怖さが薄れて“らしさ”が失われている印象だ。
1話で視聴を見送られた理由
また、SNSには「1話でリタイアした」というコメントが散見されている。1話は『たのもしい顔』。ただ、今回配信された全12話の中でも1話はかなり変則的だ。立派な顔のせいで周囲から常に頼られ、そのことに辟易している中年男性・頼母子(たのもし)雄介の物語になっている『たのもしい顔』。演じるのは山本耕史だ。作中では“顔”がメインテーマのエピソードゆえに、秋山同様に山本の顔芸がこれでもかと映し出されている。また、顔芸と一緒に「その顔は『お母さーん、絵文字の使い方なんかおかしいよ』の顔です」など、同エピソードの脚本を手掛ける宮藤の“クドカン節”も少なくない。
そして、他のエピソードは中盤で喪黒の“仕掛け”が入るが、終盤まで喪黒はただただ頼母子の話を聞くばかり。ラストになり、ようやく転と結がババっと押して寄せてくる。
今後、評価が上がっていくと予想する理由
盛り上がりを欠いている理由に触れてきたが、ここから評価は上がっていくのではないかと予感している。というのも、8月1日から配信された4つのエピソードが魅力的だったからだ。後半に“裏切り”のある9話「イン主婦エンサー」、國村隼の哀愁溢れる演技が光る10話「海馬ガム」、起承転結がわかりやすい12話「サブスクおじいちゃん」など、いずれもオチのアプローチが異なり、視聴後には違った満足感を得られる。
とりわけ、岩崎う大(かもめんたる)が脚本を手掛ける11話「ホワイト上司」は個人的に好みだ。ハラスメントを恐れるあまり、部下に甘い対応ばかりを取ってしまう白川かぶる(勝地涼)がメインのお話。勝地がホワイト上司とブラック上司を見事に演じ分け、作品に緊張と緩和を常に与えることで独特のヒリヒリ感が醸成されている。
また、狂気を含んだネタが持ち味のかもめんたるではあるが、う大の脚本は『笑ゥせぇるすまん』との親和性がとても高い。現代人が抱えるモヤモヤ感をユーモラスかつ毒素たっぷりに表現し、令和版『笑ゥせぇるすまん』にふさわしい切り口だ。さらには、白川に常にスポットライトが当たり、喪黒はあくまで“ちょい役”として描かれている。秋山の演技もちょうど良く、コントっぽさはなく、ドラマとして見応えのある内容だった。

<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki