「分からない」「できない」と感じた時、あなたはどうしていますか?

今回は、スーパーのセルフレジで起きたトラブルと、そこから考えたい現代の問題についてご紹介します。

店内に響いた怒鳴り声

ある平日の夕方。塚地麻里子さん(仮名・34歳)は、仕事帰りに駅前のスーパーへ立ち寄りました。


「その日は疲れていて、とにかく必要な物だけ買って、早く帰ろうと思っていたんです」

買う物を選んだ麻里子さんは、レジへ向かいました。店内は仕事帰りの客でほどよく混雑していましたが、セルフレジは数台空いており、会計はすぐに終わりそうな雰囲気だったそう。

「その時『こんなの年寄りにやらせるなよ!』と、店内に怒鳴り声が響いたんです。振り返ると70代くらいの男性客が、セルフレジの前で腕を組みながら店員さんに怒鳴り散らしていたんですよ」

「人間のレジだけにしろ!」セルフレジができなくて怒鳴り散らす...の画像はこちら >>
男性は不機嫌そうな表情でセルフレジの前に立ち「何で俺が自分で機械なんか使わなきゃいけねぇんだ!」「人間のレジだけにしろ!」「説明が分かりづれぇんだよ!」と次々に不満をぶつけていました。

店員さんが「ご案内しますので一緒にやってみましょうか」と丁寧に声をかけても「だから分かんねぇって言ってんだろ!!」と怒鳴り返す始末。

さらに後ろに並んでいる客たちにまで「こんなの便利だと思ってんの若い奴だけだ! 年寄りは来るなって言いたいのか!」と絡み始め、周囲の空気は一気に重苦しくなりました。

「店員さんもかなり困っていて、周囲もどうしたらいいのか分からない空気になっていましたね」

誰も言えなかったことを代弁した女性

誰もが様子をうかがうばかりで、なかなか声を上げられない。そんな状況の中、列の後方にいた60代くらいの女性が一歩前へ出たそう。

「するとその女性は『いい加減にしたら? 騒ぐ暇あるなら覚えればいいの! 私だって最初は分からなかったわよ』とおじさんに負けない声量で言い放つと、続けて『年寄りだからできないんじゃないの。“覚える気がない人”ができないの!』とセルフレジをピッ、ピッと鮮やかに操作して見せたんですよ」

「人間のレジだけにしろ!」セルフレジができなくて怒鳴り散らす男性。現れたシニア女性の“鮮やかな仕草”で空気が一変
画像はイメージです(以下同)
そのあまりの勢いに、その場にいた人たちは思わず目を丸くしました。

おばさんの正論におじさん撃沈

しかし女性の説教はそれで終わらず「店員さんに怒鳴るなんて最低よ。『教えてください、お願いします』でしょ? あと後ろ見なさい。みんな待っているの!」そう言って後ろの列を指差しました。

すると並んでいた客たちの何人かが、無言でうなずいたそう。


完全に孤立した男性は顔を赤くしながら「二度と来るかよ、こんな店」と吐き捨てるように言うと、商品の入った買い物かごをその場に残したまま、逃げるように店を後にしました。

「するとおばさんは何事もなかったように『最近、怒鳴れば誰かがやってくれるって人多いのよねぇ』と私たちに笑顔を向けてくれて。その瞬間、張り詰めていた空気が一気に和らぎ、店員さんまで思わず吹き出していたんですよね」

麻里子さんも思わず笑ってしまったそう。

私たちもいつか“分からない側”になる

確かに、店員や周囲の客に当たり散らす男性の態度は褒められたものではありません。しかし一方で、セルフレジやタッチパネル注文など、新しい仕組みに戸惑う人が少なくないのも事実でしょう。

「人間のレジだけにしろ!」セルフレジができなくて怒鳴り散らす男性。現れたシニア女性の“鮮やかな仕草”で空気が一変
考える女性
「できない」と感じることは「恥ずかしい」という感情につながります。そしてその恥ずかしさが、時として怒りや攻撃的な態度として表れてしまうこともあるんじゃないでしょうか?

今回の男性も、本当は操作方法が分からず不安だっただけなのかもしれません。

だからこそ社会全体としては、「できない人」を切り捨てるのではなく、誰もが利用しやすい環境づくりを考えていく必要があるでしょう。

便利さを追求する一方で、「分からない人は置いていく」という空気が広がれば、それは少し怖い社会だと感じてしまいます。なぜなら、私たちも数十年後には新しい技術についていけず戸惑う側になる可能性があるからです。

その時、自分がどう扱われたいのか?

今回の出来事は、迷惑行為への苦言だけでなく、そんなことも考えさせられる一幕だったのかもしれません。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。
『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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