今回は、そんな出来事に直面した女性のエピソードをご紹介しましょう。
コンビニの若い店員に絡む迷惑客
ある日の夕方、斉田真美さん(仮名・33歳)は、仕事帰りに立ち寄ったコンビニで静かにレジの列に並んでいました。店内はそれほど混雑していたわけではありませんが、一日の疲れを引きずったような空気が漂い、誰もが早く会計を済ませて帰りたい、そんな雰囲気だったそう。
「すると先頭から『やっぱりいらねーって言ってるんだよ! 気が変わったんだから仕方がねーだろ!』と怒鳴り声がしたんです。首を伸ばして見てみると、温めてもらったお弁当を、まだ10代くらいの若い女性店員さんにつっ返して、ニヤニヤしているおじさんがいたんですよ」
おじさんはお弁当だけでなく、おにぎりまで「温めてくれ」と要求しておきながら、同じように受け取らず突き返すという行為を繰り返していました。しかも、その一連のやり取りのたびに口元は緩み、どこか満足げだったそう。
ただの不機嫌ではなく、明らかに相手の反応を楽しんでいて、まるで店員さんを困らせること自体が目的であるかのようでした。
怒鳴り声が響いて、店内の空気は最悪
「見ていて本当に気分が悪くて。でも逆ギレされたら怖いし、どうしても声をかける勇気が出なかったんですよね」店内の空気は徐々に凍りつき、ただ事態が収まるのを待つしかありませんでした。女性店員さんは必死に対応していましたが、その声は明らかに震えていたそう。
やがて「だからいらねーって言ってんだろ!」と、おじさんの怒鳴り声が店内に響きました。
「さすがに筋が通らないと思いますよ」
その瞬間「すみません」と低く落ち着いた声が割って入ってきたそう。「振り向くと、スーツ姿の40代くらいの男性が一歩前に出て『あなたが温めを依頼しておいて、それを一方的に拒否するのは、さすがに筋が通らないと思いますよ』と、穏やかな口調のまま、おじさんに注意をしてくれたんですよ」
「すると男性は、表情を崩さずに『気が変わる自由はあります。ですがその結果の責任まで放棄していい理由にはなりません』とはっきり言ったんです。
男性は一歩も引かず、さらに言葉を重ねます。
おじさんの逃げ場を完全に奪う一言
「その商品はもう販売できません。つまり、あなたの都合で廃棄になる可能性が高いです。店員さんを困らせて楽しむような行為、大人として恥ずかしくありませんか?」その言葉は静かでありながら重く、おじさんの逃げ場を完全に奪うものでした。
「おじさんは言い返そうと口を開きかけましたが、周囲の視線を感じたのか言葉に詰まり『う、うるせーな! 払えば文句ねーんだろ』と吐き捨てるように言って、ぶっきらぼうに会計を済ませると逃げるように店を後にしたんですよ」
あれほどまでに威圧的だった態度が嘘のように消え、その背中はどこか小さく見えたそう。
重たい感情がすっと晴れていった
「女性店員さんが『ありがとうございました』と深く頭を下げると、男性は軽く手を振って、『いえ、当然のことを言っただけですから』と言って、自分の順番を待ち始めて。本当にかっこよかったんですよ。ああいうふうに、ちゃんと正しいことを言える人っているんだなって何だか感動してしまって」真美さんは、その光景を思い出すたびに、胸の奥に溜まっていた重たい感情がすっと晴れていくのを感じます。
「あの店員さんも、私を含めて店内にいた人たちもみんな、あの男性のお陰でスッキリした気持ちで帰宅できたと思うんですよね」と微笑む真美さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
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